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どうぞお幸せに
しおりを挟む「え?」
「ちょっ、レベッカ!?」
レベッカの言葉に二人の動きが止まった。二人は目を見開いてレベッカを見る。しかしその表情には違いが。殿下の顔には戸惑いが、クロエの顔には喜びの色が浮かんでいる。
「ですから婚約を解消致しましょう。そうです、初めからこうすれば良かったのです」
驚く二人など目もくれずレベッカは相槌を打った。
そうと決まれば早速あの人に報告だ。
この場を去ろうとレベッカは口を開く。
「では私は行く場所が出来たのでこれで去りますね」
「えっ、レベッカ? ちょっと待って」
殿下が引き止める声も聞かず、レベッカは去っていく。
「待って、レベッカ。それは違くないか? 僕の婚約者はレベッカであってそれはこれからも……」
「私じゃなくても別にお困りにはならないでしょう?それにクロエさんは別れて欲しそうですしねぇ」
振り返ってレベッカはそう言った。
レベッカがクロエに視線を向けると、彼女は慌てて表情を元の頼りないものへと戻し、悲しそうな顔をする。
「ご、誤解しないでください。私はっ」
「もう面倒臭いのです。いっそのことクロエさんが殿下の婚約者になって差し上げたらどうです?クロエさんでしたら身分も問題ないと思いますよ。それに何より、私よりずっと殿下を想っているそうですし」
「クロエが私を想っている?」
「ええ」
レベッカの言葉にクロエは頬を染めた。チラチラと殿下を見る様子はまさに恋する乙女と表現するのがふさわしい。きっと彼女もこういう展開を望んでいたのだろう。
婚約解消すれば、こうやってクロエに構われることもなくなると思うと、前よりずっと自由になれる気がする。
もううんざりなのだ。殿下の婚約者というだけで、彼女に何かと変な対応をされるのは。
レベッカの前でわざと転んで見せたり、やってることも幼稚で本音を言えば相手にすらしたくない。
殿下の婚約者という肩書きによって関わりたくなくても関わらなくてはいけない。それはレベッカにとって結構なストレスだった。
「殿下も私よりクロエさんの方が大切なようですし。確かに口うるさい私よりも健気で可愛らしいクロエさんの方が守ってあげたくなりますものねぇ」
「そんなこと……」
「だった一目見ただけで、私がクロエさんを虐めると思うくらいですからねぇ。でも「謝れ」は酷いでしょう」
「それは、咄嗟のことで僕も……」
「良いんですよ。いずれにしたって邪魔者はもう退散するんですから。どうぞお幸せに」
「待ってレベッカ!だったら本当のことを教えてくれ。僕が間違っていたのなら謝る。僕にもわかるように説明してくれ!」
殿下の呼びかけには応ぜず、レベッカは身を翻してその場を去った。
向かうはこの婚約を結んだ張本人……国王陛下のところだ。
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