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※王太子のショック

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 翌日、僕は教室で昨日の出来事を思い出していた。
 ……レベッカとの婚約破棄、そして新たにクロエとの婚約。 
 全てが突然すぎて頭がついていけなかった。あまりの衝撃に、思わず父上の前で膝から崩れ落ちたことは覚えているが。
 ……だって、まさかこんなことになってしまうなんて。
 僕はただ、王太子として弱い者を救いたかっただけなのに……。
 誰も僕の気持ちを理解していない。僕はクロエに対して恋愛感情は無かったし、人助けの感覚だった。
 人を助けることは良いことだ。強い者は弱い者を守るべきである。だから僕の行いに非はない。
 それなのに何故、父上もレベッカも僕を否定するのだろうか。僕は正しいことをやっているはずなのに。
 特にレベッカには何度も言っていた。クロエに優しくしてね、クロエを傷つけるような言葉は言わないでね、と。  
 しかしながらレベッカはいつもクロエに衝突した。僕がクロエのことに関して何を言っても、結局最後まで彼女には響かなかったのだ。


「アラン様、あの」
「ん?どうしたの?」

 僕がそんなことを考えていると、クラスメイトの一人が僕に話しかけてきた。

「あの、廊下で……その、クロエ様とレベッカ様が……」

 またか!
 僕は慌てて席を立ち廊下に出た。廊下には人だかりが出来ており、そこに囲まれるように二人がいることはすぐにわかった。
 僕が近づくと、僕に気づいた生徒達によって道が出来る。二人が見える位置まで近づくと僕は一度立ち止まった。  
 すると聞こえてくるのはレベッカの声。

「でも私はもう関係ありませんので、これからは王太子様とお二人で頑張ってくださいね。では」
「あ、ま、待ってくださいっ」
「授業が始まってしまうので」
「あっ」

 レベッカは周りには目もくれずスタスタと去っていく。
 ……か。
 確かに婚約を解消したのだから、彼女との関係はなくなりそんな風に呼ばれても仕方ないかもしれない。でも……。
 まさかもう名前ですら呼んで貰えないことが、こんなにツラいと感じるなんて思わなかった。

「アラン様っ!」

 僕に気づいたらしいクロエが、満面の笑みでこちらへ近寄ってくる。

「私、殿下にご迷惑たくさんおかけすると思いますけど、全力で頑張りますからっ」

 クロエはそれだけ言うとパタパタと去っていってしまった。僕はその背中を見えなくなるまでボーッと見つめて、ハッとした。
 ……そうだ、クロエが僕の新しい婚約者なんだ。
 
 レベッカのことは心残りだが、この婚約によってクロエを以前より近くで守れるようになるし、彼女を幸せに出来る。そう思えば結構良いかもしれない。
 何よりクロエ本人が頑張る、って言っていたしね。
 レベッカは一人でも全く問題ないが、クロエの場合は僕の助けが必要不可欠になるだろう。
 ……僕が支えていかないと。
 こうして僕は決意を新たに足早に教室に戻った。
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