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第29話 報告と報酬

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■ 鈴木真理雄。異世界に落っこちてきた。現在、異世界を探索中。
■ 〝あいつ〟無限炉の中で会った存在。真理雄に魔法を伝授した。
■ ネム。獣族の女の子、ものすごい美少女。白虎の特徴を持つ
■ ミルテア・大地母神ステルアの神官。ハーフエルフ。ものすごい巨乳。司祭様。

■ ロイド。森であったハンター。体格のいい重剣士
■ リリ。森であったハンター。微妙に露出のおおい魔法使い。
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「わざわざすまないな。儂がターリの町の冒険者ギルドの支部長をしているセルジュだ」

 案内されて部屋で俺達を迎えてくれたのは…なんというか、凄くインパクトのある人物だった。

 まず背が高い。
 俺より頭一つ分高い。180後半だろう。
 そして筋肉が凄い。胸とか腕とか太ももとかまるで丸太のようだ。重量上げの選手のような体型だ。しかも金メダル級。
 背筋が伸びていて動きがシャキシャキしていていかにも身体能力が高そうな人だ。

 着ているのは古めかしいデザインの背広だがパツンパツンである。

 さらに頭は禿頭である。つるつるぴかぴかだ。そしてよく手入れされたガイゼル髭を生やしている。
 全体として『ごつい』『厳つい』まるで巌のような男性なのだが…ただ一点、目がつぶらでパッチリしていて優しげで妙に穏やかな印象がある。
 このギャップがすごい。

 彼は部屋に入る俺達を見るとスッと歩み寄って手をとり、一人ずつ握手を交わす。
 これに悪い印象を持つのは難しいかも知れない。

「真理雄・鈴木です」
「ネム・インクルードです」

「マリオン君にネム君だね。さあ、こっちに」

 あーーーっ、またマリオンになってしまった。
 はっ。そうだ。冒険者証。鑑定の紙をもとに作ると俺の名前マリオンになってんじゃないのか?
 うわー、失敗した…のかな?

 考えてみれば割とどうでもいいような…
 俺のあだ名はマリオだったからあまり違和感ないし…マリオンの方が通りがいいなら、もうそれでいい気がしてきたな…
 改名するべきだろうか…

 ちょっと愕然としているうちに部屋の奥にしつらえられた椅子に案内される。木の椅子に上等なクッションを置いたものだ。
 ミルテアさんがすでに座っていて、俺たちはその隣に腰を掛けた。

 この部屋にはセルジュさんのほかに三人の人がいた。
 エルフの女性。犬系獣人の女性。人間種の老人だった。

 順にギルドマスターの補佐官のアレイシアさん。
 ギルドの買い取り部門の責任者アマンダさん。
 ギルドの副長ロンダミス氏だと紹介された。

 呼ばれた理由は俺がたおしたエルダーゴブリンの確認のため。

 ちょっと話はそれるがアレイシアさんはべったんこの人だった。
 幼児体系というわけではない。ちゃんと大人の女性の体形だ。べったんこだけど。
 全体として人間よりも一回り小さい。という感じだろうか。
 一回りなので人間にだって彼女より小さい人はいると思うんだけど…

 そう、スレンダーな人間を九五にパーセント縮小したような?

「エルダーゴブリン魔石はマリオン君が所有していると聞いていますけど、お売りになるつもりはないんですか?」

「いえ、別に売ってもいいんですけど、売るつもりですけど、まだ冒険者登録が終わってないので」

 そう言ったら『ああ』という雰囲気が広がった。
 魔石はギルドが一手に買取をしているからなぜ売らないのかという話だったのだろう。

「見せていただけます?」

「ええ、お見せするのはかまいませんが…」

「が、なにかね?」

「いえ、魔石は他にも持ってますので、まとめて買取なんかしていただけるといいんですけど?」

「そんなものは下のカウンターに持っていけ、今はそんなことをしている場合じゃない」

 文句を言ったのとは副長と紹介されたロンダミス老人だった。
 神経質そうでいつもイライラしている印象がある。
 だがほかのメンバーは鷹揚だ。 

「別にいいじゃないか、どうせ魔石は鑑定するんだ、ついでだよついで」

 そう言ったのは犬耳の女性アマンダさん。
 しゃべり方が姉御で、体格もいいからやっぱり姉御だ。
 ギルドの買取部門の責任者の人らしい。

 ちなみにクエスト統括部門の責任者が先ほどの事務員風のおじさん。
 今はどうしても抜けられない仕事があるとかでここにはいない。

「それに百花繚乱の二人は貴重な情報を伝えてくれたのですからもう少し礼儀というのを知るべきですよ、そんな対応をしていてはギルドに良い報告を上げてくれる冒険者がいなくなってしまいます。
 功あるものはたたえなくてはなりません」

 とこちらはアレイシアさん。
 ロンダミスしに対抗しているというよりも一顧だにしていない印象だ。

「代金はあとで生産するからほれほれ魔石出せ」

 アマンダさんは飾らない人のようだ。

 俺はエルダーゴブリンの魔石を出してほかにもホブゴブリンの魔石を出した。
 ついででいいということなので百花繚乱もゴブリンの魔石を出す。

 ゴブリンの魔石は全部で五四個。
 ホブが三個、エルダーが一個だ。

 その中から一番大きな奴を取ってアマンダさんが筒状のルーペでかんさつする。
 ほかにもいろいろなもので計測している。

「どうせ偽物にきまって…」
「いや、本物だ、間違いなくエルダーゴブリン。タイプはパワーだな、だかこれは…進化まじかだぞ?
 最低でも危険度六だな」

「なっ」

「つまり少年はそれだけの戦闘力を持っているということか…危険度六ではSクラスでないと危ないから、少年の戦闘力はそのぐらいということだな」

 ギルドのみんなが集まって相談をしているうちにちょっと危険度について聞いてみた。

「危険度というのは魔物のランク分けですね、とは危険度一から、危険度一〇まであります」

「ギルドというか世界規模で魔物の一応の目安として決まっていてね、冒険者はその危険度で戦うかどうかの判断をしているの…」

 危険度は一〇個で、危険度一は村人とかでも倒せる程度らしい。村人の手に余るようになると危険度二か。
 危険度は一〇まであるけど最高は九、国や軍隊が力を尽くして対応するレベルになる。

 危険度一〇はそれ以上という意味で超やばいということだ。
 当然冒険者のランクと対応などはしていない。
 あくまでも冒険者側が戦うかどうかの基準にしているというだけだ。

 エルダーゴブリンの危険賭は四~五ぐらい。時折六だそうだ。
 このエルダーゴブリンに関してアマンダさんが正式に危険度六を宣言し、俺の功績が確定したと告げられた。

「まずホブゴブリンな。こいつは討伐報酬合わせて一個金貨一枚で引き取る。
 問題はエルダーゴブリンでな、こいつは魔石が金貨一〇枚。そして伐報酬は特別でね。報奨金が金貨五〇枚となっている」

 おおー。するとこれだけで六〇〇万円ぐらい? すごい。

「普通はね」

 とアマンダさんが続けた。ということは普通じゃないということだ。

「この魔石がかなりいい。
 魔石ってのは普通はこう、ごつごつした塊なんだよ、だけどこれ見てごらん」

 そう言った出された二つの魔石、一つはエルダーゴブリンでひとつはホブゴブリンだ。確かにホブの方は凸凹している。

「計測したらほとんど真球だったよ。これは単に魔石として価値が高いんだけどね、芸術品としても結構価値がある。
 ギルドで買い取ると即金で一〇金貨。オークションに出せばひょっとすると一〇〇金貨行くかもしれない。
 どうする?」

「オークションで」

 俺は即答した。
 だってホブのだけでも当面の生活費にはなるしね。慌てることもないだろう。
 それにオークションというのもやってみたい。

「よし、わかった。じゃあこいつはオークションの手続きをしておくよ、オークションの場合も三割はかかるんだが、税金が一割、ギルドへの上納金が一割、あと競売の手数料が一割だね」

 ちょっと内訳が変わるが取られる金額は変わらないのだからどうでもいいや。
 オークションはギルドで全部仕切ってくれるらしい。
 ただしここでやるのではなく南にある領都キルシュリアというところでやるらしいので結構日にちはかかるようだ。
 ただギルドが適宜オークションにかけてお金は天引き後に俺の口座に振り込まれるんだと。
 ギルドに入ると自動的に口座が作られて、報酬はそこに振り込まれる形になるらしい。この管理も冒険者証でやるらしい。何気に便利だ。

 そのあとあの時の状況を詳しく説明し、話が終わったら伝票をもらって退出する。

 ただ話をしているときにロンダミス氏が百花繚乱のメンバーがゴブリンに犯られている話を聞きたがって大顰蹙を買っていた。
 こいつは下種だな。

 ちなみに伝票は今回の報酬が記載されていて、窓口に出すとお金が出て来るらしい。
 褒章はすぐに支払いで金貨五三枚だ。三割天引きで金貨十五枚、銀貨九枚が引かれることも記載されている。
 手取りは金貨三七枚、銀貨一枚だね。

 当分生活は心配なさそうだ。

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