桜の花弁が散る頃に

ユーリ(佐伯瑠璃)

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三章 -箱館編ー

もう、隠せない

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 血なまぐさい戦闘も落ち着きを戻した頃、逃げ惑っていた人々が少しづつ戻って日々の営みを始めた。それでも、私たちの姿を見れば通りから姿を消してしまう。無理もない、突然得体のしれない集団が松前藩の人間を追い出してしまったのだから。

「こんな寒い土地で、よく生きていけるな」
「でもこれからこの土地が、私たちの生きていく土地になるのですよね」
「そうなればいいがな……」
「土方さん」

 土方はこの戦争をどうしたいのか、そしてこの戦争が終わったらどうするのかを言わない。ただ、与えられた任務は手を抜くことなく全うしている。部下を想う姿を見ると、死に場所を探しているようにも思えない。だけど大きな希望を抱いているようにも見えない。

「次は江差だ、しっかりと体を休めておけ」
「こう見えても回復は早いのですよ。肩でも揉みましょうか」
「まるで年寄りあつかいだな」
「土方さんは年寄りではありません。とても……」
「ん?」

 また、鉄之助であることを忘れそうになり言葉を呑み込んだ。土方と二人きりになると隠しきれない女の性がでてしまう。こんな大事なときにイケないと唇を噛みしめる。

「私は按摩も得意です。ほら、こんなに硬くなっているではないですか。明日からの進軍の為に解しますよ。働き過ぎの体です」
「俺だけじゃない。皆そうだろ……っ。痛え」
「ふふっ。痛いですか」
「おいっ、わざとだろう」
「違いますよ。痛いところは悪いところです。我慢してください」

 恐ろしく硬くなった筋肉を指圧すれば、土方ですら痛いと逃げようとする。それが土方も普通の男なのだと思わせてくれた。

「腰もやります。うつ伏せになってくださいませんか」
「こうか」
「はい。あ、跨ぎますね」

 膝立ちで土方の足を跨ぎ、その腰に手を伸ばした。太く硬く逞しい骨と筋肉に思わずため息が出た。この体を作り上げてきたのは数々の戦だと知っていても、美しいという言葉には変えられなかった。

「爺さんか」
「え」
「按摩だよ。いい腕をしている」
「はい。お爺さんが、教えてくれました。人の体は血流さえ良くしておけば病にならないと」

 腰から背中を揉みほぐし、首の付け根を指圧すると土方は寝息をたて始めた。穏やかな息遣いにほっと胸をなでおろす。ほんのひと時でもいいから、体を休めて欲しかったから。何度目だろうか、数えるほどしかない土方の寝顔を見ていた。目を閉じると大人の土方も少しだけ幼くなる。相変わらずいい男だと思った。私は按摩の手を止めその寝顔をじっと見た。この男に穏やかな日々は訪れるのだろうか。そしてその穏やかな日々はこの男は好むのだろうか。ずっと命をかけて走り続けてきたから、少し心配になる。

「はぁ、どうなるのだろう」

 見えない将来が、ときどき怖くなる。この道に飛び込む前の自分は何を考えていたのか。ただ生きていることを感じたくてお爺のもとを飛び出した。母も父の顔も知らない私には怖いものなどないと、思っていたのに。
 ひとしきり土方の寝顔を眺め、何か掛けなければ風邪をひくと思い上掛けを手にとった。綿がたくさん詰め込まれた冬用の布団だ。両手でそれを引き上げようとしたその時、私は天井を見上げていた。

「えっ!」
「礼を、しなきゃなんねえな」

 上掛けを背に被った土方が私を上から覗き込んでいる。いつの間にか私が布団に仰向けになっていたのだ。

「いつの間に! どうして、えっ。ひじっ……ふあっ」
「静かにしろ」

 共寝をしようというのか土方は私を抱き込み布団を被った。寒さに慣れない私には人の体温は落ち着くし温かい。けれど!

「お、落ち着かないのですが……これでは眠れません」
「按摩をしてやる」
「土方さんが、ですか」
「他に誰がやるんだ」

 土方は手のひらを私の背骨をたどるようにゆっくりと撫で下ろした。そして臀部でその手は止まる。

「ひっ」

 その触れ方があまりにも按摩とはかけ離れており、ゾクゾクと鳥肌がたち始めた。臀部に置かれた手は円を描くように動き始める。むずむずするような妙な感覚だ。

「その、触れ方はっ」
「なんだ」
「やめてください。力が入ってだめです」
「ほぅ……感じているんだろう」
「まさかっ」

 土方が頬を上げ嫌な笑みを見せた。こうなると私にはどうにもできない。やたらと男の色香を振りまいて私をおかしくさせるからだ。その目を見てはいけないと、瞼をおろした。土方の手は私の尻を撫でそこからまた更に手を下げた。太腿の裏側を揉みほぐし始めたのだ。

「おまえはよく頑張ったよ。この細い脚でよく走った。まるで、忍びのようにな」
「んっ」

 太腿を撫でていた手が内側にするりと滑った。思わず声が漏れる。私は土方の服を握りしめ、額をその胸に押し当てた。それでも土方は止めず、とうとう腰の紐を解いてしまった。裾からその大きな手が這い上がり容赦なくさらしも緩めた。

「あのっ!」
「寝るときぐらいは緩めておけ。休まらないだろうが」
「しかし!」
「煩え……」
「ちょ! んふっ」

 騒ぐなと私の口を土方は自身の唇で塞いでしまう。土方はどういうつもりで私にこのような事をしてくるのだろうか。すぐに土方の舌が口内を犯しはじめる。抵抗しようとしても男の力には到底敵わないし、ましてや抵抗したいなどという気持ちはなかった。私は土方にこうされることを喜んでいたからだ。心も体も土方を好いているから。

(土方さん……私はあなたのことを)

「好きか」
「えっ」

 土方は私の心を見透かしたのか、口づけをやめて私にそう聞いてきた。

「おまえは、口吸いが好きなのか。そうなんだな。けど、こっちの方がもっと好きだよな」
「何を仰って……あ!」

 布団の下で土方は私のさらしを解いて、乳房を出した。すぐに子が吸うのと同じように口に含んでしまった。こうされるのも嫌じゃない。でも、それは土方がするからだ。
 下肢にもその手は伸び、卑猥なあの音が籠もった空間で響き続ける。

「い、いやっ……です。ふっ、あ。ひじっ、土方さん」

 変になりそうで、それが怖くて膝を立て腰を捩った。その反動で私の膝は土方のソレにぶつかる。

「痛って」
「すみまっ……え! 硬っ。は、腫れてっ。大丈夫ですか!」
「違う……お、おいっ」

 つい、私は土方のそれを手のひらで包んでしまったのだ。いや、包めるものではなかった。私が膝で蹴り上げたせいでこんなに腫れて……!

「痛みますか! 私、とんでもないことをっ……痛みますよね」
「おまっ、それ、本気か」

 土方は私の手を上から押さえそのようなことを聞いてきた。こんな大切な部分を冗談で心配するわけがないのに。

「こんな時に冗談なんて言いませんよ。ど、どうしたらよいですか。あっ、医者を」
「おい! いい加減にっ」
「ひあっ」

 真上から土方に乗られた私は、身動き一つ取れなくなってしまった。そして土方は腰を私の脚のあわいに擦り付けはじめた。その硬く腫れ上がったものが私のソコを刺激する。

「あっ……やっ」
「おまえは本当にこの手のことは無知なんだな。よく分かった。だったらとことん教えてやる」
「な、な、何を……っ」


 土方の笑みは妙に艶があり、その瞳から視線を外すことができなかった。土方は自身の腰帯ベルトを緩め始めた。見えないけれど気配で分かる。土方は洋袴ズボンを下げたのだ。

「コレが何かは分かるよな……あ?」
「っ……」
「男のコレはな、女を求めるとこうなるんだよ。こうならねえと、入らねえ」
「は、入る」
「ああ。ココにこうやって……な」

 硬く尖ったものが私の秘部に押し付けられた。ずると滑って入り口を行ったり来たりする。私は声も出せずに、すべての神経をそこに集中させていた。

(は、入るって……アレが私の中に。指よりもはるかに太いアレが)

「怖いっ」

 指先を噛んで逃げるように顔をそらした。ぬちぬちと音がする。その音が耳を犯し、そして新たな感触を私に植え付けた。

「怖いか……」

 行き来するそれは指などとは比べ物にならない。私の体を土方のソレが貫いたら私はどうなるのだろう。恐怖と興味がぐちゃぐちゃに入り混じる。脚を閉じたいのに腰は勝手にふわふわと浮いて、腹の底が熱く燃え始めた。

「ふっ、う……ぁ」

 土方が腰を擦り付けるたびに激しい悦がこみ上げてくる。気づけば目から涙を流す始末。

(苦しい……もっと、強くして欲しい)

 そんなふうに思うことが、自分でも信じ難く羞恥に顔を両手で覆った。そうしていると、体の振動がぴたりと止まった。そっと指を広げて土方を覗き見ると、土方は私の方をじいっと見ていた。

「ひじかた、さ……」
「すまない。無体を強いた……赦せ」

 私の体から重みが消えた。

「あ……」

 同時に不安が込み上げてきて、異なる種の恐怖が襲ってきた。だから私は土方の首に必死にしがみついた。

「嫌だっ。いかないでください」
「おい……」

 土方の首に鼻を押し当てて、男の匂いを体に取り込んだ。もう、隠せやしない。私は!

「好いています……土方さんっ」
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