同棲しているけど彼女じゃない～怨霊は恋のキューピット

26話 牛か豚か

　九郎とあやめは、一緒に帰る。あやめが玉枝に聞く。
　「今日の夕食は何にするの。」「肉じゃがを考えている。」
　「肉は牛ですか豚ですか。」「牛だがどうした。」
　「玉枝さんは関西の方の出身なのですね。」「確かにそちらの方で暮らしていたな。」
　「東は豚肉で、西は牛肉を使うというやつ。」「そうそれ。」
　「僕の家は肉じゃがが牛肉でカレーは豚だよ。」「混じっているわね。」
　「あやめの家はどうなの。」「どちらも牛よ。」
　「そうなんだ。」「九郎のカレーは豚肉ね。」
　「知ってどうするの。」「料理作るときの参考にするの。」
　「地方によって料理が変わるのか。興味深いのう。」
玉枝は感心する。話ながら歩いているうちにスーパーに着く。
　九郎とあやめはここで別れる。九郎はスーパーで買い物をする。
　九郎と玉枝は部屋へ帰る。玉枝は料理を始める。九郎は講義のノートの整理をする。
　玉枝が九郎に声をかける
　「あなた、ごはんよ。」「新婚ごっこはやめてください。」
　「あやめちゃんに言われたら喜ぶくせに。」「それは、まぁ。」
九郎は想像して赤くなる。彼はテーブルの前に座ると「いただきます」をして夕食を食べ始める。
　今日は玉枝の言った通り、ごはんに肉じゃが、みそ汁である。
　「お味はどお。」「おいしいよ。」
玉枝は嬉しそうにする。九郎はご飯を食べると風呂に入る。当然のように玉枝が全裸で入って来る。
　彼女は九郎の体を丁寧に洗う。玉枝が言う
　「あやめちゃん、男子に人気あるわね。」「かわいいから当然だよ。」
　「なんで九郎ちゃんは僕のものだって主張しなかったの。」「僕たちは友達だよ。」
　「言う権利あると思うけど。」「独占欲強いと思われるよ。」
　「でも必要な時には言わないといけないよ。」「どんな時？」
　「手放したくないと思う時。」「分かった。」
九郎は、今日、目の前で男子があやめに告白して面白くなかった。「やめろ」と言えばよかったのかなと考える。
　でも、あやめとは友達で恋人ではない。感情に任せてそんなこと言ったらかえってあやめを悩ませるのではと考えが浮かんでくる。
　明日、あやめに告白する男子がいたら「やめろ」と言ってみようかと悩む。
　九郎は寝ることにする。玉枝がネグリジェ姿で添い寝する。今日は悩みで玉枝に構っている余裕はない。