聖女様が従騎士に指名した農夫は世界最強だったーリーム王国編ー

ぽとりひょん

文字の大きさ
31 / 64
第2章 従騎士誕生

第9話 ウォール対ラース

しおりを挟む
 ラースの額から汗がにじみ出てくる。このままでは負けてしまう。どうすればいい。ラースはこれまでの経験を生かしたシミュレーションを繰り返して勝ちのパターンを探す。
 ウォールから見てラースの構えは隙だらけである。どこからでも打ち込むことが出来そうだ。ウォールは間合いの外から飛び込むように上段から打ちこむ。
 ラースは同時に後ろへ飛んだがウォールの方が早い、目の前を木剣の風圧がかすめる。明らかに剣の振りの速さは、ウォールの方がラースより数倍早い。
 ウォールは間違いなく化け物じみて強いと感じる。それでも勝てるパターンを探る。ラースは左前方に走る。ウォールの後ろに回り込む隙を伺う。
 しかし、走っているラースに強烈な突きが放たれる。ウォールは高速でラースに近づき突きを放ったのだ。木剣の突きがラースの金属製の鎧の胸当てを紙屑のようにひしゃげる。
 ラースはのけぞって致命傷をかわしていた。なんて突きだ。かわせなかったら終わっていたぞ。ラースは後方に三回飛んでウォールからかなり距離をとる。
 そして、鎧を外し始める。ウォールは黙って見ている。ヤガンはラースが最後の勝負に出ると考える。
 鎧を外したラースは、これで最速の一撃を入れる可能性が少し高まったと考える。ラースは正面から攻め、下段から木刀を切り上げる。
 ウォールは上段から木刀を打ち下ろす。打ち下ろされた木刀はラースの右肩を砕く。ラースの切り上げた木刀は空を切る。ウォールは半身を引いてかわしたのだ。
 ラースは左手で木剣を持つとウォールに突きを繰りだす。ウォールはぎりぎりでかわすとラースの腹に木剣の柄頭を打ち込む。ラースは気絶して倒れる。
 ヤガンが勝敗を宣言する。
 「勝者、ウォール。」
観客から拍手が起きる。ウォールはラースの右肩をヒールする。気絶したラースは村長の家に運び込まれる。
 夕方、ラースは目を覚ます。様子を見ていた村長が言う。
 「ようやく、目を覚ましたか。」「私は負けたのですね。」
 「負けたが、よく頑張った方じゃ。」「勝てなければ、意味はありません。」
 「ウォールは強いぞ。村では剣豪のヤガン先生の次に強いはずじゃ。」「王都に戻ります。」
 「分かった。案内の者をつけよう。」「申し訳ありません。」
ウォールが村長の家へやって来る。ウォールはラースに質問する。
 「ミリアは俺を従騎士に推薦したのか。」「そうだよ。教会も君を従騎士にする考えだ。」
 「分かった。俺は王都に行く。一緒に行こう。」「私と来るつもりか。」
 「そうだ。今度こそ騎士になるよ。」「ああ、なれるだろうよ。十分に強いからな。」
ウォールは喜ぶ。ラースは喜べない。ウォールがミリアに会ったらと思うとつらい。
 翌日、ウォールはラースと村を出る。ウォールにダリアとアミンが言う。
 「ウォール、農夫をやめてしまうの。」「俺は従騎士になるよ。」
 「騎士になれないと言っていたでしょ。」「ミリアが俺を従騎士に推薦しているらしい。」
ダリアとアミンは崩れ落ちる。結局はミリアに負けたのだと思う。当然、父ゴルがウォールを引き留めようと説得しようとしたが、ウォールは聞く耳を持たなかった。
 ウォールは騎士になることで想いがいっぱいになっていた。閉ざされていた道が開けたのである。ウォールはその道しか見えていなかった。
 ウォールとラースは、森の中の道を進む。突然、ウォールが立ち止まる。
 「どうした?」「グレイグリズリーが待ち伏せている。」
 「たたかうのか。」「いや、獲物を持ち帰ると時間がかかる。威圧して追い払うよ。」
ウォールは数歩進むと闘気を発する。ラースは驚く。こいつ試合の時、こんな闘気を発していなかったぞ。本気ではなかったのか。
 10メートルほど先の藪がガサッと動く。
 「逃げて行ったよ。さあ行こう。」「ああ。」
ラースはとんでもない奴と旅をすることになったと考える。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした

セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。 牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。 裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...