エンドロールに誰を流そう

大野

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どんな人間か

朝起きてから

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ああ、鬱陶しい。
朝が来てしまった。



眠る少し前とは打って変わって
彼女は気だるそうに短い白髪を搔き上げる。

茫っとカーテンの隙間から差し込む光を見て、ため息を1つつく。

先程からうるさく鳴る目覚ましを乱暴に止め、
隙間を塞ぐにはあまりに荒々しくカーテンを引っ張る。

そしてもう一度、ベッドに戻り、ため息をつく。
パタン、と仰向けに倒れ、外の光を遮断した部屋の中で、自分の左手の指を右手でなぞるように触れる。



ー・・・感覚が残っている。
…?感覚が、残っている?


バッと起き上がり、もう一度、確かめてみる。

やはり、想像の中で触れたあの男の子の腕の感覚が残っている。
どうして?いつもは、想像なのだとはっきり分かるほど何もないのに。
さっきまでずっと、彼の腕を掴んでいたみたい。
じんわりと温かくて、吸い付くようなキメの細やかな肌。
不思議。
こんなこともあるものなのね。

感傷に耽っていたい気持ちもあったが、
ふと時計を確認すると、もう登校の1時間前だ。

準備をしないと。

2階から降りて
1階のお風呂場に向かい、

シャワーを浴びながら、もしも私が真っ黒な髪だったら、どのくらい伸ばしていたかな。胸の下あたりまで伸ばして、ポニーテールにしていたかしら。
と、考える。

黒染めしていた時期が懐かしい。
すぐに色が戻ってしまうし、プリン頭になった時、すごくからかわれてやめてしまったんだっけ。
もしも、小麦色に焼けることができたら。
もしも、小学生の頃にカラーコンタクトに出会えていたら。
なんて言っても仕方ないわね。

さ、そろそろあがって、コーヒーを準備しなくちゃ。

お風呂場の廊下に出て向かいにリビングがある。オープンキッチンで、目の前に机と椅子が並べてある。

テレビはない。
あるのはたくさんの本棚と、観葉植物だけ。


彼女の朝食はコーヒー一杯だ。
コップの飲み口に淡い色付きの藤が描かれていて、縁は金の線が描かれている。
彼女のお気に入り。

朝食と呼べるのかは分からないが、
テレビをつけることも、音楽を流すこともなく、ただただ茫っとコーヒーを飲む。


いつか、友達だと思っていた友人をお家に連れて来た時、なぜこの家にはテレビがないのかって聞かれたっけ。
これから雑音だらけの世界に出るのに、
家にいる時まで雑音に自ら苛まれるなんて、意味がわからないわ。

コーヒーを飲み終え、ゆったりとカップを洗い場に持っていく。

カチャカチャ、とコップを洗いながら
昨日の宝石を思い出す。

どうして彼の涙は鈍い光だったのかしら。
また、あの人みたいに、今日も会えたら良いのだけれど。

現実逃避は終わり。
観葉植物にお水をあげて、お部屋を掃除して、服を着替えて、学校に向かわないとね。
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