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柊の葛藤
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俺の頭上にある拘束された手に重なるように真上に伸ばす。
颯のしっとりとした脇が、あらわになる。目隠しの向こうで繰り広げられるその無防備な仕草と、つるんとした脇を想像する。
さらけ出された生々しい肌。うっすらと滲んだ汗。そして、その向こうに立ち上る体温にあたためられた、柔らかく濃い匂い。
ふ、と。俺の鼻腔に、熱風が流れ込む。あの夜と同じ匂い。いや、もっと濃く、もっと近く──
「……先輩の好きな匂い届いてますか?」
そう言いながら颯はわざと腕を組み替えたり、脇をすぼめたりして香りを漂わせてくる。
「僕、シャワー浴びてませんから……」
言葉のひとつひとつが熱に染まっていた。それを至近距離で耳に浴びながら、嗅覚を集中させる。
見えない。だけど確かに感じる。目の前で、好きな匂いを曝け出されている──
「……遠慮しないで、たくさん嗅いでください」
「この間みたいに舐めてもいいんですよ?」
そう言って、颯は正面に回り俺を包み呑むように、両腕をゆっくりと上げ、脇を晒した。
濃い汗の香りを頼りにゆっくりと顔を近づけていく。心の中では、羞恥と期待がせめぎ合っていた。鼻先が、颯の脇に触れる。
「……っ、……はぁ……」
ふわっと香ったのはまぎれもない颯の匂い。
「先輩……嗅ぐだけで、そんなに反応して。変態ですね……」
その笑いに誘われるように舌を伸ばしゆっくりと、顎を傾けて──
ぴとっ……ぬる……
舌先が颯の脇の柔らかな肌をなぞった。
ちゅ……くちゅっ……
舌に感じたのは塩気のある汗と、熱い肌の味。理性では言い訳できない本能的な欲求。もう止められなかった。
じゅる……
自分でも分からない。けれど確かに、もっと深くもっと長く、味わいたくて──何度も舌を這わせていく。
「ねぇ、先輩……僕の脇……そんなに美味しいんですか?」
耳元で囁かれる声に俺はびくりと身体を震わせる。唇の端に汗が滲むほどに舐め続けていたことに気づく。
「そんなに夢中になって……赤ちゃんみたいで可愛いです。先輩」
その声が甘く、そして酷だったが、構わず俺はただ、無我夢中で舌を動かし続けていた。
ぬちゅ……ちゅぱ……
くぼみをなぞる様に舐めて甘さを吸いとる様に吸い付いた。
羞恥心も、境界も、すべて融けていくように颯は、舌で濡れた自らの脇に目を落とし、ゆっくりと腕を下ろすと、唾液の音が鳴る。
ぬちゃ……
「あーあ……こんなにして……僕の脇、とろとろになってます……」
「きれいにしてください」
囁くように言いながら、ゆっくりと──唾液の湿り気がたっぷり残る脇を俺の鼻梁にすり…すり…と優しく、でも確かに押し当てる。
すり…すり… ぬちゅ……
「……っ、ん……」
「……ふ、……は……」
俺の呼吸が乱れる。逃れられない距離で唾液の湿りが鼻に絡みつく。すでに目隠しされている俺にとって世界は匂いだけだった。
すぅ……はぁ…… っ……
「先輩、分かりますか? これ……自分の舌の跡ですよ」
ぬるりと肌が滑り、鼻先がまた濡れる。
「……ん……ふ……」
「自分で舐めた脇を、自分で嗅がされて……それなのに嬉しそうに震えてるんですか?」
「い……言わない……で」
くん……はぁ…… っ……
鼻の奥にこびりつく、颯の匂い。舌で味わった温度。そして、支配されているという確信。
「もっと、しっかり染み込ませないと」
「……んん、っ……」
すり、すり──
唾液の濡れた匂いが鼻に押し付けられるたびに、身体の奥がくぐもった熱に包まれていく。そのすべてが、「快感」として蓄積されていた。
「……すごい顔してます。先輩えっちな顔してます……」
吐息を含んだ声で囁きながら、まるで愛おしいものを見るように、けれど獲物を捉えるようにじっと見つめる。
「どうして……そんなになっちゃったんですか?」
「僕の匂いだけで……こんなふうに、乱れて」
「先輩、どうしてそんなに……変態になっちゃったんですか?」
「こんなに疼いて……欲しがって……自分は何もされてないのに……ちんちん、すっごく硬いですよ?」
「ひ……!」
颯はゆっくりと、身体を擦り寄せながら──硬くなる下半身を手で弄る。
「もっと……濃いのが欲しいんですか?」
「……」
沈黙は、否定ではない。ただ、恥ずかしさで言葉を失っているだけ。それを、颯は知っている。
知っていて、責める。
こらえきれずに舌が唇をなぞる。肌が、自然と顫えるようにくねり無意識に何かを求めていた。
颯の視線がそれを捉え、呼吸がさらに早まる。
「……やっぱり、すごいですね。言葉にならなくても……全部、伝わってきます」
その目は、もう快楽の輪郭を見ていた。
「先輩、苦しくなるくらい僕のこと……欲しがってる」
笑いながら、けれど確かに熱を宿した目で、颯はその様子を、確かに味わっていた。
俺は、何かに突き動かされるようにそっと唇を開いた。乾いた喉を潤すように、小さく、ゆっくりと。ぽたり──熱を帯びた滴が、口元からこぼれ落ちる。
視線を伏せたまま、震える声が落ちる。
「……もっと……濃いのをください……まだ満足できない……です。颯の濃厚なのをください……」
その瞬間、空気が変わった。微かに走る熱。言葉が重力を持って部屋に落ちる。颯は静かに、呼吸をひとつ飲み込んだ。
「えへへ……ぞくっとしました」
低く漏れた声が、それを物語っている。次の瞬間、ふわりと頬が撫でられる。熱のこもった掌が、頭をそっと撫でた。
「可愛い……よく言えましたね、先輩」
優しく微笑むその顔に、どこか獣じみたものが混じっていた。
「えらいです……いい子です」
そして、唇に小さく吸うようなキスが落ちる。頑張った子どもに与えられるご褒美のような。それはどこまでも甘い接吻だった。
「……ちゃんとお願いできたご褒美に、たっぷり……躾けてあげますからね」
『躾』と言う言葉が俺の中に、また新たな火種を灯す。
拘束されていた腕がそっと解かれゆっくりと力が抜けていく。颯に導かれるまま、俺は自然と膝をつかされる。目隠しと手錠はそのまま。だからこそ、感覚が鋭くなる。
颯のしっとりとした脇が、あらわになる。目隠しの向こうで繰り広げられるその無防備な仕草と、つるんとした脇を想像する。
さらけ出された生々しい肌。うっすらと滲んだ汗。そして、その向こうに立ち上る体温にあたためられた、柔らかく濃い匂い。
ふ、と。俺の鼻腔に、熱風が流れ込む。あの夜と同じ匂い。いや、もっと濃く、もっと近く──
「……先輩の好きな匂い届いてますか?」
そう言いながら颯はわざと腕を組み替えたり、脇をすぼめたりして香りを漂わせてくる。
「僕、シャワー浴びてませんから……」
言葉のひとつひとつが熱に染まっていた。それを至近距離で耳に浴びながら、嗅覚を集中させる。
見えない。だけど確かに感じる。目の前で、好きな匂いを曝け出されている──
「……遠慮しないで、たくさん嗅いでください」
「この間みたいに舐めてもいいんですよ?」
そう言って、颯は正面に回り俺を包み呑むように、両腕をゆっくりと上げ、脇を晒した。
濃い汗の香りを頼りにゆっくりと顔を近づけていく。心の中では、羞恥と期待がせめぎ合っていた。鼻先が、颯の脇に触れる。
「……っ、……はぁ……」
ふわっと香ったのはまぎれもない颯の匂い。
「先輩……嗅ぐだけで、そんなに反応して。変態ですね……」
その笑いに誘われるように舌を伸ばしゆっくりと、顎を傾けて──
ぴとっ……ぬる……
舌先が颯の脇の柔らかな肌をなぞった。
ちゅ……くちゅっ……
舌に感じたのは塩気のある汗と、熱い肌の味。理性では言い訳できない本能的な欲求。もう止められなかった。
じゅる……
自分でも分からない。けれど確かに、もっと深くもっと長く、味わいたくて──何度も舌を這わせていく。
「ねぇ、先輩……僕の脇……そんなに美味しいんですか?」
耳元で囁かれる声に俺はびくりと身体を震わせる。唇の端に汗が滲むほどに舐め続けていたことに気づく。
「そんなに夢中になって……赤ちゃんみたいで可愛いです。先輩」
その声が甘く、そして酷だったが、構わず俺はただ、無我夢中で舌を動かし続けていた。
ぬちゅ……ちゅぱ……
くぼみをなぞる様に舐めて甘さを吸いとる様に吸い付いた。
羞恥心も、境界も、すべて融けていくように颯は、舌で濡れた自らの脇に目を落とし、ゆっくりと腕を下ろすと、唾液の音が鳴る。
ぬちゃ……
「あーあ……こんなにして……僕の脇、とろとろになってます……」
「きれいにしてください」
囁くように言いながら、ゆっくりと──唾液の湿り気がたっぷり残る脇を俺の鼻梁にすり…すり…と優しく、でも確かに押し当てる。
すり…すり… ぬちゅ……
「……っ、ん……」
「……ふ、……は……」
俺の呼吸が乱れる。逃れられない距離で唾液の湿りが鼻に絡みつく。すでに目隠しされている俺にとって世界は匂いだけだった。
すぅ……はぁ…… っ……
「先輩、分かりますか? これ……自分の舌の跡ですよ」
ぬるりと肌が滑り、鼻先がまた濡れる。
「……ん……ふ……」
「自分で舐めた脇を、自分で嗅がされて……それなのに嬉しそうに震えてるんですか?」
「い……言わない……で」
くん……はぁ…… っ……
鼻の奥にこびりつく、颯の匂い。舌で味わった温度。そして、支配されているという確信。
「もっと、しっかり染み込ませないと」
「……んん、っ……」
すり、すり──
唾液の濡れた匂いが鼻に押し付けられるたびに、身体の奥がくぐもった熱に包まれていく。そのすべてが、「快感」として蓄積されていた。
「……すごい顔してます。先輩えっちな顔してます……」
吐息を含んだ声で囁きながら、まるで愛おしいものを見るように、けれど獲物を捉えるようにじっと見つめる。
「どうして……そんなになっちゃったんですか?」
「僕の匂いだけで……こんなふうに、乱れて」
「先輩、どうしてそんなに……変態になっちゃったんですか?」
「こんなに疼いて……欲しがって……自分は何もされてないのに……ちんちん、すっごく硬いですよ?」
「ひ……!」
颯はゆっくりと、身体を擦り寄せながら──硬くなる下半身を手で弄る。
「もっと……濃いのが欲しいんですか?」
「……」
沈黙は、否定ではない。ただ、恥ずかしさで言葉を失っているだけ。それを、颯は知っている。
知っていて、責める。
こらえきれずに舌が唇をなぞる。肌が、自然と顫えるようにくねり無意識に何かを求めていた。
颯の視線がそれを捉え、呼吸がさらに早まる。
「……やっぱり、すごいですね。言葉にならなくても……全部、伝わってきます」
その目は、もう快楽の輪郭を見ていた。
「先輩、苦しくなるくらい僕のこと……欲しがってる」
笑いながら、けれど確かに熱を宿した目で、颯はその様子を、確かに味わっていた。
俺は、何かに突き動かされるようにそっと唇を開いた。乾いた喉を潤すように、小さく、ゆっくりと。ぽたり──熱を帯びた滴が、口元からこぼれ落ちる。
視線を伏せたまま、震える声が落ちる。
「……もっと……濃いのをください……まだ満足できない……です。颯の濃厚なのをください……」
その瞬間、空気が変わった。微かに走る熱。言葉が重力を持って部屋に落ちる。颯は静かに、呼吸をひとつ飲み込んだ。
「えへへ……ぞくっとしました」
低く漏れた声が、それを物語っている。次の瞬間、ふわりと頬が撫でられる。熱のこもった掌が、頭をそっと撫でた。
「可愛い……よく言えましたね、先輩」
優しく微笑むその顔に、どこか獣じみたものが混じっていた。
「えらいです……いい子です」
そして、唇に小さく吸うようなキスが落ちる。頑張った子どもに与えられるご褒美のような。それはどこまでも甘い接吻だった。
「……ちゃんとお願いできたご褒美に、たっぷり……躾けてあげますからね」
『躾』と言う言葉が俺の中に、また新たな火種を灯す。
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