先輩は、僕のもの

ゆおや@BL文庫

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颯の有休:04

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「……優真くん」
名前を口にした瞬間
胸の奥がきゅっと縮んだ。

切ない音を立てながら
心が昔のあの日へ引き戻される。

君の死を受け入れてから
僕は“恋”という言葉も
“愛”という言葉も失った。

あの日までの僕は
確かに恋を知っていた。

でも、君を失った瞬間に
それはもう僕の中から消えた。

……恋を知っていた頃の僕は――


「ねぇ……優真くん」

だけどね――
もしかしたら
僕はまた恋をしているのかもしれない。

気づかないふりをしてきた想いが
最近になって何度も胸を叩いてくる。

だけど、気づきそうになるたび……
気持ち悪くなる。
怖くなる。

僕は、必死にその感情を
押し殺して、否定している。

そうでもしなきゃ
また壊れてしまいそうで。
また失ってしまいそうで。

「……どうしたらいいかな」
墓前に手を置き、声を落とす。
「優真くんなら……なんて言う?」


秋の風が、頬を優しく撫でた。

ふいに、目を閉じる。
すると――図書室の一角が
まぶたの裏に浮かび上がった。

無視されても
必死に声をかける高校生の自分。

ページをめくる音だけを響かせ
目を合わせずに黙々と本を読む君。

あの静かな空気。
触れたら壊れてしまいそうな
ぎこちない距離感。

そして、時間が少し進む。
ふいに頬をかいて
照れくさそうに笑った君の顔が現れる。

頬をほんのり紅潮させ視線を逸らす――
その仕草が、今の柊と重なる。

重ねてしまっている。

胸の奥で、何かがほどける音がした。

その瞬間、背中をそっと押すように
風がふわりと吹き抜ける。

ゆっくりと振り返ると
すすきが一斉に揺れていた。

黄金色の穂が陽に透け
まるで遠くから
微笑みかけられているように見えた。

颯は、ただその光景を見つめながら
胸の奥で静かに呟いた。

「……ありがとう」


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