先輩は、僕のもの

ゆおや@BL文庫

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颯のマーキング:06

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颯は掴まれた手を見下ろしながら
ぽろぽろと涙を落としていた。

「……嫌いになりましたか?」

震えた声で、呟くように。

「気持ち悪いって……思いますよね」

柊は、すぐに首を横に振った。

「いや、そんなふうに思ってない」

「ただ、びっくりしただけだよ。
 俺も……ごめん。悪かった。」

言葉を重ねる。ゆっくり、真っ直ぐに。

「嫌いになんてなってない。
 泣くほどのことじゃないよ。これは」

それでも、颯の涙は止まらなかった。

「……ほんとに?
 嫌じゃないですか……?」

「ほんとだよ。俺は……」

言いかけて、言葉を探す。

「……俺はただ、まだ状況をうまく
 理解できてないだけで……」

「拒絶とか、嫌悪感とか
 そういうのじゃない」

頬を濡らしながら
颯はわずかに眉を寄せた。
そのまま俯き
また小さく震えた声でつぶやく。

「……じゃあ」

「……今日だけ、一つだけ
 お願いを聞いてもらえませんか?」

顔を伏せたままの
颯の声は、震えていた。
けれどそれ以上に
どこか甘く湿っていた。

柊は、一拍置いてから小さく答える。

「……内容によるけど」

その瞬間、颯がゆっくりと顔を上げる。

濡れた睫毛。涙の跡。
そして、柊の目を
真っ直ぐに見つめる瞳。

「キス、してほしいんです……」

ほとんど囁くような声。
声が喉の奥で揺れ
湿った吐息が柊の頬に触れる距離。

「僕……なんか……その。」

「今日だけ、お願いです……
 どうしても……」

その上目遣いのまなざしと
か細い呼吸が、すぐそこにある。

柊は息をのんだ。
心臓が、ひとつ、強く跳ねた。

いつもの、颯と違う
艶っぽい顔つきに……
心が揺さぶられて
気づいた時には……

「…………わかった。」

そんな顔でお願いされてしまったら……
断れないし、泣かれちゃうと……
心が痛くなるから。

そう答えた柊の声もまた、
かすかに掠れていた。

その言葉と同時に――
颯が一気に身を寄せた。

すぐに唇が重なり
柔らかな熱が柊の口元を包み込む。

ふっと近づく呼吸。
吐息が混ざり合うほど近くで
颯の体温が柊の肌をくすぐった。

「……ん、っ」

唇が少しだけ動いたとき
颯の浅い息が漏れた。

ふたりの間には
もう空気さえ入り込めない。

しばらくして、唇がゆっくりと離れる。
柊の喉からも、ごく小さく吐息がこぼれた。

「……嬉しいです。」

吐き出すように囁く颯の息が
柊の首筋をかすめる。

「だから……先輩
 僕のものになってください」

「……えっ?」

柊の目が揺れる。

「キスしてくれたってことは
 僕のこと許したってことですよね?」

「じゃあ、ちゃんと……
 責任、取ってください」

吐息混じりの声は、かすかに甘く
けれどその奥に
確かな熱を持っていた。

耳元に唇が触れるほどの距離で
さらに言葉が落とされる。

「……ちゃんと
 最後まで……あげますから」

柊は、思わず呼吸を止めた。

状況が全く飲み込めない。
どうしてそうなる?
静かな部屋に
ふたりの熱と息だけが残っていた。
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