先輩は、僕のもの

ゆおや@BL文庫

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颯のマーキング:12

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どれくらいそうしていただろう。

目隠しをされたまま
熱を帯びた空気の中に
柊はただ身を置いていた。

「……先輩、まだ大丈夫ですよね?」

耳元に落ちるその声に
微かに肩が跳ねた。

「僕の匂い、ちゃんと届いてますか?」

息がかかる距離。
声の温度すら肌に伝わるほど、近い。

柊は何も答えない。
けれど──気づけば
鼻先がまたふわりと布に触れていた。

汗が染みたその香りは
どこか癖になるような濃さを持っていた。

少し息を吸うと
喉の奥まで甘いような
熱っぽいようなものが染み込んでくる。

(……どうして、俺……)

逃げる事はいくらでもできた。
むしろ、今も……力づくでなら逃げれる。
でも、逃げようとは思わなかった。

自分から、寄っていた。

「……っ」

鼻を寄せてしまったことに
気づいた瞬間、柊は息を止めた。
なのに、口元から漏れた
小さな吐息は──隠せなかった。

その音に、颯の声が弾む。

「……ふふ。先輩、今の……」

「もっと嗅ぎたいんですね?」

口元に柔らかな吐息が触れた。
囁くような声。
けれど確実に“求めている”
ことが伝わってくる。

柊の表情がわずかに緩んだ。
眉間には困惑の影が落ちるが
拒絶ではなかった。

そっと、後頭部に添えられた手が
もう一度静かに押す。

「そのまま、もう少し。
 ……嗅いでいてくださいね」

鼻腔が、また満たされていく。
少し湿った空気と、颯だけの香りに。

「……いい反応です。先輩が
 段々と僕に染まっていくのが……
 すごく、気持ちいい」

吐息が重なり合う距離で
支配は確かに進行していた。
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