先輩は、僕のもの

ゆおや@BL文庫

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疼いている、柊の身体:02

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──そして夜。

布団の中、ひとり。
柊は枕元のスマホに視線を落とし
検索してしまっていた。

【 汗の匂い 興奮 男性 】
【 匂いフェチ ゲイ 】
【 男の脇 匂い 舐めたい 】

無意識に指が動いている。
画面をスクロールしながら、
息が詰まるような焦燥と
自分への戸惑いと、どこか安堵もあった。

(俺……なんなんだ)

(あれは事故だったんじゃない。
 自分から、求めた……)

目を閉じれば
あの夜の記憶がよみがえる。

脇に顔を埋め、夢中に匂いをかぎ
我を忘れてしゃぶりつき
そして「よく言えました」と微笑まれた。

心も身体も
あの一言だけで支配されていた。
褒められたい。
そうとも思ってしまっている。

なのに、あの“支配者”は
いつも隣で、人懐っこく笑い
可愛い声で「先輩」と呼ぶ。

(あの笑顔の下に
 あの夜の颯がいるのか?)

(それとも、あれは……
 もう見られない顔なのか?)

▶︎

(……もう、戻れないんだろうな)

そんな言葉が、胸の奥に
静かに沈んでいく。

まるで自分の中のどこかが
何かを認めてしまったみたいに。

──颯に変えられてしまった。

人並み以上にはモテて、容姿を褒められ
人並みに恋をして、人並みの経験して……
人並みの性癖を持って、
マニュアル通り女の子を妄想して……
初体験も、もちろん女の子だった。

だけど、地方出張のあの夜
颯にキスをしたあの日から……
自分の身体は
確かにおかしくなっていた。

普通じゃない。
けれど、もう止められなかった。

柊は、部屋の灯りを落とす。
遮光カーテンの隙間から
冷たい街灯がわずかに差し込んでいた。

その淡い光の中で、ひとつ呼吸を吐く。

「……っ、……」

熱が、胸の奥からじわじわと
せり上がってくる。

喉がかすかに震える。
ひとりきりの暗がりでさえ
恥ずかしさがまとわりつくようだった。

(また、……あの匂いが……)

鼻の奥が疼く。
記憶の底からあの夜の残り香が甦ってくる。

体温のこもった、甘くて濃い匂い。
自分の唾液が混じった、欲望の匂い。

「……っ、……ん」

柊の肩が、小さく震える。
指先が、静かに熱へと沈み込む。

ひとつ、またひとつと、
こぼれそうな吐息を
喉の奥に押し込めながら、
それでも止められずに
身体は震えていた。

(また、あの声で……
 責めてほしい……)

(もう、笑いかけるだけじゃ足りない……)

「……っ、く、は……っ」

微かに、声が漏れた。
スマホの画面に映る
誰の物かはわからない
脇の写真を見て
柊は奥歯を噛んだ。

(支配してほしい)
──また“あの”颯に、壊されたい。

「……は……んっ、あ……」

喉の奥で、吐息がもつれていく。
熱いものがせり上がり
締めつけるように胸が鳴る。

「うっ…………イクっ…………」

そして柊は、
そのまま誰にも見せられないまま、
ひとりきりで、静かに身体の奥に
溜まった熱を──解き放った。

深く息を吐いたあと、
首筋に残る微かな汗と
鼓動の余韻だけが、

あの夜の続きがまだどこかで
脈打っていることを教えていた。

──颯の声も、匂いも、笑顔も。

全てが、身体に染み付いていた。
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