ロボットの時代

湯殿たもと

文字の大きさ
6 / 9

ロボットの時代 そのご

しおりを挟む
ロボットの時代 そのご


風邪から復帰した次の日のことだ。さくらが声をかけてきた。どした?、と聞き返すとなんと、俺の分の弁当を作ってきたという。マジか、と言うとあまり大声で言うと恥ずかしいよ、と言った。

これは昼飯代が浮くとかそういった問題では無い。女の子が彼氏のために一生懸命お弁当を作ってくるという、あまりにもベタで重要で少女漫画にのってそうなシチュエーションなのだ。そんなことが俺にあるなんて夢のようだ。

授業をずっと上の空で聞き流し、昼飯の時間まで待ち続けた。そして昼。いよいよお弁当とご対面。

「かなめ君、一緒に食べよ」

さくらが俺の席までやってくる。そして弁当箱を開くと、そこには玉子焼き。お弁当の王道だ。

「いただきます」

まず一口。おっ、こりゃうまいぞ、甘くてふわふわで...

「うまいぞ、一流シェフの味だ」

「あはは、そこまでじゃないよ」

「これから毎日作ってくれ」

するとさくらは赤くなり、小声で

「ほぇ、何かプロポーズみたい」

い、いや、そういう訳じゃ...

さくらは赤面。おそらく俺もだろう。二人で赤くなってると、突然後ろから強い殺気が。そこにいたのは久保田。

「おう、何食ってんだ」

おいおいそんな鬼が泣いて逃げ出しそうな顔で睨むな。するとさくらはこう言う。

「これは違うのっ、えっと、毒味」

「そうだ、毒味だ」

「船引、放課後に体育館裏に来い」

ちっ、めんどくさいことになったぞ。


そして放課後。体育館裏。久保田が準備運動をしていた。うーん、これは戦うしかないようだ。

「来たか」

「当たり前だ、すっぽかすような男じゃ無い」

「わっやめてよふたりとも」

さくらが止めに入る。それでも久保田は動じない。さくらが追撃。

「ボク、暴力的な人は嫌いかな」

久保田に精神的大打撃。ふらふら。

「それにボクはかなめ君が好きだから...その、ごめんね?」

そしてさくらは俺の手を引いて、その場から去った。久保田、何かすまん。


「今日のおかずはなんだ」

「秘密っ」

そのあと、さくらと買い物にきた。さくらは慣れた手つきで買い物かごに食材をどんどん入れていく。さつまいも、海老、などなど。

「天ぷらか」

「当たりっ」

ご機嫌な様子でさくらが答える。


満杯の買い物袋を持って家に帰ると、さくらはさっそく天ぷらを作り始めた。まるで毎日作ってるかのような手際の良さだ。

「火傷するなよ」

「大丈夫だよ、かなめ君は何の天ぷらが好きなの?」

「海老かな」


夕食後、さくらを見送る。

「悪いな、毎日来てもらって」

「いいの、かなめ君こそ毎日ボクの料理を食べてくれてありがとね」

「ああ」

「じゃ、また明日っ」


続きます
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...