走れない新幹線

R3号

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新幹線の中、その少女のことが少しずつ分かってきた。

名前は由佳と言い、なんと自分の高校の後輩だった。

出身校が同じということに加え陸上部の後輩とわかると一気に親しみがうまれ会話が弾んだ。授業の話や共通で知っている先生の話をして彼女は少しずつ笑うようになった。

すると彼女の方から先ほどの写真を見せて来て話を始めた。

「さっき言ったようにこの写真に写っているのは私と幼馴染の勇輝君って子です。幼稚園からの友達で小学校にあがって同じタイミングで陸上を始めました。周りからは揶揄われたりしたけど、私達は心から友達でライバルでいっつも遅くまで練習してタイムを競ってました。」

懐かしそうに語る彼女は少し間を空けて続けた。

「高校からは男女が出れる大会が別れるからそれぞれ1位になってからまた勝負をしようって約束しました。でも・・・1年生の大会の準決勝直前に勇輝君は交通事故に遭って亡くなりました。私と自主練をした帰りに車に轢かれて・・・。」


 そこまで話すと彼女はまた目に涙を浮かべ始めた。僕は何も言えずただ彼女が落ち着くのを待つしかできなかった。

「だから私のせいで勇輝君は死んだんです。それ以来シューズを見るだけで胸が苦しくなって、なんとか走ろうとしても視界がぼやけて息ができなくなりました。これは親友を死なせた私に対する罰なんだと思います。」



しばらくの間沈黙が続く。



 ここまで話を聞いておいたからには彼女の力になってあげたいが、かける言葉も思い浮かばない自分が嫌になった。

「由佳、隣の方は知り合い?」

と先ほどまで眠っていた母親が起きて声をかけた。僕は少しドキッとしたが彼女が母親に今までの話をしてくれた。

「あらそうなの。実は今回の温泉旅行もこの子を慰める意味も込めてのものでした。でもどうしても浮かない顔をしていたので心配していたんです。」


 あと少しで駅に着く。

ここまで話を聞いてしまってじゃあ頑張ってねだけで終わるのはなんだか落ち着かなかった。

咄嗟に

「あの。もしよかったら週に一回程度でいいから高校の周りを一緒にランニングしない?もちろん由佳ちゃんの気持ちと親御さんの許可があればなんだけど・・・。」


 彼女は少し驚いた顔をした後写真を見つめてから母親の方に顔を向けた。母親も少し考えた表情をした後に彼女と少し話していた。

3分ほど経ち二人は僕に視線を向けて母親が口を開いた。

「私もこの子が頑張って走っている姿がとても好きなんです。何より、出会ったばかりの人に由佳がこんな話をするのなんて初めてです。ですから私は彼女の意思を尊重しようと思います。」

真剣な瞳で真っ直ぐそう言った。

そして彼女は
「まだ走るのは怖いけど、また走れるようになりたい。勇輝君との約束もまだ果たせてないし、もう一回頑張ってみたい。」

と彼女も母親同様まっすぐな瞳でそう言ってくれた。

「どこまで力になれるかは分からないけど、同じ高校で、同じ部活で、陸上が好きな後輩を放っておくのはなんだか寂しいから協力させて欲しい。」
僕がそう言うと彼女は少し不安そうに頷いた。

話が落ち着いたところで駅に着いた。
改札を出てこの日は解散した。

僕たちは週に一回の日曜日の夕方からランニングをすることにした。彼女の父親には母親の方から説明をしてくれて最初は少し不安がられていたが、由佳の説得もあり納得してくれた。

気持ちが先走ってあんなことを言ってしまったけど、僕に彼女の傷を癒すことができるだろうか。そんな不安を持ちながら僕は家路についた。

まさかこんな結末のご褒美旅行になるなんて。
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