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13.忘れられない光景
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燃え盛る炎。
赤く染まった王城と街並みが、毎晩のように夢に出る気がする。
今日も、きっと明日もそうだ。
涙が枯れるまで泣いたけど、悲しみが消えたわけじゃない。
ただ少し、心は軽くなった。
今も隣にいる彼のお陰で――
「どうしたの?」
「……いえ、何でもありません」
「そう。歩き疲れてないかな?」
「はい。まだ大丈夫です」
森へ転移した私を、ユーレアスが助けに来てくれた。
一人で心細かったけど、彼が一緒だと安心する。
「フィー!」
「そうだね。フィーも一緒にいてくれたね」
自分もいるぞと主張するように、光の精霊フィーが目の前に顔を出した。
私と契約しているフィーは、どんな時でも傍にいる。
もう一人の家族のような存在だったことを、今さら思い出す。
「おや? ようやく顔を出したんだね」
ユーレアスがフィーに気付いた。
普段フィーは霊体化して私の傍にいる。
実体化し続けるのは、それだけで体力と魔力を消費してしまうから。
契約者である私の心が不安定になると、霊体化すら保てなくなって一時的に私の魔力と混ざり合う。
さっきまでは悲しみに苛まれていたから出て来れなかった。
フィーが出てこられる程度には、私の心も落ち着いたということだ。
だけど……
「まだ忘れられないって顔だね」
「えっ、あ、ごめんなさい」
「謝る必要はないよ。昨日の今日で整理がつくほど簡単な出来事じゃなかったからね。そもそも忘れれるなんて無理なことだ」
「……はい」
ユーレアスの言う通りだと思った。
仮に一年、十年経とうとも、私はあの光景を忘れられない。
二度と会えなくなった二人のことを、死ぬまで後悔し続けるだろう。
今さら何を後悔した所で無駄だというのに。
それでも私は……もし願いが叶うなら、もう一度だけ二人に会いたいと思ってしまう。
会って話をしたい。
くだらない話でもいいから、二人の声を聞いて、笑顔を見せてほしい。
それが不可能なことくらい、子供の私でも理解できる。
だからこそ、願わずにはいられない。
私たちは森を抜けて、小さな町にたどり着いた。
名前はカリナス。
聞いたことのない名前の町だった。
「この辺りの土地は、どの国にも属していないからね。それにこんな小さな町なんて、見過ごされてもおかしくないよ」
と、ユーレアスは教えてくれた。
お父様の公務以外で遠出もしたことのない私には、外の世界はわからないことだらけだ。
ユーレアスに連れられ、一件の宿屋に入る。
「今日はここで一泊しよう」
「はい」
ずっと歩き通しだったから、両脚とも疲れている。
ユーレアスが店主と話をして、二階の部屋を案内された。
部屋は一つで、ベッドも一つしかない。
案内してくれた店主が申し訳なさそうに言う。
「申し訳ありません、現在空室はここだけでして」
「う~ん、まぁ良いでしょう」
その場で手続きを済ませて鍵を受け取る。
店主だけが去っていき、私とユーレアスが残された。
「ベッドはユイノアちゃんが使っていいからね」
「え、ユーレアス様は?」
「僕はその辺の床で十分さ。旅は長いし、野宿にも慣れているからね」
「そんなの駄目です! お金の払ったのはユーレアス様なのに」
「構わないよ。君はもっと子供らしくあるべきだ」
そう言って、ユーレアスは私の頭を優しく撫でてくれた。
彼は私の服装を眺め、はっと気づいて言う。
「そうそう。王城を出るとき、いくつか服を持ってきたんだよ」
「服ですか?」
「うん。さすがにその恰好じゃ目立つだろうと思ってね」
ユーレアスは魔法のカバンから服を取り出す。
服の場所なんて誰に聞いたのだろう。
「なるべく地味目のを選んだつもりだけど、やっぱりお姫様の服は豪華だね」
「そう……ですね」
お姫様という単語に反応してしまう。
そう、私はお姫様だったけど、今はもう違う。
違うということを思い出す度に、思い出したくないことまで一緒に浮かんでしまう。
それに気づいたのか、ユーレアスは申し訳なさそうな顏をしていた。
「もう遅いし、シャワーだけ済ませて眠ろう」
「はい」
言われた通りにシャワーを浴びて、私はベッドで横になった。
自分でけベッドを使う申し訳なさよりも、疲れのほうが強かったらしい。
横になった途端、私の意識は沈んでいく。
夢を見る。
楽しい毎日が続く夢。
それが一瞬で砕け散り、絶望する所で終わる。
悲しい夢だけど、不思議と心細さは感じなかった。
誰かが私の手を握って、安心させてくれている気がする。
「ぅ……」
「おはよう、ユイノアちゃん」
目が覚めて、その理由がわかった。
ユーレアスが私の手をギュッと握ってくれている。
心細くなかったのは、彼がいてくれたからだ。
「ありがとうございます」
「僕は何もしていないよ。さぁ、出発の準備をしよう」
「もう出るんですか?」
「うん。行きたい所が出来たからね」
私たちは荷物を整理し、一階の受付に降りる。
店主に鍵を返してから、ユーレアスが尋ねる。
「付かぬことを伺いますが、この辺りで地下へ続いている洞窟ってありませんか?」
「洞窟ですか? それなら西へ向かった先にありますが」
「ほう、それは運が良い。大まかに道を教えて頂けませんか?」
「構いませんが、あそこは特になにもありませんよ」
店主はそう言ったけど、ユーレアスはそれでも良いと答えた。
首を傾げながら店主は道を教える。
紙に書かれた簡易的な地図を見ながら、私たちは町を出ていく。
赤く染まった王城と街並みが、毎晩のように夢に出る気がする。
今日も、きっと明日もそうだ。
涙が枯れるまで泣いたけど、悲しみが消えたわけじゃない。
ただ少し、心は軽くなった。
今も隣にいる彼のお陰で――
「どうしたの?」
「……いえ、何でもありません」
「そう。歩き疲れてないかな?」
「はい。まだ大丈夫です」
森へ転移した私を、ユーレアスが助けに来てくれた。
一人で心細かったけど、彼が一緒だと安心する。
「フィー!」
「そうだね。フィーも一緒にいてくれたね」
自分もいるぞと主張するように、光の精霊フィーが目の前に顔を出した。
私と契約しているフィーは、どんな時でも傍にいる。
もう一人の家族のような存在だったことを、今さら思い出す。
「おや? ようやく顔を出したんだね」
ユーレアスがフィーに気付いた。
普段フィーは霊体化して私の傍にいる。
実体化し続けるのは、それだけで体力と魔力を消費してしまうから。
契約者である私の心が不安定になると、霊体化すら保てなくなって一時的に私の魔力と混ざり合う。
さっきまでは悲しみに苛まれていたから出て来れなかった。
フィーが出てこられる程度には、私の心も落ち着いたということだ。
だけど……
「まだ忘れられないって顔だね」
「えっ、あ、ごめんなさい」
「謝る必要はないよ。昨日の今日で整理がつくほど簡単な出来事じゃなかったからね。そもそも忘れれるなんて無理なことだ」
「……はい」
ユーレアスの言う通りだと思った。
仮に一年、十年経とうとも、私はあの光景を忘れられない。
二度と会えなくなった二人のことを、死ぬまで後悔し続けるだろう。
今さら何を後悔した所で無駄だというのに。
それでも私は……もし願いが叶うなら、もう一度だけ二人に会いたいと思ってしまう。
会って話をしたい。
くだらない話でもいいから、二人の声を聞いて、笑顔を見せてほしい。
それが不可能なことくらい、子供の私でも理解できる。
だからこそ、願わずにはいられない。
私たちは森を抜けて、小さな町にたどり着いた。
名前はカリナス。
聞いたことのない名前の町だった。
「この辺りの土地は、どの国にも属していないからね。それにこんな小さな町なんて、見過ごされてもおかしくないよ」
と、ユーレアスは教えてくれた。
お父様の公務以外で遠出もしたことのない私には、外の世界はわからないことだらけだ。
ユーレアスに連れられ、一件の宿屋に入る。
「今日はここで一泊しよう」
「はい」
ずっと歩き通しだったから、両脚とも疲れている。
ユーレアスが店主と話をして、二階の部屋を案内された。
部屋は一つで、ベッドも一つしかない。
案内してくれた店主が申し訳なさそうに言う。
「申し訳ありません、現在空室はここだけでして」
「う~ん、まぁ良いでしょう」
その場で手続きを済ませて鍵を受け取る。
店主だけが去っていき、私とユーレアスが残された。
「ベッドはユイノアちゃんが使っていいからね」
「え、ユーレアス様は?」
「僕はその辺の床で十分さ。旅は長いし、野宿にも慣れているからね」
「そんなの駄目です! お金の払ったのはユーレアス様なのに」
「構わないよ。君はもっと子供らしくあるべきだ」
そう言って、ユーレアスは私の頭を優しく撫でてくれた。
彼は私の服装を眺め、はっと気づいて言う。
「そうそう。王城を出るとき、いくつか服を持ってきたんだよ」
「服ですか?」
「うん。さすがにその恰好じゃ目立つだろうと思ってね」
ユーレアスは魔法のカバンから服を取り出す。
服の場所なんて誰に聞いたのだろう。
「なるべく地味目のを選んだつもりだけど、やっぱりお姫様の服は豪華だね」
「そう……ですね」
お姫様という単語に反応してしまう。
そう、私はお姫様だったけど、今はもう違う。
違うということを思い出す度に、思い出したくないことまで一緒に浮かんでしまう。
それに気づいたのか、ユーレアスは申し訳なさそうな顏をしていた。
「もう遅いし、シャワーだけ済ませて眠ろう」
「はい」
言われた通りにシャワーを浴びて、私はベッドで横になった。
自分でけベッドを使う申し訳なさよりも、疲れのほうが強かったらしい。
横になった途端、私の意識は沈んでいく。
夢を見る。
楽しい毎日が続く夢。
それが一瞬で砕け散り、絶望する所で終わる。
悲しい夢だけど、不思議と心細さは感じなかった。
誰かが私の手を握って、安心させてくれている気がする。
「ぅ……」
「おはよう、ユイノアちゃん」
目が覚めて、その理由がわかった。
ユーレアスが私の手をギュッと握ってくれている。
心細くなかったのは、彼がいてくれたからだ。
「ありがとうございます」
「僕は何もしていないよ。さぁ、出発の準備をしよう」
「もう出るんですか?」
「うん。行きたい所が出来たからね」
私たちは荷物を整理し、一階の受付に降りる。
店主に鍵を返してから、ユーレアスが尋ねる。
「付かぬことを伺いますが、この辺りで地下へ続いている洞窟ってありませんか?」
「洞窟ですか? それなら西へ向かった先にありますが」
「ほう、それは運が良い。大まかに道を教えて頂けませんか?」
「構いませんが、あそこは特になにもありませんよ」
店主はそう言ったけど、ユーレアスはそれでも良いと答えた。
首を傾げながら店主は道を教える。
紙に書かれた簡易的な地図を見ながら、私たちは町を出ていく。
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