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 レーゲンさんの予想外の反応にちょっと驚く。
 何となく真面目そうな方だと思って見ていたから、猛反対されると思っていた。
 
「陛下がお決めになった相手なら、私は文句はありません。私は、です。他の方々は、言いたいこともあるでしょうね」
「無論わかっている。すぐにわからせてやろう。この世に、彼女以上に俺の妻として相応しい女性はいないとな」

 また恥ずかしいセリフを堂々と……。

「随分と信頼されているようですが、以前から交流があったのですか?」
「あるわけがないだろう。敵国の鍛冶師だぞ」
「ですよね。ならどうしてそこまで?」
「複雑な理由などない。俺がそう、感じたからだ」

 グレン様は堂々と口にした。
 本当に、明確な理由なんてないのだろう。
 直感か、霊感か。
 根拠のない確信が、彼を突き動かしている。
 そんな風に見える。
 レーゲンさんは呆れてため息をこぼし、笑みを見せる。

「陛下らしいですね」
「ふっ」

 レーゲンさんが私のほうを向く。

「ソフィアさん、ですね?」
「は、はい!」
「陛下の勝手に付き合っていただき感謝いたします。私はレーゲン、陛下の補佐をしておりますので、何か困ったことがあれば、いつでもお声掛けください」
「あ、ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ。聖剣の鍛冶師とこうしてお会いできるなんて、光栄です」

  ◇◇◇

「――できません」
「なんだと?」

 不穏な空気が漂う。
 ソフィアがいなくなった鍛冶場で、勇者エレインと中年男性が向かい合っている。
 その男性は宮廷で働く鍛冶師の一人だった。
 
「どういうことだ!」
「申し上げた通りです。私では、この聖剣を元に戻すことはできないのです」
「っ……」
「これを仕上げたのはソフィアさんです。彼女でなくては調整はおろか、刃を研ぐことすらできません」
「この役立たずが!」

 エレインは抜けなくなった聖剣を床に叩きつける。
 乱暴な扱いをされても、聖剣はピクリとも抜ける気配がなかった。
 今だ抜けない聖剣を元に戻すため、他の鍛冶師に依頼をしたエレインだったが、結果はこの通りである。

「悪いことは言いません。今からでも彼女を」
「うるさい! あんな女が必要だという気か!」
「……」

 その通りだと、鍛冶師の男は内心思っている。
 しかし口に出せば反論されるだろう。
 故に言葉を飲み込むしかなかった。

「ソフィア……僕を馬鹿にしてぇ……」

 未だ抜けない。
 故に気づいていない。
 自分の弱さを。

 彼が思い知ることになるのは、まだ少し先の話である。
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