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レーゲンさんが慌てた表情でグレン様に詰め寄る。
私は驚いて変な声が出てしまった。
グレン様はキョトンとした表情を見せる。
「何を言っている?」
「惚けないでくださいよ! いくら陛下でも女性を攫ってくるのはやりすぎです! 犯罪ですよ!」
「だから何を、攫ってきてなどいない。同意の上でここにいる。そうだろ? ソフィア」
「え、あ、まぁ……はい?」
実質攫われてきたようなものでは?
同意したといえばそうだけど、私自身いきなりお城に連れてこられて驚いてはいたから、ちょっぴり微妙は反応になってしまった。
その反応がよくなかったのだろう。
レーゲンさんはさらにグレン様を問い詰める。
「疑問形じゃないですか! 正直に言ってください!」
「だから、俺が嘘をつくと思っているのか? レーゲン、お前なら知っているはずだ。俺は嘘を好まない。略奪も、蹂躙も、他の未来を奪うことを望まない」
「それは――! そうですね」
まるで魔王と呼ばれる男のセリフとは思えない。
つくづく、魔王と呼ばれていることに疑問を抱いてしまう。
グレン様の言葉で動揺を納めたレーゲンさんは、メガネをくいっと持ち上げ、改めてグレン様に尋ねる。
「どういうことですか? どこへ行かれていたのです?」
「リヒト王国だ」
「敵国じゃないですか! またお一人で危険な場所に! 何かあったらどうするおつもりです?」
「そう騒ぐな。いつものことだろう?」
「いつものことだから騒いでいるんですよ! 無事に戻ってこられてホッとしています。それで、何をしに行かれたのですか?」
「勧誘だ。彼女のな」
「勧誘?」
グレン様の話に誘導され、レーゲンさんの視線が改めて私に向けられる。
私は反応に困り、とりあえずいい姿勢を心掛けた。
背筋を伸ばして、まっすぐ立つ。
「君は……」
「は、初めまして! ソフィアといいます。えっと……」
「彼女はリヒト王国の宮廷で働いていた鍛冶師だ」
「宮廷鍛冶師……! まさかあの、聖剣を打ったという鍛冶師ですか!?」
グレン様はニヤリと笑みを浮かべる。
レーゲンさんは驚きながら私のことを見つめていた。
どうやら私の存在は、敵国にも伝わっていたらしい。
実際に戦っている勇者のエレイン様はわかるけど、ただの鍛冶師でしかない私に驚かれるとは思わなかった。
「ま、まさか……宮廷から連れ出したのですか?」
「違う。彼女はもう宮廷鍛冶師ではない。事情は……自分で説明したほうが早いだろう?」
「は、はい。いろいろありまして……」
私は簡単に、レーゲンさんに事情を説明した。
レーゲンさんは酷く驚いていた。
「なんと愚かな……以前から思っていましたが、リヒト王国の勇者は間抜けなのですか?」
「あ、あははは……」
さすがにその通りです、とは言いにくい。
私は困った笑い方をする。
この反応が答えなのだが、エレイン様の評判はあまりよくないことがわかった。
敵国なのだから当然かもしれないけど、予想していた反応とは異なる。
「それで、陛下が我が国へ勧誘した……と?」
「ああ。俺の婚約者としてな」
「そこですよ! 鍛冶師としてじゃなく婚約者ですか?」
「何か問題があるか?」
それはあるでしょう。
一国の王が選んだ相手は、敵国の鍛冶師で、しかも生まれはただの平民だ。
まったく釣り合っていない。
普通に考えれば、誰も認めるはずがない。
「いえ、問題はないのですが……」
え、ないの?
私は驚いて変な声が出てしまった。
グレン様はキョトンとした表情を見せる。
「何を言っている?」
「惚けないでくださいよ! いくら陛下でも女性を攫ってくるのはやりすぎです! 犯罪ですよ!」
「だから何を、攫ってきてなどいない。同意の上でここにいる。そうだろ? ソフィア」
「え、あ、まぁ……はい?」
実質攫われてきたようなものでは?
同意したといえばそうだけど、私自身いきなりお城に連れてこられて驚いてはいたから、ちょっぴり微妙は反応になってしまった。
その反応がよくなかったのだろう。
レーゲンさんはさらにグレン様を問い詰める。
「疑問形じゃないですか! 正直に言ってください!」
「だから、俺が嘘をつくと思っているのか? レーゲン、お前なら知っているはずだ。俺は嘘を好まない。略奪も、蹂躙も、他の未来を奪うことを望まない」
「それは――! そうですね」
まるで魔王と呼ばれる男のセリフとは思えない。
つくづく、魔王と呼ばれていることに疑問を抱いてしまう。
グレン様の言葉で動揺を納めたレーゲンさんは、メガネをくいっと持ち上げ、改めてグレン様に尋ねる。
「どういうことですか? どこへ行かれていたのです?」
「リヒト王国だ」
「敵国じゃないですか! またお一人で危険な場所に! 何かあったらどうするおつもりです?」
「そう騒ぐな。いつものことだろう?」
「いつものことだから騒いでいるんですよ! 無事に戻ってこられてホッとしています。それで、何をしに行かれたのですか?」
「勧誘だ。彼女のな」
「勧誘?」
グレン様の話に誘導され、レーゲンさんの視線が改めて私に向けられる。
私は反応に困り、とりあえずいい姿勢を心掛けた。
背筋を伸ばして、まっすぐ立つ。
「君は……」
「は、初めまして! ソフィアといいます。えっと……」
「彼女はリヒト王国の宮廷で働いていた鍛冶師だ」
「宮廷鍛冶師……! まさかあの、聖剣を打ったという鍛冶師ですか!?」
グレン様はニヤリと笑みを浮かべる。
レーゲンさんは驚きながら私のことを見つめていた。
どうやら私の存在は、敵国にも伝わっていたらしい。
実際に戦っている勇者のエレイン様はわかるけど、ただの鍛冶師でしかない私に驚かれるとは思わなかった。
「ま、まさか……宮廷から連れ出したのですか?」
「違う。彼女はもう宮廷鍛冶師ではない。事情は……自分で説明したほうが早いだろう?」
「は、はい。いろいろありまして……」
私は簡単に、レーゲンさんに事情を説明した。
レーゲンさんは酷く驚いていた。
「なんと愚かな……以前から思っていましたが、リヒト王国の勇者は間抜けなのですか?」
「あ、あははは……」
さすがにその通りです、とは言いにくい。
私は困った笑い方をする。
この反応が答えなのだが、エレイン様の評判はあまりよくないことがわかった。
敵国なのだから当然かもしれないけど、予想していた反応とは異なる。
「それで、陛下が我が国へ勧誘した……と?」
「ああ。俺の婚約者としてな」
「そこですよ! 鍛冶師としてじゃなく婚約者ですか?」
「何か問題があるか?」
それはあるでしょう。
一国の王が選んだ相手は、敵国の鍛冶師で、しかも生まれはただの平民だ。
まったく釣り合っていない。
普通に考えれば、誰も認めるはずがない。
「いえ、問題はないのですが……」
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