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 私はお客さんの傾向を知るため、街にある武器屋さんを尋ねることにした。
 なぜかグレン様も一緒に。
 国王陛下と二人だけで街を歩いている。
 想像しただけでも恐れ多いのに、こうして現実に隣に立っている。
 周りからはどんな風に見られるのか緊張していたけど……。

「誰も話しかけてこないのは、グレン様の魔法ですか?」
「そうだ。認識阻害を付与している」

 そういえば、以前に店舗の場所を選ぶため街を回ったことがあった。
 あの時も偽装を施し、周囲の人たちにグレン様だと気づかれないようにしていたのを今さら思い出す。
 グレン様は魔王と呼ばれる人だ。
 私が心配するようなことは、大体が杞憂に終わるのだろうと再確認する。
 
 しばらく人通りの多い繁華街を進み、宿泊施設が多いエリアに入る。
 この辺りは冒険者が多く、武器屋の需要も高いと以前に説明してもらっていた。
 グレン様が指をさす。

「あの店が一番大きそうだぞ」
「そうみたいですね。入ってみてもいいですか?」
「お前の好きにすればいい」
「ありがとうございます」

 私は見つけた中で一番大きな武器屋さんに足を運んだ。
 中に入ると、ずらっと剣が並んでいる。
 思ったよりも広々していて、商品の数も多かった。
 鉄の匂いがする。
 あまり共感されないけど、私はこの匂いが好きだ。
 たくさんの剣に囲まれているこの場所も、自室のベッドと同じくらい落ち着く。
 深呼吸したくなるほど空気が美味しい。
 
「意外と広い。の割に客は少ないようだが」
「お客さんが少ない時間なのかもしれませんね」
「かもしれんな。今の時間は……大抵の冒険者も依頼で外に出ているか」

 ちょうどいいタイミングだったかもしれない。
 混雑時じゃないなら、ゆっくり商品を眺めることができる。
 レイアウトも参考にさせてもらおう。
 
「たくさんありますね」
「そうだな。だが、この中に一つとして、お前が打った一振りに勝るものはないだろう」
「そ、そんなことは……」
「ないか? お前が一番わかっているはずだ」
「……」

 確かに、数は多いけど、剣の質は思ったよりも高くない。
 私が打ち直した騎士の剣。
 あれのほうがずっと質が高い。
 自惚れではなく、鍛冶師としてやってきたプライドがそう言わせている。
 口に出しはしないけど、ちょっぴり落胆していた。
 
「おいおい嬢ちゃん、こんなところで何やってんだ?」
「へ?」

 急に見知らぬ男性に声をかけられた。
 大柄で背中に大剣を背負った男性と、その左右にも細目の男性が二人いる。
 見た目からして冒険者だろうか。
 なんで急に話しかけてきたのだろう?
 知り合いでもないのに。
 
「ここは武器屋だぜ? 嬢ちゃんみたいな女子供が来る場所じゃねーぞ」
「えっと……」
「暇なら俺たちと飯でも行かないか?」
「……!」

 ま、まさかこれ……ナンパ? 
 わ、私をナンパしてる?
 人生初のナンパに、ちょっぴりテンションが上がった。
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