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2.目指す道
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特殊技能――スキル。
天より与えられし加護であり、才能の極端な例とされる。
種類は多いが極めて所有者が少なく、希少な才能ではあるものの、魔術が発展した現代ではあまり目立たない力だ。
強力なスキルを持っていても、魔術で同じことが出来てしまうから。
故に魔術師にとっては、スキルの有無は全くと言っても良いほど関係しない。
「鍛冶……鍛冶スキル」
水晶に映し出された文字を読み上げた。
どうやら俺の身体にはスキルが宿っていたらしい。
鍛冶スキル、つまり武具を作り出すことのできる才能が。
「ははっ、よりによって鍛冶か」
せめてもっと強力なスキルが良かった。
鍛冶スキルは文字通り、鍛冶師にとっては必須のスキル。
ただし、あくまで技能の延長でしかない。
このスキルがなくても知識を取り入れ鍛錬を積めば、武器や防具を作ることは出来る。
作成できる武器の品質や、魔剣の生成に大きな制限が出来る程度で……
「魔剣……魔剣?」
鍛冶スキルの中には、魔剣作成も含まれている。
魔剣とは魔力を宿した剣のこと。
中には術式が付与されている魔剣もある。
そういう魔剣を使えば、仮に魔術に関する知識や適性がなくても、魔力さえ流せば術式が使える。
例え術式に適性がなくても――
「これだ」
見つけた。
見つけたぞ!
術式に適性がない俺でも、魔術師を名乗れるかもしれない可能性を!
「魔剣だ。魔剣なら俺でも術式が使える! 魔剣さえあれば――でも……」
興奮がスッと醒めていく感覚に苛まれる。
使えるからなんだというのだ。
高々一つや二つの術式が使える程度で、しかも道具に頼っている時点で、父上は認めてくれないだろう。
魔術とはこの世で最も自由な力のことを指す。
自由自在に様々な術式を操ってこそ、魔術師が魔術師らしくいられる。
「自由……」
魔剣に付与できる術式は一つだけ。
それでは一つの術式しか使えないじゃないか。
たった一つだけで自由とは呼べない。
平均的な能力の魔術師だって、複数の術式に適性があるのは当たり前で。
その中でもより多くの術式に適性を持つ者が優れた魔術師になる。
持っている数がそのまま自身の武力になるんだ。
「数……か。なら魔剣を自分で作れるようになって、全部の術式を付与出来たら?」
そんなことが可能なのだろうか?
でも、仮にできたとしたら、この世の全ての術式を行使できる魔術師が誕生する。
有史以来、そんな人物は魔術師の祖だけだ。
いかに優れた魔術師でも、使えない術式は確かに存在する。
「だけど魔剣なら……適性は関係ない。作れるのなら……」
あらゆる術式を魔剣に付与できるなら、俺でも自由に魔術が行使できる。
いやもしかしたら、この世で最も自由な魔術師にすらなれるかもしれないじゃないか!
醒めかけていた興奮が再び湧き上がる。
俺は興奮が続くうちに、魔剣に関する知識を集めることにした。
部屋を飛び出し、屋敷の書斎に足を運ぶ。
数万を超える本が並ぶ書斎から、魔剣について記された書物を選び取り出し、自分の部屋に運んだ。
「鍛冶のことも知っておきたいな。その本も一緒に」
持てるだけ持って書斎を出て、部屋に移動する。
何往復かしていたら、いつの間にか外が暗くなっていた。
夕食の時間には俺だけ別で用意された食事が部屋に運ばれてくる。
そんなことは気にせず、集めた本に目を通す。
魔剣の作り方、付与できる術式に制限があるのか。
調べていくと徐々に理解が深まる。
「術式の理解と文字化さえできれば付与に制限はないのか」
だったら可能性はあるんじゃないか?
術式の文字化は難しい項目だけど、知識を蓄え理解を深めれば可能なことだ。
才能に左右されない。
純粋な努力で優劣が決まる項目なら、俺でもやり遂げることが出来る。
一番の問題は鍛冶だ。
こればっかりは知識だけで身につかない。
スキルがあっても、ちゃんとした環境で修練を積まないと。
「ここには魔術に関する本なら、全て揃っていると父上はおっしゃっていたよな」
魔術師が魔術を学ぶ上で、王立魔術学園の次に優れた環境はここだろう。
特に知識に関しては、書斎にある本を全て読み漁ればあらゆる術式への理解が深められる。
魔剣作りにも知識が必要不可欠みたいだし、学ぶならここ以上の場所はない。
「まずは知識をつけよう。書斎の本は全部読んで、術式を頭に叩き込むんだ。それから……」
未来へ続く道、これから歩むべき道のりを思い浮かべる。
才能のない俺が魔術師になるには、この道を進むしかない。
これ以外に道はない。
とても険しくて細い道だ。
それでも進むというのなら、それ相応の覚悟が必要になるだろう。
幼い俺にだってそれくらいはわかる。
覚悟はあるか?
自分に問いかけて、即答する。
「ある! 俺はなりたいんだ! この世で最も自由な魔術師に」
そのためならどんな努力も惜しまない。
手に入るのなら、それ以外の全てを捨ててしまっても良いと思える。
覚悟は決めた。
ならばあとは進むのみ。
この道を。
一年後――
天より与えられし加護であり、才能の極端な例とされる。
種類は多いが極めて所有者が少なく、希少な才能ではあるものの、魔術が発展した現代ではあまり目立たない力だ。
強力なスキルを持っていても、魔術で同じことが出来てしまうから。
故に魔術師にとっては、スキルの有無は全くと言っても良いほど関係しない。
「鍛冶……鍛冶スキル」
水晶に映し出された文字を読み上げた。
どうやら俺の身体にはスキルが宿っていたらしい。
鍛冶スキル、つまり武具を作り出すことのできる才能が。
「ははっ、よりによって鍛冶か」
せめてもっと強力なスキルが良かった。
鍛冶スキルは文字通り、鍛冶師にとっては必須のスキル。
ただし、あくまで技能の延長でしかない。
このスキルがなくても知識を取り入れ鍛錬を積めば、武器や防具を作ることは出来る。
作成できる武器の品質や、魔剣の生成に大きな制限が出来る程度で……
「魔剣……魔剣?」
鍛冶スキルの中には、魔剣作成も含まれている。
魔剣とは魔力を宿した剣のこと。
中には術式が付与されている魔剣もある。
そういう魔剣を使えば、仮に魔術に関する知識や適性がなくても、魔力さえ流せば術式が使える。
例え術式に適性がなくても――
「これだ」
見つけた。
見つけたぞ!
術式に適性がない俺でも、魔術師を名乗れるかもしれない可能性を!
「魔剣だ。魔剣なら俺でも術式が使える! 魔剣さえあれば――でも……」
興奮がスッと醒めていく感覚に苛まれる。
使えるからなんだというのだ。
高々一つや二つの術式が使える程度で、しかも道具に頼っている時点で、父上は認めてくれないだろう。
魔術とはこの世で最も自由な力のことを指す。
自由自在に様々な術式を操ってこそ、魔術師が魔術師らしくいられる。
「自由……」
魔剣に付与できる術式は一つだけ。
それでは一つの術式しか使えないじゃないか。
たった一つだけで自由とは呼べない。
平均的な能力の魔術師だって、複数の術式に適性があるのは当たり前で。
その中でもより多くの術式に適性を持つ者が優れた魔術師になる。
持っている数がそのまま自身の武力になるんだ。
「数……か。なら魔剣を自分で作れるようになって、全部の術式を付与出来たら?」
そんなことが可能なのだろうか?
でも、仮にできたとしたら、この世の全ての術式を行使できる魔術師が誕生する。
有史以来、そんな人物は魔術師の祖だけだ。
いかに優れた魔術師でも、使えない術式は確かに存在する。
「だけど魔剣なら……適性は関係ない。作れるのなら……」
あらゆる術式を魔剣に付与できるなら、俺でも自由に魔術が行使できる。
いやもしかしたら、この世で最も自由な魔術師にすらなれるかもしれないじゃないか!
醒めかけていた興奮が再び湧き上がる。
俺は興奮が続くうちに、魔剣に関する知識を集めることにした。
部屋を飛び出し、屋敷の書斎に足を運ぶ。
数万を超える本が並ぶ書斎から、魔剣について記された書物を選び取り出し、自分の部屋に運んだ。
「鍛冶のことも知っておきたいな。その本も一緒に」
持てるだけ持って書斎を出て、部屋に移動する。
何往復かしていたら、いつの間にか外が暗くなっていた。
夕食の時間には俺だけ別で用意された食事が部屋に運ばれてくる。
そんなことは気にせず、集めた本に目を通す。
魔剣の作り方、付与できる術式に制限があるのか。
調べていくと徐々に理解が深まる。
「術式の理解と文字化さえできれば付与に制限はないのか」
だったら可能性はあるんじゃないか?
術式の文字化は難しい項目だけど、知識を蓄え理解を深めれば可能なことだ。
才能に左右されない。
純粋な努力で優劣が決まる項目なら、俺でもやり遂げることが出来る。
一番の問題は鍛冶だ。
こればっかりは知識だけで身につかない。
スキルがあっても、ちゃんとした環境で修練を積まないと。
「ここには魔術に関する本なら、全て揃っていると父上はおっしゃっていたよな」
魔術師が魔術を学ぶ上で、王立魔術学園の次に優れた環境はここだろう。
特に知識に関しては、書斎にある本を全て読み漁ればあらゆる術式への理解が深められる。
魔剣作りにも知識が必要不可欠みたいだし、学ぶならここ以上の場所はない。
「まずは知識をつけよう。書斎の本は全部読んで、術式を頭に叩き込むんだ。それから……」
未来へ続く道、これから歩むべき道のりを思い浮かべる。
才能のない俺が魔術師になるには、この道を進むしかない。
これ以外に道はない。
とても険しくて細い道だ。
それでも進むというのなら、それ相応の覚悟が必要になるだろう。
幼い俺にだってそれくらいはわかる。
覚悟はあるか?
自分に問いかけて、即答する。
「ある! 俺はなりたいんだ! この世で最も自由な魔術師に」
そのためならどんな努力も惜しまない。
手に入るのなら、それ以外の全てを捨ててしまっても良いと思える。
覚悟は決めた。
ならばあとは進むのみ。
この道を。
一年後――
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