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第二部
43.学外研修
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学外研修について知ってから、日にちはあっという間に過ぎて。
研修を明日に控えた今日の夜は、夕食を食べながらシトネと話していた。
「楽しみだな~ 明日からの研修!」
「そんなにか?」
「うん! リンテンス君は楽しみじゃないの?」
「う~ん、正直よくわからないな」
学外研修の内容は、森や山、川などの大自然を用いた訓練をするらしい。
詳しくどんなことをするのかは、向こうについてから教えてもらえるそうだ。
ちなみに、場所は王都から東にある魔術学校の特別施設。
本来は実戦訓練などで用いられるフィールドでもある。
「何をするか知らないけど、結局普段の訓練よりずっと楽だろうからさ」
「それは……そうだね。うん、間違いないと思う」
「だろ? 別にキツければ良いってわけじゃないけどさ」
学校での授業もそうだが、師匠から教わった内容を反復しているだけだ。
最近はこれなら一人で特訓していたほうが効率がいいのではないか?
と思い始めていたり。
決して授業を受けるのが面倒だからとか、そういう不真面目な理由ではない。
「でもでも! グレン君たちも一緒にお泊りだよ?」
「そうだな」
「……それだけ?」
「どんな反応を期待してたんだよ」
「だってお友達と一日中一緒なんて普通ないよ? もっと楽しみにしてもいいのにな~」
「いや、それなら始終シトネといるだろ?」
「あ、そういえばそっか」
うっかりしてました、みたいな顔をするシトネ。
彼女の笑顔を見ながら、ふと思ったことを口にする。
「シトネといる落ち着くからな。一日一緒にいるなら、俺はシトネ一人のほうが嬉しい」
「えっ……」
あれ?
口走った後で気付く。
また俺の口は、感情をそのままに出してしまったな。
チラッとシトネの顔を見ると、恥ずかしそうに頬を赤らめて、目を逸らしたり合わせたりしていた。
尻尾は上機嫌にフリフリと左右に動いている。
そんな彼女を見ていたら、こっちまで同じくらい恥ずかしくなって、しばらく無言のまま夕食を食べていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌日。
いつものように登校、するのではなく、見た目の三倍の容量が入るバッグの魔道具を持ち学校へ行く。
校舎に到着する途中でグレンたちと合流。
そのまま校舎へ向かうと、すでに新入生たちが校門前にずらっと列を作っていた。
「移動って徒歩なんだよな?」
「ああ。専用の地下トンネルがあって、まっすぐ進めば二時間くらいで着くぞ」
「に、二時間も歩くんだね」
うぇーっと嫌そうな顔をするシトネ。
研修には新入生全員が参加するから、この人数で移動となると大変そうだな。
俺たちがじゃなく、引率の先生たちが。
「各クラスで点呼をとってください! 全員が集まったクラスから出発します!」
どこからか先生の大きな指示が聞こえてきた。
指示通り、それぞれのクラスで集まる。
さすが特待クラスの俺たちは、一番最初に全員が集まって、そのまま校舎裏にある専用トンネルへ向かった。
校舎の裏にある倉庫の中に、人工的に掘られた穴がある。
壁や天井は補強されており、左右には明かりもあって視界は良好。
「本当にまっすぐなんだね」
「果てしないな……」
当たり前だけど先が見えない。
二時間ただ歩くというのも、それはそれでキツそうだな。
と思いながら別にやることもなく、他愛もない会話を楽しんでいたら、案外退屈せずに移動時間を過ごせた。
そして、トンネルを抜けた先には、校舎によく似た建物が森のど真ん中に建っていた。
「ここが特別実習施設グレモーラだ」
森に囲まれたその施設は、元々軍事施設として建てられたそうだ。
三十年前まで、この辺りは多数のモンスターが出没する危険地帯だった。
特に恐ろしかったのは、ドラゴンやワイバーンなど空を飛ぶモンスターが生息していたこと。
一時期に大量発生して、王都まできた個体も少なくなかったとか。
その事態に対処するため、このグレモーラは建造された。
「対モンスターの施設だから、校舎より頑丈に作られている。まぁと言っても、今ではモンスターなど出現しないから安心してくれ」
「何だ、モンスターいないのか」
「一人だけガッカリしている人がいるな」
「そのようですね」
「あはははは……」
シトネの苦笑いが聞こえる。
モンスターでも出現するなら、良い訓練相手になるかと思ったんだけど。
「いっそドラゴンでも出てくれると嬉しいのにな」
「ぶ、物騒なこと言わないでよリンテンス君」
「そうなったら君が戦ってくれるのか?」
「ああ。久しぶりだけど、中々手強いんだぞ」
ちょっと思い出すなぁ。
師匠がいなかった間にこなした冒険者としての依頼の数々。
一番しんどかったのは、ドラゴンの巣穴から卵を持ち出す依頼だったな。
研究サンプルにしたいからって内容だったけど、十匹以上に追い回されて肝を冷やしたよ。
「その話あとで聞かせてもらえるか?」
「え?」
「私も聞きたいな~」
「別にいいけどさ」
それなら道中にすればよかったと思ったけど、二人とも興味津々な様子だったから言わないでおく。
研修を明日に控えた今日の夜は、夕食を食べながらシトネと話していた。
「楽しみだな~ 明日からの研修!」
「そんなにか?」
「うん! リンテンス君は楽しみじゃないの?」
「う~ん、正直よくわからないな」
学外研修の内容は、森や山、川などの大自然を用いた訓練をするらしい。
詳しくどんなことをするのかは、向こうについてから教えてもらえるそうだ。
ちなみに、場所は王都から東にある魔術学校の特別施設。
本来は実戦訓練などで用いられるフィールドでもある。
「何をするか知らないけど、結局普段の訓練よりずっと楽だろうからさ」
「それは……そうだね。うん、間違いないと思う」
「だろ? 別にキツければ良いってわけじゃないけどさ」
学校での授業もそうだが、師匠から教わった内容を反復しているだけだ。
最近はこれなら一人で特訓していたほうが効率がいいのではないか?
と思い始めていたり。
決して授業を受けるのが面倒だからとか、そういう不真面目な理由ではない。
「でもでも! グレン君たちも一緒にお泊りだよ?」
「そうだな」
「……それだけ?」
「どんな反応を期待してたんだよ」
「だってお友達と一日中一緒なんて普通ないよ? もっと楽しみにしてもいいのにな~」
「いや、それなら始終シトネといるだろ?」
「あ、そういえばそっか」
うっかりしてました、みたいな顔をするシトネ。
彼女の笑顔を見ながら、ふと思ったことを口にする。
「シトネといる落ち着くからな。一日一緒にいるなら、俺はシトネ一人のほうが嬉しい」
「えっ……」
あれ?
口走った後で気付く。
また俺の口は、感情をそのままに出してしまったな。
チラッとシトネの顔を見ると、恥ずかしそうに頬を赤らめて、目を逸らしたり合わせたりしていた。
尻尾は上機嫌にフリフリと左右に動いている。
そんな彼女を見ていたら、こっちまで同じくらい恥ずかしくなって、しばらく無言のまま夕食を食べていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌日。
いつものように登校、するのではなく、見た目の三倍の容量が入るバッグの魔道具を持ち学校へ行く。
校舎に到着する途中でグレンたちと合流。
そのまま校舎へ向かうと、すでに新入生たちが校門前にずらっと列を作っていた。
「移動って徒歩なんだよな?」
「ああ。専用の地下トンネルがあって、まっすぐ進めば二時間くらいで着くぞ」
「に、二時間も歩くんだね」
うぇーっと嫌そうな顔をするシトネ。
研修には新入生全員が参加するから、この人数で移動となると大変そうだな。
俺たちがじゃなく、引率の先生たちが。
「各クラスで点呼をとってください! 全員が集まったクラスから出発します!」
どこからか先生の大きな指示が聞こえてきた。
指示通り、それぞれのクラスで集まる。
さすが特待クラスの俺たちは、一番最初に全員が集まって、そのまま校舎裏にある専用トンネルへ向かった。
校舎の裏にある倉庫の中に、人工的に掘られた穴がある。
壁や天井は補強されており、左右には明かりもあって視界は良好。
「本当にまっすぐなんだね」
「果てしないな……」
当たり前だけど先が見えない。
二時間ただ歩くというのも、それはそれでキツそうだな。
と思いながら別にやることもなく、他愛もない会話を楽しんでいたら、案外退屈せずに移動時間を過ごせた。
そして、トンネルを抜けた先には、校舎によく似た建物が森のど真ん中に建っていた。
「ここが特別実習施設グレモーラだ」
森に囲まれたその施設は、元々軍事施設として建てられたそうだ。
三十年前まで、この辺りは多数のモンスターが出没する危険地帯だった。
特に恐ろしかったのは、ドラゴンやワイバーンなど空を飛ぶモンスターが生息していたこと。
一時期に大量発生して、王都まできた個体も少なくなかったとか。
その事態に対処するため、このグレモーラは建造された。
「対モンスターの施設だから、校舎より頑丈に作られている。まぁと言っても、今ではモンスターなど出現しないから安心してくれ」
「何だ、モンスターいないのか」
「一人だけガッカリしている人がいるな」
「そのようですね」
「あはははは……」
シトネの苦笑いが聞こえる。
モンスターでも出現するなら、良い訓練相手になるかと思ったんだけど。
「いっそドラゴンでも出てくれると嬉しいのにな」
「ぶ、物騒なこと言わないでよリンテンス君」
「そうなったら君が戦ってくれるのか?」
「ああ。久しぶりだけど、中々手強いんだぞ」
ちょっと思い出すなぁ。
師匠がいなかった間にこなした冒険者としての依頼の数々。
一番しんどかったのは、ドラゴンの巣穴から卵を持ち出す依頼だったな。
研究サンプルにしたいからって内容だったけど、十匹以上に追い回されて肝を冷やしたよ。
「その話あとで聞かせてもらえるか?」
「え?」
「私も聞きたいな~」
「別にいいけどさ」
それなら道中にすればよかったと思ったけど、二人とも興味津々な様子だったから言わないでおく。
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