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三女サーシャ
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家に帰ってドラゴン討伐の話をした。
案の定、お姉ちゃんたちには反対されたけど、ボクの意見は変わらない。
結局は二人が諦めて、ボクがわがままを通した感じになった。
そう、ボクのわがまま。
だから、ちゃんと生きて帰らなくっちゃね。
「よーし! 頑張るぞぉー!」
「……急にどうしたんだ?」
「ううん、何でもない。ただ気合を入れ直してただけだよ」
「そうかい。まぁほどほどに気張れよ」
そう言うおじさんはやる気が低めだ。
この間の話の時は、もう少し真剣に聞いていたのに。
「もぉ~ おじさんはもっとシャキッとしなきゃ!」
「別に良いだろ。というか、これだけ人数がいれば、オレがわざわざ出向かなくても良かったんじゃないのか?」
周囲を見渡すと、人の波が出来ている。
ボクたちがいる場所は、王都から北へ離れた草原の広がる場所。
ここをさらに北へ進むと、徐々に緑が減っていって、山岳地帯に差し掛かる頃には温かい格好をしていないと寒くて震える。
ジュードさんの話通り、あの二日後にギルドから緊急依頼が提示された。
内容はアイスドラゴンと、複数の魔物の討伐。
報酬は歩合制で、倒した魔物の数だけ多く得られる。
後は騎士団側からの視点で、アイスドラゴンとの戦闘で大きく貢献すれば、さらに追加報酬も貰えるとか。
そうでなくても、参加するだけで最低額が保証されている。
だからなのだろう。
街にいる冒険者のほとんどが、この依頼に参加しているようだ。
「騎士団と合わせてざっと三千はいるだろ。そんでジュードも参加してるなら、オレなしでも十分勝率は高い」
「そうなの?」
「ああ。これだったら帰っても――」
「ダメだ」
後ろから声をかけられた。
振り向く前に誰かはわかっている。
「ジュードさん!」
「やぁサーシャちゃん、君も参加してくれるんだね」
「はい! 足手まといにならないよう頑張ります!」
ボクはピシッと背筋を伸ばして敬礼をする。
ジュードさんは優しくニコニコと笑って頷いた。
「良い心がけだ。それに対して……タチカゼ。お前はもっとやる気を出せ」
「そう言われてもなぁ~」
「はぁ、いいか? 前に話した通り、今回のドラゴンは大きい。下手をすればこちらが壊滅するかもしれないんだ」
「何言ってんだよ。お前がいて、下手をするなんてことはありえないだろ」
「信頼はありがたいが、お前もドラゴン戦に参加するんだぞ?」
ジュードさんもそれが目的で話をしてくれたのだろう。
だけど、おじさんは手を振って言う。
「オレはいいや。適当に流れてきた魔物と戦うから」
「なっ……ん? あーいや、そういうことか」
途中まで呆れていたジュードさんだったけど、なぜか急に表情を変えた。
ボクのことをチラッと見て、頷きながらおじさんに言う。
「お前も優しくなったな、タチカゼ」
「は?」
「隠さなくても良い。ドラゴン戦に参加したくないのは、サーシャちゃんのためだろう?」
「ぅ……」
「えっ、そうなの!?」
「なんのことやら」
おじさんはボクから目を逸らした。
ジュードさんは笑って言う。
「お前がドラゴン戦に参加すれば、仲間のサーシャちゃんも危険にさらされる。かといって一人にしておくのも心配だから、一緒にいてあげたい。という感じか?」
「いや、別にそういうわけじゃ――」
「あーいやわかっている。そういう理由なら私も無理強いは出来ないからな」
「こいつ……」
ジュードさんはニヤリと楽しそうに笑っていた。
からかっているのがボクにもわかる。
こんな顔をするんだなぁと思いながら、照れてるおじさんが見れて嬉しい。
「仕方がない。では私たちで頑張るとしよう」
「……苦戦しても助けないからな」
「はっはっは。私はそんなヘマはしないと、そう言ったのはどこの誰だったかな?」
ジュードさんが去った後、おじさんは大きなため息をこぼした。
「ねぇねぇ! さっきの話って本当?」
「は? んなわけないだろ」
「そっかぁ……」
わざとらしくショボンとする。
こういう時、おじさんはやさしいから頭を撫でてくれる。
「そんなことより、お前は死なねーように気を張れ」
「うん!」
そうして時間が経過する。
集まった冒険者と、騎士団員が列を作り、山岳エリアを目指した。
話に聞いていた通り、山のふもとは凍える程寒い。
山道の入り口は、雪の白さで覆われていた。
「いいや、ここは本来雪もつもってない場所だ」
「そうなの?」
「ああ、気を付けろよ」
おじさんがそう言った直後、バサッと何かが頭上を通り過ぎた。
全員の視線がうえに行く。
そこには、翼を大きく広げた純白のドラゴンがいた。
「来やがったな」
「あれが……」
アイスドラゴン。
積雪地帯等に生息するドラゴンの一種。
非常に凶暴で攻撃的。
敵と判断した相手には、氷のブレスを吐きつける。
この辺りに雪が降り積もっているのは、アイスドラゴンがよく行き来しているから。
いち早く気付いたボクたちは、共に武器を取る。
「魔物も来たぞー!」
誰かの声が響く。
山頂側から大量の魔物が押し寄せる。
「さぁて、ほどほどに頑張りますか」
「ボクも頑張るよ!」
案の定、お姉ちゃんたちには反対されたけど、ボクの意見は変わらない。
結局は二人が諦めて、ボクがわがままを通した感じになった。
そう、ボクのわがまま。
だから、ちゃんと生きて帰らなくっちゃね。
「よーし! 頑張るぞぉー!」
「……急にどうしたんだ?」
「ううん、何でもない。ただ気合を入れ直してただけだよ」
「そうかい。まぁほどほどに気張れよ」
そう言うおじさんはやる気が低めだ。
この間の話の時は、もう少し真剣に聞いていたのに。
「もぉ~ おじさんはもっとシャキッとしなきゃ!」
「別に良いだろ。というか、これだけ人数がいれば、オレがわざわざ出向かなくても良かったんじゃないのか?」
周囲を見渡すと、人の波が出来ている。
ボクたちがいる場所は、王都から北へ離れた草原の広がる場所。
ここをさらに北へ進むと、徐々に緑が減っていって、山岳地帯に差し掛かる頃には温かい格好をしていないと寒くて震える。
ジュードさんの話通り、あの二日後にギルドから緊急依頼が提示された。
内容はアイスドラゴンと、複数の魔物の討伐。
報酬は歩合制で、倒した魔物の数だけ多く得られる。
後は騎士団側からの視点で、アイスドラゴンとの戦闘で大きく貢献すれば、さらに追加報酬も貰えるとか。
そうでなくても、参加するだけで最低額が保証されている。
だからなのだろう。
街にいる冒険者のほとんどが、この依頼に参加しているようだ。
「騎士団と合わせてざっと三千はいるだろ。そんでジュードも参加してるなら、オレなしでも十分勝率は高い」
「そうなの?」
「ああ。これだったら帰っても――」
「ダメだ」
後ろから声をかけられた。
振り向く前に誰かはわかっている。
「ジュードさん!」
「やぁサーシャちゃん、君も参加してくれるんだね」
「はい! 足手まといにならないよう頑張ります!」
ボクはピシッと背筋を伸ばして敬礼をする。
ジュードさんは優しくニコニコと笑って頷いた。
「良い心がけだ。それに対して……タチカゼ。お前はもっとやる気を出せ」
「そう言われてもなぁ~」
「はぁ、いいか? 前に話した通り、今回のドラゴンは大きい。下手をすればこちらが壊滅するかもしれないんだ」
「何言ってんだよ。お前がいて、下手をするなんてことはありえないだろ」
「信頼はありがたいが、お前もドラゴン戦に参加するんだぞ?」
ジュードさんもそれが目的で話をしてくれたのだろう。
だけど、おじさんは手を振って言う。
「オレはいいや。適当に流れてきた魔物と戦うから」
「なっ……ん? あーいや、そういうことか」
途中まで呆れていたジュードさんだったけど、なぜか急に表情を変えた。
ボクのことをチラッと見て、頷きながらおじさんに言う。
「お前も優しくなったな、タチカゼ」
「は?」
「隠さなくても良い。ドラゴン戦に参加したくないのは、サーシャちゃんのためだろう?」
「ぅ……」
「えっ、そうなの!?」
「なんのことやら」
おじさんはボクから目を逸らした。
ジュードさんは笑って言う。
「お前がドラゴン戦に参加すれば、仲間のサーシャちゃんも危険にさらされる。かといって一人にしておくのも心配だから、一緒にいてあげたい。という感じか?」
「いや、別にそういうわけじゃ――」
「あーいやわかっている。そういう理由なら私も無理強いは出来ないからな」
「こいつ……」
ジュードさんはニヤリと楽しそうに笑っていた。
からかっているのがボクにもわかる。
こんな顔をするんだなぁと思いながら、照れてるおじさんが見れて嬉しい。
「仕方がない。では私たちで頑張るとしよう」
「……苦戦しても助けないからな」
「はっはっは。私はそんなヘマはしないと、そう言ったのはどこの誰だったかな?」
ジュードさんが去った後、おじさんは大きなため息をこぼした。
「ねぇねぇ! さっきの話って本当?」
「は? んなわけないだろ」
「そっかぁ……」
わざとらしくショボンとする。
こういう時、おじさんはやさしいから頭を撫でてくれる。
「そんなことより、お前は死なねーように気を張れ」
「うん!」
そうして時間が経過する。
集まった冒険者と、騎士団員が列を作り、山岳エリアを目指した。
話に聞いていた通り、山のふもとは凍える程寒い。
山道の入り口は、雪の白さで覆われていた。
「いいや、ここは本来雪もつもってない場所だ」
「そうなの?」
「ああ、気を付けろよ」
おじさんがそう言った直後、バサッと何かが頭上を通り過ぎた。
全員の視線がうえに行く。
そこには、翼を大きく広げた純白のドラゴンがいた。
「来やがったな」
「あれが……」
アイスドラゴン。
積雪地帯等に生息するドラゴンの一種。
非常に凶暴で攻撃的。
敵と判断した相手には、氷のブレスを吐きつける。
この辺りに雪が降り積もっているのは、アイスドラゴンがよく行き来しているから。
いち早く気付いたボクたちは、共に武器を取る。
「魔物も来たぞー!」
誰かの声が響く。
山頂側から大量の魔物が押し寄せる。
「さぁて、ほどほどに頑張りますか」
「ボクも頑張るよ!」
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