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第一章
7.新しい日々
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次のクエストはトロール三体の討伐。
本来は強力なパーティーにのみ受注可能なクエストだけど、特別に俺たちも受けることができた。
グラスホッパー討伐を達成したことで、ギルドからの信頼が上がったおかげだろう。
「トロールか」
「私におまかせください。三体でも百体でも軽々とうち滅ぼしてみせましょう!」
俺の隣を歩くアルファは、トントンと自分の胸を叩く。
トロールを軽々と倒してしまった光景は今も記憶に新しく、驚きは鮮明に記憶されている。
彼女に任せておけば難なく達成できるだろう。
だけど……。
「アルファ、できればトロールは俺に任せてもらえないかな?」
「ラスト様に? お一人で戦われるおつもりですか?」
「うん。そうしたいと思ってる」
俺は拳をぐっと握りしめ、身体中を流れる魔力を感じる。
彼女のおかげで手に入れた力。
この力がどれだけ通用するのか試したい。
そんなことを考えてしまえるほど、今の俺はやる気と自信に満ちていた。
「わかりました。ラスト様のお力なら問題ありませんね」
「ありがとう」
「とんでもございません。私はあなたの物ですから。使いたいときに使い、不要になったら捨てて頂いても構いません」
「そんなこと絶対にしないよ」
俺は仲間を見捨てないし、切り捨てたりしたくない。
それは彼らと同じ行為だ。
自分がやられて嫌だったことを、他人にするのはクズのやることだから。
「ラスト様はお優しいですね」
「普通だと思うけど」
「そんなことありませんよ」
そう言って彼女は優しく微笑む。
彼女はずっとこの調子で、事あるごとに俺のことを褒めてくれる。
なんだか俺が何をしても肯定してくれそうな勢いだ。
褒められたり認められたりすることに慣れていない俺には、眩くて恥ずかしい。
森の中、他愛ない会話で団らんとした雰囲気。
しかしここは敵地。
魔物がすぐ近くにいる。
「ラスト様、きます。十二時より敵接近中。数は三、おそらく報告にあったトロールかと」
「わかった」
気を引き締めろ。
俺は腰の刀を抜き、臨戦態勢をとる。
どしん、どしんと大きな足音が複数近づき、木々を押し倒して姿を現す。
「トロールです!」
アルファの声とほぼ同時に俺は駆け出した。
相手がこちらを見つけるより早く、先手をしかけるために。
懐に潜り込み、トロールの大きな腹の前で刀を構える。
「魔力を――」
全身に巡らせろ。
そして纏え!
アルファから貰った魔力放出の力を発動させる。
全身から溢れる魔力を纏い、魔力は手に握る刀にも流れる。
強化された刀の斬撃は、トロールの腹を下から首にかけて両断した。
魔力で強化されたことで斬れ味も上がっている。
それだけじゃない。
「ラスト様! 左右からきます!」
残る二体のトロールが拳を振り下ろす。
同時に左右から。
俺は刀を地面に突き刺し、両手でそれを受け止めた。
トロールの拳は重く、受け止めた風圧で木々が軋むほどだ。
そんな一撃も軽々と止められる。
魔力を纏ったことで身体能力が向上し、肉体の強度が大幅に上昇している。
今の俺なら、ドラゴンのブレスも耐えられるんじゃないか?
そう思えるくらいの万能感。
「おお!」
俺は受け止めたトロールの拳を掴み、ぐわんと振り回す。
右の一体を放りなげ、続けて左も同じ方向へ吹き飛ばす。
二体は重なって地面に倒れじたばたさせる。
そこにすかさず刀を拾い、大きく跳びあがって重なった頭を突き刺す。
トロールの攻略法はいくつかある。
強力な再生能力も、頭を一撃で潰せば発動しない。
「はじけろ!」
突き刺した部分から魔力を高出力で拡散させ、トロールの頭部が爆散する。
じたばたしていた手足がピタリと止まり、肉体が消滅していく。
残った魔力結晶がごとんと落ち、それを回収してから刀を鞘に納めた。
パチパチと拍手が聞こえる。
「お見事です。ラスト様」
「ありがとう。正直自分でも驚いてるよ。こんなに戦えるなんて」
「それがラスト様の本当の実力です」
「俺の……か」
コネクトによる力の共有。
今まで一方向でしかなかった力を、お互いが活用できる。
アルファは俺の魔力を使い、俺は彼女がもつ能力を借り受けられる。
おかげで俺は戦えるようになった。
「アルファ、やっぱり君のおかげだよ。君がいるから俺は戦える。俺一人じゃ何もできない。だから、ありがとう」
「そ、そんな! 私はラスト様のおかげで目覚めることができました。感謝するのは私のほうです」
あわあわと焦りながら手を振る。
人間らしい仕草をしても、彼女は自動人形……ドールだ。
戦うために作られた存在。
だけど俺には、やっぱり優しい女の子にしか見えないな。
「君のおかげで戦う力が得られた。自分の力も……知ることができた」
コネクトのことだけじゃない。
俺の魔力が常人と異なり無尽蔵であることも、彼女に教えてもらえなければ知らないままだった。
自信が持てないまま、なにも出来ずに街を彷徨っていたかもしれない。
この出会いが、俺を大きく前進させた。
ありがとう、アルファ。
ありがとう、爺ちゃん。
俺ははまだ、冒険者として生きられる。
「アルファも、俺に何かしてほしいことがあったら言ってくれ。貰ってばかりは申し訳ないんだ」
「いや、私はラスト様の所有物ですので、ラスト様の望みが私の望みです」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、俺も何かしたいんだ。自己満足だけど、何かできることがないかな?」
「ラスト様……」
彼女のおかげで今がある。
尽くされるばかりは俺が後ろめたい気持ちになるから。
彼女のために、何かしたいと思った。
「では一つだけ、お願いしてもよろしいですか?」
「うん」
彼女の願いを、なんでもいいから叶えてあげたい。
「私の姉妹を、見つけてくれませんか?」
本来は強力なパーティーにのみ受注可能なクエストだけど、特別に俺たちも受けることができた。
グラスホッパー討伐を達成したことで、ギルドからの信頼が上がったおかげだろう。
「トロールか」
「私におまかせください。三体でも百体でも軽々とうち滅ぼしてみせましょう!」
俺の隣を歩くアルファは、トントンと自分の胸を叩く。
トロールを軽々と倒してしまった光景は今も記憶に新しく、驚きは鮮明に記憶されている。
彼女に任せておけば難なく達成できるだろう。
だけど……。
「アルファ、できればトロールは俺に任せてもらえないかな?」
「ラスト様に? お一人で戦われるおつもりですか?」
「うん。そうしたいと思ってる」
俺は拳をぐっと握りしめ、身体中を流れる魔力を感じる。
彼女のおかげで手に入れた力。
この力がどれだけ通用するのか試したい。
そんなことを考えてしまえるほど、今の俺はやる気と自信に満ちていた。
「わかりました。ラスト様のお力なら問題ありませんね」
「ありがとう」
「とんでもございません。私はあなたの物ですから。使いたいときに使い、不要になったら捨てて頂いても構いません」
「そんなこと絶対にしないよ」
俺は仲間を見捨てないし、切り捨てたりしたくない。
それは彼らと同じ行為だ。
自分がやられて嫌だったことを、他人にするのはクズのやることだから。
「ラスト様はお優しいですね」
「普通だと思うけど」
「そんなことありませんよ」
そう言って彼女は優しく微笑む。
彼女はずっとこの調子で、事あるごとに俺のことを褒めてくれる。
なんだか俺が何をしても肯定してくれそうな勢いだ。
褒められたり認められたりすることに慣れていない俺には、眩くて恥ずかしい。
森の中、他愛ない会話で団らんとした雰囲気。
しかしここは敵地。
魔物がすぐ近くにいる。
「ラスト様、きます。十二時より敵接近中。数は三、おそらく報告にあったトロールかと」
「わかった」
気を引き締めろ。
俺は腰の刀を抜き、臨戦態勢をとる。
どしん、どしんと大きな足音が複数近づき、木々を押し倒して姿を現す。
「トロールです!」
アルファの声とほぼ同時に俺は駆け出した。
相手がこちらを見つけるより早く、先手をしかけるために。
懐に潜り込み、トロールの大きな腹の前で刀を構える。
「魔力を――」
全身に巡らせろ。
そして纏え!
アルファから貰った魔力放出の力を発動させる。
全身から溢れる魔力を纏い、魔力は手に握る刀にも流れる。
強化された刀の斬撃は、トロールの腹を下から首にかけて両断した。
魔力で強化されたことで斬れ味も上がっている。
それだけじゃない。
「ラスト様! 左右からきます!」
残る二体のトロールが拳を振り下ろす。
同時に左右から。
俺は刀を地面に突き刺し、両手でそれを受け止めた。
トロールの拳は重く、受け止めた風圧で木々が軋むほどだ。
そんな一撃も軽々と止められる。
魔力を纏ったことで身体能力が向上し、肉体の強度が大幅に上昇している。
今の俺なら、ドラゴンのブレスも耐えられるんじゃないか?
そう思えるくらいの万能感。
「おお!」
俺は受け止めたトロールの拳を掴み、ぐわんと振り回す。
右の一体を放りなげ、続けて左も同じ方向へ吹き飛ばす。
二体は重なって地面に倒れじたばたさせる。
そこにすかさず刀を拾い、大きく跳びあがって重なった頭を突き刺す。
トロールの攻略法はいくつかある。
強力な再生能力も、頭を一撃で潰せば発動しない。
「はじけろ!」
突き刺した部分から魔力を高出力で拡散させ、トロールの頭部が爆散する。
じたばたしていた手足がピタリと止まり、肉体が消滅していく。
残った魔力結晶がごとんと落ち、それを回収してから刀を鞘に納めた。
パチパチと拍手が聞こえる。
「お見事です。ラスト様」
「ありがとう。正直自分でも驚いてるよ。こんなに戦えるなんて」
「それがラスト様の本当の実力です」
「俺の……か」
コネクトによる力の共有。
今まで一方向でしかなかった力を、お互いが活用できる。
アルファは俺の魔力を使い、俺は彼女がもつ能力を借り受けられる。
おかげで俺は戦えるようになった。
「アルファ、やっぱり君のおかげだよ。君がいるから俺は戦える。俺一人じゃ何もできない。だから、ありがとう」
「そ、そんな! 私はラスト様のおかげで目覚めることができました。感謝するのは私のほうです」
あわあわと焦りながら手を振る。
人間らしい仕草をしても、彼女は自動人形……ドールだ。
戦うために作られた存在。
だけど俺には、やっぱり優しい女の子にしか見えないな。
「君のおかげで戦う力が得られた。自分の力も……知ることができた」
コネクトのことだけじゃない。
俺の魔力が常人と異なり無尽蔵であることも、彼女に教えてもらえなければ知らないままだった。
自信が持てないまま、なにも出来ずに街を彷徨っていたかもしれない。
この出会いが、俺を大きく前進させた。
ありがとう、アルファ。
ありがとう、爺ちゃん。
俺ははまだ、冒険者として生きられる。
「アルファも、俺に何かしてほしいことがあったら言ってくれ。貰ってばかりは申し訳ないんだ」
「いや、私はラスト様の所有物ですので、ラスト様の望みが私の望みです」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、俺も何かしたいんだ。自己満足だけど、何かできることがないかな?」
「ラスト様……」
彼女のおかげで今がある。
尽くされるばかりは俺が後ろめたい気持ちになるから。
彼女のために、何かしたいと思った。
「では一つだけ、お願いしてもよろしいですか?」
「うん」
彼女の願いを、なんでもいいから叶えてあげたい。
「私の姉妹を、見つけてくれませんか?」
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