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第一章
8.ドール三姉妹
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「姉妹?」
彼女は天に祈りを捧げるようなポーズで俺にそう言った。
俺は首を傾げる。
「アルファには姉妹がいるの?」
「はい。正確には、姉妹としてデザインされたドールが二体います」
彼女曰く、三体のドールは同じ博士によって建造されたそうだ。
同じ人から生み出された存在……だから姉妹だと。
「私が最初に作られ、その後に二人が作られました」
「じゃあアルファが長女で、残りが次女と三女ってことか」
「そうなります。人間ではありませんから、厳密には血の繋がりもありません。ですがそれでも、私にとって二人は可愛い妹です」
そう話すアルファの横顔は、どこからどう見ても妹を思う優しい姉にしか見えなかった。
きっと大切に思っているのだろう。
今の少ないやり取りで彼女たちの繋がりの強さを感じた。
「わかった。君の妹たちを探そう」
「本当ですか!」
「うん。なんでもって言ったのは俺だしね? それに俺も、君の妹たちに会ってみたいんだ」
彼女の妹たちだ。
きっと素敵な女の子たちに違いない。
何より彼女を、妹たちに合わせてあげたいと思う。
「ありがとうございます。ラスト様」
「あ、うん……」
彼女は勢いよく俺の手を掴み、ぎゅっと握りしめる。
手のひらに伝わる温かさと柔らかさ。
女の子の手って感じがして、心の奥に熱が湧く。
こういう時は彼女が人形だと思わないと、とても平静を保っていられないな。
◇◇◇
クエストを達成した俺とアルファは、そのまま森の中を進む。
本来なら一度ギルドに戻って報告するべきだが……。
「この先にいるんだね?」
「はい」
どうやら彼女の妹、そのうちの一人が近くにいるらしい。
なぜわかるのか聞いたら。
「私たち姉妹は離れていてもお互いの場所がなんとなくわかるんです。そういう風に作られていますから」
とのことだった。
距離が離れているほど大体の方角しかわからず、近づくとより鮮明にわかるそうだ。
「昨日森へ入った時から、妹の存在を強く感じていました。この先にいるのは間違いありません」
話ながら彼女は先頭を歩く。
彼女が俺より前を歩くのは初めて見る。
ずっと俺の隣か、少し後ろを歩いていて、歩く速度も俺に合わせてくれていたから。
ちょっと速足なところが、妹との再会を待ちわびているのが伝わる。
「アルファ、君の妹たちってどんな感じなの?」
「どんな感じというのは?」
「見た目とかいろいろ。君の妹だし、アルファを小さくした感じ?」
「いえ、私とは全然違います。姉妹といっても、作られた時のコンセプトが異なりますから」
コンセプトというのは、どういう目的で作られたか。
彼女たちが戦闘用として作られたことは同じだが、その戦い方には特徴がある。
アルファの場合は近接格闘型。
自身の手足を武器として戦うスタイルと、それにあった能力を持っている。
「次女のデルタは私と同じ近接タイプではありますが、格闘ではなく武器をメインに使います。三女のシータは中遠距離タイプで、魔術をメインに使います」
「近接二人に中遠距離が一人か。いいバランスだね」
「ええ。元々私たちは単独での戦闘より三人で戦うことを主に作られていますから」
「なるほど。だからこそ姉妹なのか」
別々の三体ではなく姉妹と呼称しているのは、彼女たちが三人で一つの存在だからなのかもしれない。
その辺りは製造者に聞かないとわからないけど。
きっとそうなのだろうと勝手に納得した。
「性格も違うんですよ? デルタは腕白で動くのが大好きですが、シータは面倒くさがり屋で寝るのが大好きな子なんです」
「対極だね」
「はい。不思議に思われるかもしれませんが、私たちドールにも感情があり、性格や趣味嗜好の違いがあるんです。より人間らしくあるようにと、博士が設計してくれました」
「改めて聞くとすごい人だね。その、アルフレット博士は」
「はい。とても偉大なお方です」
彼女たちにとって生みの親であり、父親のような存在。
大昔に彼女たちを作った偉大な発明家に、一度でいいから会ってみたい。
叶わぬ夢だと知っているから、彼女たちからいっぱい話を聞こうと思った。
「今から行くのはどっちなの?」
「次女のデルタです」
近接タイプで腕白な子か。
どんな女の子か今から楽しみだ。
アルファから二人の話を聞きながら森の奥へと進んでいく。
気づけば周囲の雰囲気が変わっていた。
「この辺りは……初めてくるな」
前のパーティーで何度も森には入ったけど、こんなに奥深くまで来たことはなかった。
木々が黒っぽくなり不気味な雰囲気の場所だ。
いかにも強力な魔物が生息しています、と言われている気がする。
俺に気配を感知する力はないが、近くに強い魔物がうようよいそうな気がして、自然と肩に力が入った。
「本当にこんな場所にいるの?」
「はい。もう少し先です。ただ、地上ではないようです」
「え? 地上じゃないって……」
「デルタの気配はこの先の下から……つまりは地下から感じ取れます」
地下?
森の先に地下へ続く洞窟でもあるのか。
それとも……。
「ここです」
「これって……」
どうやら、それとものほうだったらしい。
俺たちがたどり着いたのは、石レンガで囲われた小屋のような建造物。
入り口は一つ、地下への階段が続いている。
「ダンジョンの入り口?」
彼女は天に祈りを捧げるようなポーズで俺にそう言った。
俺は首を傾げる。
「アルファには姉妹がいるの?」
「はい。正確には、姉妹としてデザインされたドールが二体います」
彼女曰く、三体のドールは同じ博士によって建造されたそうだ。
同じ人から生み出された存在……だから姉妹だと。
「私が最初に作られ、その後に二人が作られました」
「じゃあアルファが長女で、残りが次女と三女ってことか」
「そうなります。人間ではありませんから、厳密には血の繋がりもありません。ですがそれでも、私にとって二人は可愛い妹です」
そう話すアルファの横顔は、どこからどう見ても妹を思う優しい姉にしか見えなかった。
きっと大切に思っているのだろう。
今の少ないやり取りで彼女たちの繋がりの強さを感じた。
「わかった。君の妹たちを探そう」
「本当ですか!」
「うん。なんでもって言ったのは俺だしね? それに俺も、君の妹たちに会ってみたいんだ」
彼女の妹たちだ。
きっと素敵な女の子たちに違いない。
何より彼女を、妹たちに合わせてあげたいと思う。
「ありがとうございます。ラスト様」
「あ、うん……」
彼女は勢いよく俺の手を掴み、ぎゅっと握りしめる。
手のひらに伝わる温かさと柔らかさ。
女の子の手って感じがして、心の奥に熱が湧く。
こういう時は彼女が人形だと思わないと、とても平静を保っていられないな。
◇◇◇
クエストを達成した俺とアルファは、そのまま森の中を進む。
本来なら一度ギルドに戻って報告するべきだが……。
「この先にいるんだね?」
「はい」
どうやら彼女の妹、そのうちの一人が近くにいるらしい。
なぜわかるのか聞いたら。
「私たち姉妹は離れていてもお互いの場所がなんとなくわかるんです。そういう風に作られていますから」
とのことだった。
距離が離れているほど大体の方角しかわからず、近づくとより鮮明にわかるそうだ。
「昨日森へ入った時から、妹の存在を強く感じていました。この先にいるのは間違いありません」
話ながら彼女は先頭を歩く。
彼女が俺より前を歩くのは初めて見る。
ずっと俺の隣か、少し後ろを歩いていて、歩く速度も俺に合わせてくれていたから。
ちょっと速足なところが、妹との再会を待ちわびているのが伝わる。
「アルファ、君の妹たちってどんな感じなの?」
「どんな感じというのは?」
「見た目とかいろいろ。君の妹だし、アルファを小さくした感じ?」
「いえ、私とは全然違います。姉妹といっても、作られた時のコンセプトが異なりますから」
コンセプトというのは、どういう目的で作られたか。
彼女たちが戦闘用として作られたことは同じだが、その戦い方には特徴がある。
アルファの場合は近接格闘型。
自身の手足を武器として戦うスタイルと、それにあった能力を持っている。
「次女のデルタは私と同じ近接タイプではありますが、格闘ではなく武器をメインに使います。三女のシータは中遠距離タイプで、魔術をメインに使います」
「近接二人に中遠距離が一人か。いいバランスだね」
「ええ。元々私たちは単独での戦闘より三人で戦うことを主に作られていますから」
「なるほど。だからこそ姉妹なのか」
別々の三体ではなく姉妹と呼称しているのは、彼女たちが三人で一つの存在だからなのかもしれない。
その辺りは製造者に聞かないとわからないけど。
きっとそうなのだろうと勝手に納得した。
「性格も違うんですよ? デルタは腕白で動くのが大好きですが、シータは面倒くさがり屋で寝るのが大好きな子なんです」
「対極だね」
「はい。不思議に思われるかもしれませんが、私たちドールにも感情があり、性格や趣味嗜好の違いがあるんです。より人間らしくあるようにと、博士が設計してくれました」
「改めて聞くとすごい人だね。その、アルフレット博士は」
「はい。とても偉大なお方です」
彼女たちにとって生みの親であり、父親のような存在。
大昔に彼女たちを作った偉大な発明家に、一度でいいから会ってみたい。
叶わぬ夢だと知っているから、彼女たちからいっぱい話を聞こうと思った。
「今から行くのはどっちなの?」
「次女のデルタです」
近接タイプで腕白な子か。
どんな女の子か今から楽しみだ。
アルファから二人の話を聞きながら森の奥へと進んでいく。
気づけば周囲の雰囲気が変わっていた。
「この辺りは……初めてくるな」
前のパーティーで何度も森には入ったけど、こんなに奥深くまで来たことはなかった。
木々が黒っぽくなり不気味な雰囲気の場所だ。
いかにも強力な魔物が生息しています、と言われている気がする。
俺に気配を感知する力はないが、近くに強い魔物がうようよいそうな気がして、自然と肩に力が入った。
「本当にこんな場所にいるの?」
「はい。もう少し先です。ただ、地上ではないようです」
「え? 地上じゃないって……」
「デルタの気配はこの先の下から……つまりは地下から感じ取れます」
地下?
森の先に地下へ続く洞窟でもあるのか。
それとも……。
「ここです」
「これって……」
どうやら、それとものほうだったらしい。
俺たちがたどり着いたのは、石レンガで囲われた小屋のような建造物。
入り口は一つ、地下への階段が続いている。
「ダンジョンの入り口?」
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