通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ

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序盤に出会う敵じゃない③

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 アルカの声をきっかけに、ウルフたちが飛び出してきた。
 俺はすぐさま妖刀を腰から抜く。
 迫りくるウルフの口元に刃を走らせ、回転しながら次のウルフを斬り裂く。
 そのまま群れの中に入り込み、四方から襲い掛かるウルフの相手をする。

 怖い。
 でも、戦える。
 相手の動きもよく見えている。

 特訓によって、俺の身体は鍛えられた。
 筋力や体力の向上。
 対人戦を繰り返すことで、度胸も少しはついたと思う。
 ただ、剣術や戦闘経験については簡単じゃない。
 ハッキリ言って、たった一か月の特訓じゃ身につくはずもなかった。

 でも、俺には妖刀がある。

「ふぅ――」

 相手の呼吸に合わせて動き、カウンターの一撃を食らわせる。
 俺はスポーツだってまともにやってこなかったし、武術や喧嘩なんて経験は皆無だ。
 そんな俺でもこうして戦えるのは、妖刀の能力に関係している。
 この一か月、妖刀の使い方を模索した。
 空間移動以外に何ができるのか。
 その結果、わかったことがある。
 
 妖刀を抜いている間、俺の身体にはその力が流れ込む。
 一時的な身体能力の向上。
 そして、刀の使い方が妖刀を通して伝わってくる。
 どう握り、どう構え、相手を斬るのか。
 剣術なんてからっきしだが、妖刀を握れば身体が勝手に動く。
 まるで、この刀に宿る記憶が投影されるように。
 何者かに身体を動かしてもらっているような気さえする。
 少し気味の悪い感覚だが、お陰で素人の俺でも剣術の達人のような動きができるようになった。

 よーし!
 ウルフくらい余裕だな。

 ちょっと調子に乗ってしまった。
 背後から隠れていたウルフが襲い掛かってくる。

「いっ!」
「アイシクルランス」

 氷の槍がウルフを貫いた。
 エリカが魔法を発動して、俺を助てくれたらしい。

「油断しないでくださいね?」
「す、すまん」

 ニコッと微笑む表情が怖い。
 こんなところで死なれたら困るという、彼女の意志がウルフの攻撃より鋭く刺さる。
 反対側ではアルカが大立ち回りを演じていた。

「そーらよっと!」

 自分の身体よりも大きな剣を軽々と振り回している。
 華奢な身体からは想像もできない馬鹿力だ。
 あっという間にウルフの群れを蹴散らす。

「ふぅ、これで全部かな?」
「そうみたいね。気配はなくなったわ」

 エリカが魔法で周囲を探知し、ウルフの群れに勝利したことが確定する。
 ホッと胸をなでおろす。

「皆さん、お怪我はありませんか?」
「俺は平気」
「僕もー!」
「私も大丈夫よ」
「そうですか。今回は私の出番はありませんでしたね」

 そう言いながら嬉しそうに微笑むセミレナ。
 彼女の役目は回復と支援だ。
 結界で馬車とエリカを守ってくれていたおかげで、俺たちは思う存分戦える。
 怪我をしても生きていれば、彼女の祈りで回復してもらえるから、このパーティーになくてはならない存在だろう。

「やったー! 僕たちの勝利だねー!」

 アルカがはしゃぐ。
 子供みたいだが、俺も心の中でガッツポーズをしていた。

 一か月の成果はちゃんと出ている。
 この調子で経験を積んでいけば、そのうちもっと強くなって魔王にも勝てるんじゃないか?
 なんか希望が見えてきたぞ!

 と、喜んでいた時だった。
 ぞわっとした。
 背筋が凍る感覚だ。
 俺が震えたことにエリカが気づく。

「ソウジ?」
「な、なんかまだ寒気が……」
「本当に風邪を引いたわけじゃないわよね?」

 エリカが呆れた顔をする。
 そんなはずはない。
 てっきりウルフの気配を感じて寒気がしたのかと思った。
 しかしウルフを倒しても収まらない。
 
 寒気はさらに強くなる。
 身体が震える。
 寒さではない。
 これが恐怖だとわかった頃には、絶望の対面を果たすことになった。

「勇者一行が旅立ったって情報、マジだったみてーだな」
「――!」

 俺たちの前に、一体の悪魔が姿を見せる。
 いかにも悪魔らしい見た目で、赤い瞳に黒く硬そうな肌。
 意外と細身で、悪魔の翼としっぽ、角も生えている。
 エリカの授業で見せてもらった悪魔の容姿に酷使していた。
 加えて溢れ出る邪悪な魔力……。
 直感した。
 こいつはヤバい、と。
 全員が即座に構えを取る。
 恐怖しながらも、アルカが現れた悪魔に尋ねる。

「な、なんだお前!」
「初めましてだなぁ! オレ様は魔王軍七人の幹部が一人、バルバトス様だぁ!」
「か、幹部!?」

 嘘だろおい。
 魔王軍の幹部がなんでこんな場所にいるんだよ!
 ちょっと待て!
 ここは安全なエトワール王国の中じゃなかったのか?

 俺はエリカに視線を向ける。
 さすがの彼女も焦っているのか、額から汗が流れていた。

「魔王軍の幹部がどうしてこんな場所にいるのかしら?」
「あん? 決まってんだろう? 魔王様の命令で、てめぇら危険分を排除するためだ」
「なっ……」

 何を考えてるんだこの世界の魔王は!
 どうなってるんだよ!
 普通は弱い敵を徐々にぶつけて、勇者側の成長を促すんだろう?
 そういうセオリーだろうが!
 いきなり幹部なんてぶつけてくる奴があるか!
 お約束もわからないのかよぉ!!

 心の中で嘆き叫ぶ。
 しかしそんなことを言っている場合じゃない。
 どうする?
 ここで戦うべきか?
 相手は幹部だぞ。

「幹部がなんだ! 僕たちは魔王を倒すためにいるんだ!」
「アルカ!」

 アルカが大剣を構え、バルバトスに向かって振るう。
 恐怖しながらも果敢に戦う姿勢は、彼女のほうが勇者らしい。
 が、強靭な一撃は、バルバトスに簡単に受け止められた。

「なっ……」
「軽い攻撃だなぁ。この程度か」

 バルバトスは大剣を払い、アルカを蹴り飛ばす。
 アルカは地面を抉りながら俺の元まで吹き飛ばされてしまった。

「いたたっ……」
「だ、大丈夫なのか?」
「これくらい平気だよ!」

 すぐに立ち上がる。
 大きな怪我はないみたいでホッとする。

「へぇ、頑丈さはあるな。壊れるまでぶっ飛ばしてやるよ」
「負けるもんか!」

 アルカは再び攻めようとする。
 そんな彼女の肩を咄嗟に掴み、制止した。

「待て待て! 無暗に突っ込むな!」
「なんで!? 相手は魔王軍だよ?」
「だからこそだろ! 今の俺たちじゃあいつには勝てない!」

 直感的にわかる。
 俺たちが全力を出しても、バルバトスには及ばない。
 パーティーでも屈指の怪力を持つアルカの攻撃が簡単に受け止められた。
 俺たちじゃあいつにダメージすら与えられない。

「ここは一旦逃げるぞ!」
「私も賛成よ」
「うぅー」
「アルカ」
「わ、わかったよぉ」

 エリカが賛同し、セミレナにも諭され。
 しぶしぶながら撤退することを承諾するアルカ。
 気持ちはわかるが絶対に勝てない。
 こんなところで全滅したら笑えないぞ!

「逃がすと思うか?」
「っ……」

 問題はこいつからどうやって逃げるかだ。
 エリカが俺の腕をひっぱる。

「集まって! 飛ぶわ」

 次の瞬間、俺たちはバルバトスの前から消える。

「――! 空間転移が使えたか。やるじゃねーか」
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