通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ

文字の大きさ
22 / 35

モテ期到来、だと思いたい③

しおりを挟む
 アルカの部屋から出て、各々の寝室へと移動する。
 
「くそっ、なんで俺だけ下の階なんだよ」

 本来は同じ階の部屋で寝るはずだった。
 でもエリカが、俺のことを信用できないからという理由で、一つ下の階で寝ろと言ってくる。
 面倒だからと食い下がるが、立場的に彼女が上だ。
 逆らえるはずもなく、とぼとぼと階段を下る。

「心配しなくてもあいつは襲わないっての」
「ソウジ殿は、エリカ殿に気がないのでござるな」
「当たり前だろ? あんな性格悪い女……まぁ見た目は正直好みだけど」
「左様か。見た目はエリカ殿、正確はアルカ殿がソウジ殿のタイプでござるな」
「……なんでわかるんだよ」
「なんとなくでござる」

 精神を共有している弊害か。
 当たっているから否定もできない。
 プライバシーの欠片もないな。
 俺は小さくため息をこぼす。
 
 コトン、と。
 俺とは別の足音に気づく。

「誰かいるでござるよ」
「あれは……」

 地下へ続く階段を下っているのは、セミレナだった。

「なんでこんな時間に?」
「気になるでござるな」

 彼女は俺たちに気づいていなかった。
 少し考える。
 俺と小次郎の意見が一致する。

「追うか」
「拙者が先行するでござるよ」

 こっそり後をつけることにした。
 幽霊の小次郎がいれば、気づかれることなくルートが確認できる。
 なんて便利なんだ。
 あとはゆっくり、焦らず音を殺して移動するだけ。

「地下の牢屋に向かったでござるよ」
「牢屋?」

 悪徳公爵が捕まっている牢屋か。
 こんな時間に何をするつもりなんだ?
 少し嫌な予感がする。

「急ぐか」
「承知」

 俺たちは階段を下る。
 そして牢屋がある部屋の手前で立ち止まり、そっと中を覗いた。

「――あなたを解放してあげましょう」
「ほ、本当か!?」
「ええ」

 おいおい、冗談だろ?
 セミレナが悪徳公爵を解放しようとしている?
 どうして?
 まさか彼女も、裏で魔王軍と繋がっているんじゃないだろうな?

 見守っていると、本当に彼女は牢屋の鍵を開けてしまった。
 本格的にまずい状況だ。
 今すぐエリカを起こして伝えるか?
 
「た、助かった! こんな場所今すぐおさらばして――がっ!」
「……え?」

 ぐしゃ、と。
 悪徳領主の胸に穴が開いた。
 貫通しているのは、セミレナの細く綺麗な腕だった。

「なっ、に……」
「言ったはずです。あなたを解放してあげると」
「何を……」
「これで解放されますね? この世界からか」

 どさっと倒れる悪徳領主。
 心臓を一突きされ、即死した。
 遠目でもわかる。
 大量の血が地下牢の地面にあふれ出る。

「逃がすわけがありません。あなたは魔王に与した。女神様の加護を受ける身でありながら、その慈悲に背いたのです。万死に値します」

 すでに悪徳領主は死んでいる。
 言葉を投げかけても返事はない。
 だが、セミレナは倒れた悪徳領主を踏みつけて言う。

「あなたに言っているのですよ? 女神様に背いた愚か者! 懺悔なさい! 悔い改めなさい!」

 もちろん返事はない。
 踏むたびにぐしゃっと音がして、血が飛び散る。
 白い聖女の服が、赤く染まっていく。
 
「ああ、汚い。なんとおぞましい姿……これが女神様に背いた者の末路ですね」

 そのまま死体に向かって手を合わせ、祈り始めた。
 
「我が主に代わり、悪しき魂に鉄槌を下しました。見ていてください」
「……こ」

 怖すぎるだろ!
 なんだあれ?
 あれが彼女の本心なのか? 
 まったく聖女じゃないんだが……。

 あまりの恐怖に後ずさる。
 後ろに小石があって、踏んでしまった。
 音がする。
 当然、彼女にも聞こえる。

「あら? これはこれは……勇者様」
「ぅ……」

 バレてしまった。
 彼女は血まみれになりながら、俺に笑みを向けた。
 敵意はないのに、ものすごく怖い。

「あの……これは……」
「お見苦しいところをお見せしました。悪しき魂は浄化いたしました。ちゃんと清掃もしますので、どうかお気になさらないでください」
「いやいや、そうじゃなくて? そいつ、王国に引き渡すんじゃ……」
「必要ありません。この者は私が、女神様の代わりに罰を与えましたので」

 セミレナがニコリと微笑む。
 背筋が凍るようだった。
 このまま俺まで殺されるんじゃないかと思うほどの恐怖。

 ふと、彼女の胸元に目が行く。
 普段は服で隠れているが、今は少しはだけていた。
 見えたのは金属の円盤だ。
 女神の彫刻が彫られ、十字架を重ねたようなデザインの円盤……。

 見たことがある。
 エリカの授業を思い出した。

 この国にはいくつもの民間組織がある。
 中でも、王国が危険視する組織の一つがあった。
 女神を信仰する宗教団体。
 振興のためならあらゆる手段をいとわない過激派。

 その名は――

「『神の器』」
「よくご存じですね。さすが勇者様」

 嘘だろ?
 イカレタ宗教団体だとは聞いているが……。

「セミレナが、そのメンバーだったのか?」
「はい」

 彼女は胸元から宗教団体の証である円盤を取り出す。
 円盤を見せながら、優しく微笑み告げる。

「私は女神様を愛する者たちの楽園……『神の器』の教祖です」
「きょ……」

 こいつがトップかよ!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
 2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。  死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。  命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。  自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

処理中です...