落ちこぼれ令嬢ですが新天地で幸せに暮らします!

風見ゆうみ

文字の大きさ
10 / 38

7   落ちこぼれ令嬢は再婚約を望まれる

 私の力はサーキス殿下が予想した通り、植物を癒す力だった。観察していってわかったことは、引きちぎられたりしても自分で新たな茎などを伸ばすことができるような場合には、私の力はあまり役に立たない。そのかわり病気にかかってしまい、このままでは枯れてしまうような状態になった場合には、とても効果を発揮することがわかった。

「まるで植物のお医者さんですわね」
「専門知識がほとんどないので、今の状態では力を使ってみないと分からない状態ですから、植物についてもっと勉強していこうと思います」

 すっかり元気になったジルラナ殿下とビニールハウスの中を散歩していると、リブランを育てている担当者の一人が笑顔で話しかけてくる。

「よろしければ植物について詳しく書かれている本を持ってきましょうか」
「良いんですか?」
「もちろんです。皆で回し読みをして読んでいるものなので、あまり綺麗なものではありませんが、私たちの間では必ず読むように言われている本なんです」
「初心者向けの本なら私にも読めそうですね」

 チームリーダーに本を借りても良いか確認を取ってからになると付け加えてきたけれど、その場でジルラナ殿下が許可を出してくれたので、本は私の部屋に届けてもらえることになった。
 そのことについてお礼を言うと、ジルラナ殿下は微笑む。
 
「アビゲイルには本当に感謝しているんですの。オブラン王国の平地では植物は育ちにくい環境ですから枯れないように必死でしたわ。リブランにも虫がつかないようにビニールハウスで栽培していたのに、虫が付いてしまったから本当にどうしようかと思っていましたの」
「そうだったのですね。私に植物を癒せる力があって本当に良かったです」
「今までそのことに気づく気配はなかったんですの?」
「はい。人のケガを治すほうが大事なことだと思われていたんです」

 ゼッシュたちのことだもの。私の力のことを知ってもバカにするだけなんでしょうね。

「あなたの兄も力が使えなくなったら、力の有り難さに気づくのかしら」
「ゼッシュの力がなくなるとは思えません。彼の力がなくなって困るのは彼だけではありませんから……」
「そうね。助けられる命が助けられなくなるんですものね」

   ジルラナ殿下は何度も頷いて肯定してくれた。その後は他愛のない話をしているとすぐに時間が過ぎた。ポメラといる時は中々時間が過ぎなくて愛想笑いにも疲れていたのに、ジルラナ殿下にはそんな気持ちにはならない。やっぱり、ポメラと私は親友どころか友人でもなかったのかもしれない。

 別れ際、ジルラナ殿下にお願いされる。

「わたくしのことはジルと呼んでちょうだい」
「そんな恐れ多いことです!」
「あなたのことをアビーと呼びたいの。駄目かしら?」
「呼んでいただくのはかまわないのですが、私がジルラナ殿下のことを愛称でお呼びすることはできません」
「それって、わたくしと仲良くなりたくないからですの?」
「決してそんな理由ではありません!」

 ショックを受けたような顔をするジルラナ殿下と話し合った結果、ジルラナ殿下ではなく、ジル様と呼ぶということで決着がついたのだった。


******

 部屋に戻った頃には夕食の時間になっていて、本もすでに届けられていた。夕食後に借りた本を読んでいると、サーキス殿下が訪ねてきた。

「夜分にごめんね。明日の朝までに確認を取ってほしいと父上から言われたことがあったんだ」
「お気になさらないでくださいませ。ところで、確認を取りたいことというのはどのようなことでしょう」

 部屋の中に招き入れて尋ねると、サーキス殿下は眉尻を下げる。

「君の力を公にしても良いかってことなんだ」
「公というのは、他国にも知らせると言うことですわね?」
「そうなんだ」
「ちなみに私がこの国に住むことについて、ブツノ王国からは何か言ってきましたか?」
「言ってきたけれど、今更どうこう言われても困ると断った」
「そんなに簡単に納得するような方だとは思えないのですが……」

 いくらゼッシュが認めたと言っても契約書を取り交わしたわけではない。だから、無効だと言ってきそうなものだと思ったので尋ねてみた。

「大丈夫だよ。君が医務室に行ったあとにゼッシュ氏には一筆書いてもらっていたんだ。ブツノ王国の国王陛下から抗議が来た時にその分の控えを送ると黙ってくれたよ」
「そうでしたか。ありがとうございます」

 あの時はそこまで頭がまわっていなかったから、最近になってあのようなやり方で大丈夫なのか気になっていた。私が気づかない内に手を打ってくれていたおかげで特に問題がないと分かって安堵する。そして、サーキス殿下の質問に答える。

「公にしてもらってもかまいませんが、オブラン王国を優先に動くということも伝えていただけますか。それから、ブツノ王国にはゼッシュがいますので、どんなに急ぎの件であっても他国を優先します」
「わかった。気を遣わせてごめんね」
「とんでもないことでございます。気を遣わせてしまっているのはこちらですから、それくらいさせてくださいませ」
「ありがとう。では、そういうことにさせてもらうね」

 サーキス殿下は微笑んで頷くと、部屋から出ていった。

 次の日には早速、私の力が世界的に発表されることになり、多くの国から私と連絡を取りたいという手紙が届いた。そして、その中には驚くことにシドロフェス殿下からの手紙も入っていた。彼の場合は他の用件と違っており、オブラン王国とブツノ王国の架け橋のような存在になるために、私と再婚約したいと書かれていた。

 
感想 22

あなたにおすすめの小説

婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

待鳥園子
恋愛
伯爵令嬢アイリーンの婚約者であるセシルの隣には『妹のような幼馴染み』愛らしい容姿のデイジーが居て、身分差で結婚出来ない二人が結ばれるためのお飾り妻にされてしまうことが耐えられなかった。 そして、二人がふざけて婚姻届を書いている光景を見て、アイリーンは自分の我慢が限界に達そうとしているのを感じていた……のだけど!?

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

婚約破棄ですか?勿論お受けします。

アズやっこ
恋愛
私は婚約者が嫌い。 そんな婚約者が女性と一緒に待ち合わせ場所に来た。 婚約破棄するとようやく言ってくれたわ! 慰謝料?そんなのいらないわよ。 それより早く婚約破棄しましょう。    ❈ 作者独自の世界観です。

姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。

しげむろ ゆうき
恋愛
 姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。 全12話

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?

リオール
恋愛
両親に虐げられ 姉に虐げられ 妹に虐げられ そして婚約者にも虐げられ 公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。 虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。 それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。 けれど彼らは知らない、誰も知らない。 彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を── そして今日も、彼女はひっそりと。 ざまあするのです。 そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか? ===== シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。 細かいことはあまり気にせずお読み下さい。 多分ハッピーエンド。 多分主人公だけはハッピーエンド。 あとは……