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59 レイハート公爵夫人の時戻し ②
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「私個人の意見として言わせてもらいますが、務まると思います。どうしてそのような話をされるのですか?」
「俺はどうしてもそうとは思えないから。王妃になるんだよ? 他国の王族たちの相手をすることもあるんだ。もっと気の強いしっかりした女性がいいと思うことは間違ってないだろう?」
「社交能力は必要かとは思いますが、ミティ様に全くないとも思いません。不安要素をなくすために、王太子妃教育があるのでしょう。王太子妃に不適合と判断されたなら別ですが、ミティ様はそうではありません」
「みんな、兄上に遠慮しているだけだろう」
王太子妃にふさわしいと認められたから、結婚の話が進んでいるはずだ。今さら、リット殿下がどうこう言える立場ではない。
難癖をつけて、ラックス殿下を引きずり下ろすきっかけを作ろうとしているのかしら。
「私はそうとは思いません」
そう答えた瞬間、リット殿下の目が急に細くなった。
「やっぱり、お前が母上を唆したんだな」
「なんのことでしょうか」
「とぼけるな。母上は今までは俺の言いなりだった。それなのに、ここ最近は違う。兄上やイライアスと仲良くしろとまで言ってくる」
「何が悪いことなのです? 兄弟が仲良くしてほしいと願うのは、母親としては当たり前なのではないでしょうか」
「だから、今までそんなことは言わなかったと言っているだろう!」
リット殿下は左足で机を蹴り上げた。
カップやティーポットが激しい音を立てて倒れ、中身がこぼれて広がる。
「ベェェー!」
ベェが怒りの声を上げたが、かまってあげる余裕はなかった。
リット殿下から目を離せば、何をされるかわからないと思ったからだ。
こんなことで物に当たるような人が国王になれるなんて、本気で思っているの?
そう心の中で問いかけると、リット殿下は早口で話し始める。
「どいつもこいつもわからず屋ばかりだ。魔法使いもこの世に必要ないし、女なんて男の奴隷みたいなもんだ! お前の父親と母上だけは理解してくれていたのにっ!」
平民の中では、結婚して嫁の尻に敷かれているという人が多いと聞いている。どう思うかは人それぞれだが、男の奴隷というのはどうかと思う。
「聞いてるのかよ!」
リット殿下が身を乗り出し、私に向かって手を伸ばした時、ベェが私の前に立ちはだかった。
手をシルバートレイで叩いた。
「なんだ!?」
リット殿下が叫んだと同時に、私の足元に胸に抱えるくらいの大きさのシルバートレイが現れた。
「ベェ!」
使って!
と言われた気がして手に取った。
「どこから出したんだ!?」
「こんなこともあろうかと足元に置いていたんです」
「そんな」
リット殿下はまだ何か言おうとしていたが、扉が勢いよく開いたため、言葉を止めて、そちらに目を向けた。
「ソラリア!」
入ってきたのは、イライアス様とルピだった。
手の甲を押さえて叫ぶリット殿下を睨みながら答えた。
「俺はどうしてもそうとは思えないから。王妃になるんだよ? 他国の王族たちの相手をすることもあるんだ。もっと気の強いしっかりした女性がいいと思うことは間違ってないだろう?」
「社交能力は必要かとは思いますが、ミティ様に全くないとも思いません。不安要素をなくすために、王太子妃教育があるのでしょう。王太子妃に不適合と判断されたなら別ですが、ミティ様はそうではありません」
「みんな、兄上に遠慮しているだけだろう」
王太子妃にふさわしいと認められたから、結婚の話が進んでいるはずだ。今さら、リット殿下がどうこう言える立場ではない。
難癖をつけて、ラックス殿下を引きずり下ろすきっかけを作ろうとしているのかしら。
「私はそうとは思いません」
そう答えた瞬間、リット殿下の目が急に細くなった。
「やっぱり、お前が母上を唆したんだな」
「なんのことでしょうか」
「とぼけるな。母上は今までは俺の言いなりだった。それなのに、ここ最近は違う。兄上やイライアスと仲良くしろとまで言ってくる」
「何が悪いことなのです? 兄弟が仲良くしてほしいと願うのは、母親としては当たり前なのではないでしょうか」
「だから、今までそんなことは言わなかったと言っているだろう!」
リット殿下は左足で机を蹴り上げた。
カップやティーポットが激しい音を立てて倒れ、中身がこぼれて広がる。
「ベェェー!」
ベェが怒りの声を上げたが、かまってあげる余裕はなかった。
リット殿下から目を離せば、何をされるかわからないと思ったからだ。
こんなことで物に当たるような人が国王になれるなんて、本気で思っているの?
そう心の中で問いかけると、リット殿下は早口で話し始める。
「どいつもこいつもわからず屋ばかりだ。魔法使いもこの世に必要ないし、女なんて男の奴隷みたいなもんだ! お前の父親と母上だけは理解してくれていたのにっ!」
平民の中では、結婚して嫁の尻に敷かれているという人が多いと聞いている。どう思うかは人それぞれだが、男の奴隷というのはどうかと思う。
「聞いてるのかよ!」
リット殿下が身を乗り出し、私に向かって手を伸ばした時、ベェが私の前に立ちはだかった。
手をシルバートレイで叩いた。
「なんだ!?」
リット殿下が叫んだと同時に、私の足元に胸に抱えるくらいの大きさのシルバートレイが現れた。
「ベェ!」
使って!
と言われた気がして手に取った。
「どこから出したんだ!?」
「こんなこともあろうかと足元に置いていたんです」
「そんな」
リット殿下はまだ何か言おうとしていたが、扉が勢いよく開いたため、言葉を止めて、そちらに目を向けた。
「ソラリア!」
入ってきたのは、イライアス様とルピだった。
手の甲を押さえて叫ぶリット殿下を睨みながら答えた。
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