【完結】もう二度とあなたを選ぶことはありません

風見ゆうみ

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5  理解できない願い

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 ガンチャとの話を終えて見送ったあと、私たちは談話室に無言で直行した。暖炉の前にコの字型に置かれている茶色のソファに並んで座った瞬間、同時に大きなため息を吐いた。
  
「どこが良くて、お姉様はあの方に夢中だったんですか?」

 ココナに尋ねられた私は返答に困った。過去の私は彼のことを王子様のように思っていた。それはなぜかと言われると、剣技に長けているため、子供の頃はよく大会で受賞していたからだ。幼い頃はそういうタイプの人に憧れるものでしょう? 
 実際、同学年の中ではガンチャは人気者だった。そんな人の婚約者になったことで浮かれてしまっていて、見なければならないものを見ていなかったのかもしれない。

「たぶん、あの時はすごくカッコよく見えていたのよ。本性を知ってその気持ちが冷めたってところかしら」
「熱に浮かされていたということですね」

 ココナは「私も気をつけなくてはなりません」と呟くと、カラムが首を傾げて尋ねる。

「政略的なメリットがあったから婚約者になったのでしょうけど、どういう理由だったんですか?」

 カラムたちには理由を教えていなかったことに気づき、お父様から教えてもらった話をそのまま伝える。

「王国の中でも派閥があるから、お互いに裏切らないようにとの意味合いが強いみたい。ウロイカ辺境伯家にとっては勢力が強いうちの家に裏切られたくないから、私は人質のようなものね」
「うちのメリットはあるんですか?」
「……隣接している魚がよく捕れる湖を譲ってもらっているの。そこまでメリットがあるわけじゃないし、もしかしたら私が彼のことを好きだったからじゃないかしら」

 苦笑すると、カラムとココナは困ったような表情で顔を見合わせた。

「ごめんなさい。殺されることになったのも自業自得かな」
「「そんなわけないでしょう」」

 肩を落とした私にそう言ってくれた二人は、話題を変えてくる。

「本当にガンチャ様はレイネ様と仲が良いんですかね。結婚式に呼ばれたのも辺境伯だったからではないでしょうか」
「そうですわ。たしか、お父様とお母様は出席していたましたわよね」
「そうだったわね」

 あとで詳しい話を聞いてみよう。結婚式のことだって違和感を覚えていたかもしれないけど、私に遠慮して言わなかっただけかもしれないわ。

「そういえば、半年前に結婚ということは、招待状はガンチャではなく、先代宛に届いていたのかしら」

 式を挙げるのには時間がかかる。式場を押さえるのもそうだけど、オーダーメイドのドレスなんてかなり納期がかかる。

「まさか、先代のウロイカ辺境伯が毒殺されたのは……」

 私が呟くと、カラムたちが反応する。

「そんな理由で人を殺すんですか? 信じられませんよ!」
「でもお兄様、ガンチャの野郎はふざけた理由でお姉様を手に掛けましたわ」
「……そうだった」

 カラムが頭を抱えて続ける。

「血の気が多くて短絡思考にも程があるよ。姉さん、結婚して1年経っても気づけなかったの?」
「見抜けなかった言い訳にしかすぎないけど、レイネ様が関わると駄目なんだと思うの」
「それならどうして結婚相手のキマコマ公爵を狙わなかったのでしょうか」
「……わからないわ。こんなことを言ってはなんだけと、ガンチャは異常よ。そして、それを容認している母と妹もね。考えを理解するほうが難しいわ」

 そういえば、アルフならキマコマ公爵と交流があるんじゃないかしら。レイネ様のことも聞くことができるかも。

「明日、アルフが来てくれる。彼がどんな話をするかによっても状況は変わってくると思うの」
「アルフレッド様はお姉様の葬儀ではガンチャの野郎にどうしてこんなことになったのか問い詰めてくださっていましたわ。ですから、力になってくれることでしょう」
「そうですね。アルフレッド様にとって、姉さんは家族以外で初めて自分を認めてくれた人ですから」

 ココナたちもアルフが私のために願ってくれたと思っているみたいね。
 カラムの言うようにアルフにそこまで大げさに思われているのかはわからない。とにかく話をしようと思った次の日の昼過ぎ。

「断られるとわかっているけど、駄目元で言うよ。ウロイカ辺境伯との結婚は諦めてくれないか?」

 アルフは挨拶もそこそこにこう言った。
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