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8 レイネの願い
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※一度、アリアナ視点に戻ります。
アルフがレイネ様から聞いた話によると、彼女の家族が贔屓にしていたレストランは、ウロイカ辺境伯も気に入っていた店だった。
そんなこともあり家族でよく来ていたらしく、両家が顔を合わせることも多かったそうだ。
必然的に伯爵家であるレイネ様たちが辺境伯家に挨拶をしに行くことになるのだが、ガンチャは彼女が自分を好きだから来るのだと勘違いしたようだった。
「彼女はまったくその気はなかったが、相手は辺境伯令息で格上だから作り笑顔で対応していたみたいだよ」
「レイネ様にとっては社交辞令だったんでしょうね。お優しい方だし、気のある素振りを見せて期待させるような方ではないもの。でも、レタ様との結婚が決まったんだから、ガンチャだってさすがに諦めない?」
「夫人もそう思っていたが、彼はそうじゃなかった。辺境伯以外の彼の家族もやたらと夫人に絡んできたらしい。そのことに気がついた先代のウロイカ辺境伯が止めに入っておとなしくなったようだが……」
アルフは難しい顔をして言葉を止めた。
元々、ガンチャたちは恋路を邪魔する人だとして、先代のウロイカ辺境伯をよく思っていなかったのかもしれない。
「ガンチャは自分の父親も鬱陶しくなったのね」
「だと思う。公爵夫人はウロイカ辺境伯を結婚式に呼びたくはなかったから、子息や息女は呼ばないことを決めた。すると」
「先代が暗殺されたのね」
「そうなんだ。その時、夫人はキマコマ公爵に話をしようと思ったそうだが、憶測の話をしてはいけないと思ってやめたそうだ」
「何か証拠をつかんだならまだしも、状況証拠では捕まえることはできないし、キマコマ公爵に迷惑をかけたくないという気持ちもわかるわ」
キマコマ公爵は穏やかで優しい人だから、レイネ様が話せば、ちゃんと調べてくれていたでしょう。そうしてもらえていたら、私は死ななくて良かったのかしら。
そう思った時、ふと思い浮かんだことがあった。
「まさか、レイネ様も私のことを覚えていたりする?」
「ここに来るまでに公爵邸に寄って話を聞いてきたけど、キマコマ公爵夫妻には記憶があった。そして、流星群の日に君のことを願ったそうだ」
「レイネ様は公爵に話をしたのね」
「自分があの時話をしていれば、実家に一人で戻らなければと嘆いていたし、夫であるレタも彼女を一人だけ先に戻らせたことを嘆いていた」
「悪いのはガンチャなのに……! お二人には本当に申し訳ないわ。……というか、実家に帰ってきた理由は何だったの?」
レイネ様たちはお互いを思い合っているみたいだし、離婚するとは思えない。
そう思って尋ねると、アルフはこめかみを押さえて答える。
「彼女の両親にキマコマ公爵邸で一緒に住もうと話をしに来ただけで、レタも仕事が片付いてから来たんだよ。レタは君の葬儀にも僕と夫人が話をしている時に来たよ」
「……その時のガンチャたちの様子はどうだったの?」
「ウロイカ辺境伯の妹は嘘でしょう、とか叫んでいたし、ウロイカ辺境伯は困惑した様子でキマコマ公爵夫人に話しかけたが、レタに一蹴されてたよ」
「……うう。本当に殺され損だわ」
私は頭を抱えたが、すぐに気持ちを切り替える。
「今回はガンチャたちに私の人生を奪われたりしない! まずは婚約破棄よ! それから毒見役に話を聞いて無実なら、彼女を助けなくちゃ」
「僕も手を貸すよ」
「気持ちは嬉しいんだけど、婚約者以外の男性と長く一緒にいるわけにはいかないわ」
「二人きりでなければいいんだろう?」
アルフは微笑んで続ける。
「キマコマ公爵夫人が君と会って話がしたいと言っている。ただ、何の接点もない君と夫人が会うとなると、ウロイカ辺境伯が怪しむだろうし、彼がしゃしゃり出てくる可能性がある」
「あなたの紹介ということにするのね」
「ああ。夫人が高位貴族の茶飲み友達を探していて、レタから僕に連絡があり、僕が君を推薦したことにする」
「レイネ様にはお友達がたくさんいそうだけど」
「彼女は浅く広くなんだ。深く付き合える友人がほしいそうだよ」
ガンチャはレイネ様のことを調べ尽くしているだろうし、そのことは知っていそうね。私が彼女と会うと知れば、どうにかして自分も一緒に行こうとするはず。
でも、アルフの紹介でその場にアルフもいるのなら、遠くから見つめることはあっても、話に混じろうとすることはないでしょう。
「レイネ様とはお話ししてみたかったの。今回のお礼も言いたいわ。それに、ガンチャの本性を引き出せるかもしれないし婚約を破棄する理由もできるかも」
私はアルフにお礼を言って、早速話を進めてもらうことにした。
アルフがレイネ様から聞いた話によると、彼女の家族が贔屓にしていたレストランは、ウロイカ辺境伯も気に入っていた店だった。
そんなこともあり家族でよく来ていたらしく、両家が顔を合わせることも多かったそうだ。
必然的に伯爵家であるレイネ様たちが辺境伯家に挨拶をしに行くことになるのだが、ガンチャは彼女が自分を好きだから来るのだと勘違いしたようだった。
「彼女はまったくその気はなかったが、相手は辺境伯令息で格上だから作り笑顔で対応していたみたいだよ」
「レイネ様にとっては社交辞令だったんでしょうね。お優しい方だし、気のある素振りを見せて期待させるような方ではないもの。でも、レタ様との結婚が決まったんだから、ガンチャだってさすがに諦めない?」
「夫人もそう思っていたが、彼はそうじゃなかった。辺境伯以外の彼の家族もやたらと夫人に絡んできたらしい。そのことに気がついた先代のウロイカ辺境伯が止めに入っておとなしくなったようだが……」
アルフは難しい顔をして言葉を止めた。
元々、ガンチャたちは恋路を邪魔する人だとして、先代のウロイカ辺境伯をよく思っていなかったのかもしれない。
「ガンチャは自分の父親も鬱陶しくなったのね」
「だと思う。公爵夫人はウロイカ辺境伯を結婚式に呼びたくはなかったから、子息や息女は呼ばないことを決めた。すると」
「先代が暗殺されたのね」
「そうなんだ。その時、夫人はキマコマ公爵に話をしようと思ったそうだが、憶測の話をしてはいけないと思ってやめたそうだ」
「何か証拠をつかんだならまだしも、状況証拠では捕まえることはできないし、キマコマ公爵に迷惑をかけたくないという気持ちもわかるわ」
キマコマ公爵は穏やかで優しい人だから、レイネ様が話せば、ちゃんと調べてくれていたでしょう。そうしてもらえていたら、私は死ななくて良かったのかしら。
そう思った時、ふと思い浮かんだことがあった。
「まさか、レイネ様も私のことを覚えていたりする?」
「ここに来るまでに公爵邸に寄って話を聞いてきたけど、キマコマ公爵夫妻には記憶があった。そして、流星群の日に君のことを願ったそうだ」
「レイネ様は公爵に話をしたのね」
「自分があの時話をしていれば、実家に一人で戻らなければと嘆いていたし、夫であるレタも彼女を一人だけ先に戻らせたことを嘆いていた」
「悪いのはガンチャなのに……! お二人には本当に申し訳ないわ。……というか、実家に帰ってきた理由は何だったの?」
レイネ様たちはお互いを思い合っているみたいだし、離婚するとは思えない。
そう思って尋ねると、アルフはこめかみを押さえて答える。
「彼女の両親にキマコマ公爵邸で一緒に住もうと話をしに来ただけで、レタも仕事が片付いてから来たんだよ。レタは君の葬儀にも僕と夫人が話をしている時に来たよ」
「……その時のガンチャたちの様子はどうだったの?」
「ウロイカ辺境伯の妹は嘘でしょう、とか叫んでいたし、ウロイカ辺境伯は困惑した様子でキマコマ公爵夫人に話しかけたが、レタに一蹴されてたよ」
「……うう。本当に殺され損だわ」
私は頭を抱えたが、すぐに気持ちを切り替える。
「今回はガンチャたちに私の人生を奪われたりしない! まずは婚約破棄よ! それから毒見役に話を聞いて無実なら、彼女を助けなくちゃ」
「僕も手を貸すよ」
「気持ちは嬉しいんだけど、婚約者以外の男性と長く一緒にいるわけにはいかないわ」
「二人きりでなければいいんだろう?」
アルフは微笑んで続ける。
「キマコマ公爵夫人が君と会って話がしたいと言っている。ただ、何の接点もない君と夫人が会うとなると、ウロイカ辺境伯が怪しむだろうし、彼がしゃしゃり出てくる可能性がある」
「あなたの紹介ということにするのね」
「ああ。夫人が高位貴族の茶飲み友達を探していて、レタから僕に連絡があり、僕が君を推薦したことにする」
「レイネ様にはお友達がたくさんいそうだけど」
「彼女は浅く広くなんだ。深く付き合える友人がほしいそうだよ」
ガンチャはレイネ様のことを調べ尽くしているだろうし、そのことは知っていそうね。私が彼女と会うと知れば、どうにかして自分も一緒に行こうとするはず。
でも、アルフの紹介でその場にアルフもいるのなら、遠くから見つめることはあっても、話に混じろうとすることはないでしょう。
「レイネ様とはお話ししてみたかったの。今回のお礼も言いたいわ。それに、ガンチャの本性を引き出せるかもしれないし婚約を破棄する理由もできるかも」
私はアルフにお礼を言って、早速話を進めてもらうことにした。
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