8 / 28
8 レイネの願い
しおりを挟む
※一度、アリアナ視点に戻ります。
アルフがレイネ様から聞いた話によると、彼女の家族が贔屓にしていたレストランは、ウロイカ辺境伯も気に入っていた店だった。
そんなこともあり家族でよく来ていたらしく、両家が顔を合わせることも多かったそうだ。
必然的に伯爵家であるレイネ様たちが辺境伯家に挨拶をしに行くことになるのだが、ガンチャは彼女が自分を好きだから来るのだと勘違いしたようだった。
「彼女はまったくその気はなかったが、相手は辺境伯令息で格上だから作り笑顔で対応していたみたいだよ」
「レイネ様にとっては社交辞令だったんでしょうね。お優しい方だし、気のある素振りを見せて期待させるような方ではないもの。でも、レタ様との結婚が決まったんだから、ガンチャだってさすがに諦めない?」
「夫人もそう思っていたが、彼はそうじゃなかった。辺境伯以外の彼の家族もやたらと夫人に絡んできたらしい。そのことに気がついた先代のウロイカ辺境伯が止めに入っておとなしくなったようだが……」
アルフは難しい顔をして言葉を止めた。
元々、ガンチャたちは恋路を邪魔する人だとして、先代のウロイカ辺境伯をよく思っていなかったのかもしれない。
「ガンチャは自分の父親も鬱陶しくなったのね」
「だと思う。公爵夫人はウロイカ辺境伯を結婚式に呼びたくはなかったから、子息や息女は呼ばないことを決めた。すると」
「先代が暗殺されたのね」
「そうなんだ。その時、夫人はキマコマ公爵に話をしようと思ったそうだが、憶測の話をしてはいけないと思ってやめたそうだ」
「何か証拠をつかんだならまだしも、状況証拠では捕まえることはできないし、キマコマ公爵に迷惑をかけたくないという気持ちもわかるわ」
キマコマ公爵は穏やかで優しい人だから、レイネ様が話せば、ちゃんと調べてくれていたでしょう。そうしてもらえていたら、私は死ななくて良かったのかしら。
そう思った時、ふと思い浮かんだことがあった。
「まさか、レイネ様も私のことを覚えていたりする?」
「ここに来るまでに公爵邸に寄って話を聞いてきたけど、キマコマ公爵夫妻には記憶があった。そして、流星群の日に君のことを願ったそうだ」
「レイネ様は公爵に話をしたのね」
「自分があの時話をしていれば、実家に一人で戻らなければと嘆いていたし、夫であるレタも彼女を一人だけ先に戻らせたことを嘆いていた」
「悪いのはガンチャなのに……! お二人には本当に申し訳ないわ。……というか、実家に帰ってきた理由は何だったの?」
レイネ様たちはお互いを思い合っているみたいだし、離婚するとは思えない。
そう思って尋ねると、アルフはこめかみを押さえて答える。
「彼女の両親にキマコマ公爵邸で一緒に住もうと話をしに来ただけで、レタも仕事が片付いてから来たんだよ。レタは君の葬儀にも僕と夫人が話をしている時に来たよ」
「……その時のガンチャたちの様子はどうだったの?」
「ウロイカ辺境伯の妹は嘘でしょう、とか叫んでいたし、ウロイカ辺境伯は困惑した様子でキマコマ公爵夫人に話しかけたが、レタに一蹴されてたよ」
「……うう。本当に殺され損だわ」
私は頭を抱えたが、すぐに気持ちを切り替える。
「今回はガンチャたちに私の人生を奪われたりしない! まずは婚約破棄よ! それから毒見役に話を聞いて無実なら、彼女を助けなくちゃ」
「僕も手を貸すよ」
「気持ちは嬉しいんだけど、婚約者以外の男性と長く一緒にいるわけにはいかないわ」
「二人きりでなければいいんだろう?」
アルフは微笑んで続ける。
「キマコマ公爵夫人が君と会って話がしたいと言っている。ただ、何の接点もない君と夫人が会うとなると、ウロイカ辺境伯が怪しむだろうし、彼がしゃしゃり出てくる可能性がある」
「あなたの紹介ということにするのね」
「ああ。夫人が高位貴族の茶飲み友達を探していて、レタから僕に連絡があり、僕が君を推薦したことにする」
「レイネ様にはお友達がたくさんいそうだけど」
「彼女は浅く広くなんだ。深く付き合える友人がほしいそうだよ」
ガンチャはレイネ様のことを調べ尽くしているだろうし、そのことは知っていそうね。私が彼女と会うと知れば、どうにかして自分も一緒に行こうとするはず。
でも、アルフの紹介でその場にアルフもいるのなら、遠くから見つめることはあっても、話に混じろうとすることはないでしょう。
「レイネ様とはお話ししてみたかったの。今回のお礼も言いたいわ。それに、ガンチャの本性を引き出せるかもしれないし婚約を破棄する理由もできるかも」
私はアルフにお礼を言って、早速話を進めてもらうことにした。
アルフがレイネ様から聞いた話によると、彼女の家族が贔屓にしていたレストランは、ウロイカ辺境伯も気に入っていた店だった。
そんなこともあり家族でよく来ていたらしく、両家が顔を合わせることも多かったそうだ。
必然的に伯爵家であるレイネ様たちが辺境伯家に挨拶をしに行くことになるのだが、ガンチャは彼女が自分を好きだから来るのだと勘違いしたようだった。
「彼女はまったくその気はなかったが、相手は辺境伯令息で格上だから作り笑顔で対応していたみたいだよ」
「レイネ様にとっては社交辞令だったんでしょうね。お優しい方だし、気のある素振りを見せて期待させるような方ではないもの。でも、レタ様との結婚が決まったんだから、ガンチャだってさすがに諦めない?」
「夫人もそう思っていたが、彼はそうじゃなかった。辺境伯以外の彼の家族もやたらと夫人に絡んできたらしい。そのことに気がついた先代のウロイカ辺境伯が止めに入っておとなしくなったようだが……」
アルフは難しい顔をして言葉を止めた。
元々、ガンチャたちは恋路を邪魔する人だとして、先代のウロイカ辺境伯をよく思っていなかったのかもしれない。
「ガンチャは自分の父親も鬱陶しくなったのね」
「だと思う。公爵夫人はウロイカ辺境伯を結婚式に呼びたくはなかったから、子息や息女は呼ばないことを決めた。すると」
「先代が暗殺されたのね」
「そうなんだ。その時、夫人はキマコマ公爵に話をしようと思ったそうだが、憶測の話をしてはいけないと思ってやめたそうだ」
「何か証拠をつかんだならまだしも、状況証拠では捕まえることはできないし、キマコマ公爵に迷惑をかけたくないという気持ちもわかるわ」
キマコマ公爵は穏やかで優しい人だから、レイネ様が話せば、ちゃんと調べてくれていたでしょう。そうしてもらえていたら、私は死ななくて良かったのかしら。
そう思った時、ふと思い浮かんだことがあった。
「まさか、レイネ様も私のことを覚えていたりする?」
「ここに来るまでに公爵邸に寄って話を聞いてきたけど、キマコマ公爵夫妻には記憶があった。そして、流星群の日に君のことを願ったそうだ」
「レイネ様は公爵に話をしたのね」
「自分があの時話をしていれば、実家に一人で戻らなければと嘆いていたし、夫であるレタも彼女を一人だけ先に戻らせたことを嘆いていた」
「悪いのはガンチャなのに……! お二人には本当に申し訳ないわ。……というか、実家に帰ってきた理由は何だったの?」
レイネ様たちはお互いを思い合っているみたいだし、離婚するとは思えない。
そう思って尋ねると、アルフはこめかみを押さえて答える。
「彼女の両親にキマコマ公爵邸で一緒に住もうと話をしに来ただけで、レタも仕事が片付いてから来たんだよ。レタは君の葬儀にも僕と夫人が話をしている時に来たよ」
「……その時のガンチャたちの様子はどうだったの?」
「ウロイカ辺境伯の妹は嘘でしょう、とか叫んでいたし、ウロイカ辺境伯は困惑した様子でキマコマ公爵夫人に話しかけたが、レタに一蹴されてたよ」
「……うう。本当に殺され損だわ」
私は頭を抱えたが、すぐに気持ちを切り替える。
「今回はガンチャたちに私の人生を奪われたりしない! まずは婚約破棄よ! それから毒見役に話を聞いて無実なら、彼女を助けなくちゃ」
「僕も手を貸すよ」
「気持ちは嬉しいんだけど、婚約者以外の男性と長く一緒にいるわけにはいかないわ」
「二人きりでなければいいんだろう?」
アルフは微笑んで続ける。
「キマコマ公爵夫人が君と会って話がしたいと言っている。ただ、何の接点もない君と夫人が会うとなると、ウロイカ辺境伯が怪しむだろうし、彼がしゃしゃり出てくる可能性がある」
「あなたの紹介ということにするのね」
「ああ。夫人が高位貴族の茶飲み友達を探していて、レタから僕に連絡があり、僕が君を推薦したことにする」
「レイネ様にはお友達がたくさんいそうだけど」
「彼女は浅く広くなんだ。深く付き合える友人がほしいそうだよ」
ガンチャはレイネ様のことを調べ尽くしているだろうし、そのことは知っていそうね。私が彼女と会うと知れば、どうにかして自分も一緒に行こうとするはず。
でも、アルフの紹介でその場にアルフもいるのなら、遠くから見つめることはあっても、話に混じろうとすることはないでしょう。
「レイネ様とはお話ししてみたかったの。今回のお礼も言いたいわ。それに、ガンチャの本性を引き出せるかもしれないし婚約を破棄する理由もできるかも」
私はアルフにお礼を言って、早速話を進めてもらうことにした。
1,818
あなたにおすすめの小説
捨てられた令嬢と、選ばれなかった未来
鍛高譚
恋愛
「君とは釣り合わない。だから、僕は王女殿下を選ぶ」
婚約者アルバート・ロンズデールに冷たく告げられた瞬間、エミリア・ウィンスレットの人生は暗転した。
王都一の名門公爵令嬢として慎ましくも誠実に彼を支えてきたというのに、待っていたのは無慈悲な婚約破棄――しかも相手は王女クラリッサ。
アルバートと王女の華やかな婚約発表の裏で、エミリアは社交界から冷遇され、"捨てられた哀れな令嬢"と嘲笑される日々が始まる。
だが、彼女は決して屈しない。
「ならば、貴方たちが後悔するような未来を作るわ」
そう決意したエミリアは、ある人物から手を差し伸べられる。
――それは、冷静沈着にして王国の正統な後継者、皇太子アレクシス・フォルベルト。
彼は告げる。「私と共に来い。……君の聡明さと誇りが、この国には必要だ」
冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
婚約者から「君のことを好きになれなかった」と婚約解消されました。えっ、あなたから告白してきたのに?
四折 柊
恋愛
結婚式を三か月後に控えたある日、婚約者である侯爵子息スコットに「セシル……君のことを好きになれなかった」と言われた。私は驚きそして耳を疑った。(だってあなたが私に告白をして婚約を申し込んだのですよ?)
スコットに理由を問えば告白は人違いだったらしい。ショックを受けながらも新しい婚約者を探そうと気持ちを切り替えたセシルに、美貌の公爵子息から縁談の申し込みが来た。引く手数多な人がなぜ私にと思いながら会ってみると、どうやら彼はシスコンのようだ。でも嫌な感じはしない。セシルは彼と婚約することにした――。全40話。
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
悪役令嬢なので最初から愛されないことはわかっていましたが、これはさすがに想定外でした。
ふまさ
恋愛
──こうなることがわかっていれば、はじめから好きになんてならなかったのに。
彩香だったときの思いが、ふと蘇り、フェリシアはくすりと笑ってしまった。
ありがとう、前世の記憶。おかげでわたしは、クライブ殿下を好きにならずにすんだわ。
だからあるのは、呆れと、怒りだけだった。
※『乙女ゲームのヒロインの顔が、わたしから好きな人を奪い続けた幼なじみとそっくりでした』の、ifストーリーです。重なる文章があるため、前作は非公開とさせていただきました。読んでくれたみなさま、ありがとうございました。
婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません
天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。
ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。
屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。
家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。
婚約者から妾になれと言われた私は、婚約を破棄することにしました
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私エミリーは、婚約者のアシェル王子に「妾になれ」と言われてしまう。
アシェルは子爵令嬢のキアラを好きになったようで、妾になる原因を私のせいにしたいようだ。
もうアシェルと関わりたくない私は、妾にならず婚約破棄しようと決意していた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる