【完結】もう二度とあなたを選ぶことはありません

風見ゆうみ

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10 婚約を破棄したいという願い

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 ガンチャから手紙が届いた次の日には、レイネ様が夫であるレタ様と一緒に私の家を訪ねてくれた。
 アルフとレタ様が別室で話をしている間、私はレイネ様と二人で話をすることになった。
 
 応接室に通し、ソファに座るように促す。紺色のドレスに身を包んだレイネ様は亜麻色のストレートの長い髪を背中に垂らし、透き通るような白い肌を持つ八等身の美女だ。
 薄い青色の瞳に見つめられただけで、女性の私がドキドキしてしまうくらいだから、ガンチャなんて一秒もかからないうちに恋に落ちたに違いない。

「レイネ様にお会いできて光栄です。それから、私を助けようとしてくださり、ありがとうございます」
「そんなっ! 私はアリアナ様にお礼を言われるようなことはしておりません! それどころか自分可愛さのために口を閉ざし、あなたの命が奪われてしまいました。誠に申し訳ございません」

 立ち上がったかと思うと、赤いカーペットの上に額をつけようとしたレイネ様を慌てて止める。

「おやめください。公爵夫人がそんなことをしてはいけません!」
「ですが」

 目を潤ませているレイネ様に、優しく話しかける。

「悪いのはウロイカ辺境伯家です。ガンチャが馬鹿なことを考え、家族がそれを助けたんです」
「……家族ぐるみだったのですか」
「ええ。彼の母や妹は目の前で家族が人を殺そうとしているのに笑っていました。人間の皮をかぶった酷い生き物としか思えません」
「そんな……っ、本当に、本当に申し訳ございませんでした」
「レイネ様、あなたが謝ってくださっているのは、今はまだ起こっていない出来事です。もし、どうしても気にするとおっしゃるのなであれば、最悪な未来が訪れないように力を貸していただけませんか」

 私にしてみれば、私にこの人生を与えるきっかけを作ってくれただけで十分だ。でも、それではきっと納得しない。そう思ったから提案してみると、レイネ様は私の両手を握ってうなずく。

「もちろんです。夫もアリアナ様に協力すると言っていましたので、望むことをおっしゃってください」
「お気持ちだけで本当に十分なのですが、それでは納得なさらないですよね」
「……はい」

 レイネ様は深刻そうな表情で首を縦に振った。

「では、辛いことを思い出させてしまうかもしれませんが、ガンチャに何をされたのか詳しく教えていただけませんか」
「……かまいませんが、何かあるのでしょうか」
「今回、結婚式は回避できましたが、婚約の破棄までには至っていないのです」
「それは、アルフレッド様からお聞きしましたわ」
「レイネ様はガンチャに付きまとわれて怖い思いや嫌な思いをしたのですよね?」
「……はい」

 私とレイネ様は手を握りあったまま、ソファに移動し、並んで腰掛ける。

「レイネ様がガンチャにされた嫌なことを、全て私が彼にやってみようと思います」
「そ、そんなことをして大丈夫なのですか?」
「彼は自分かやっていたことだと気づくかはわかりませんが、私のことを鬱陶しく思うのは確実です。そうしたら、婚約の破棄もしやすくなるかと思うのです。確実な手とは言えませんが、彼に嫌われて冷たい態度を取られるようになったら婚約を破棄します」

 ガンチャは世間体を気にするから、彼からの婚約の破棄は難しい。なら、世間が納得する形で私から婚約の破棄をする。
 同時に先代のウロイカ辺境伯の事件についても暴けるなら暴いてしまい、ロビンたちにも、相応の罰を受けてもらうのだ。

 すると、レイネ様が眉尻を下げて口を開く。

「あの、アリアナ様、嫌なことで思い出したのですが、葬儀のあと、ウロイカ辺境伯が私たちの泊まっている宿屋に訪ねてきたのです。その時のことをお話ししてもよろしいでしょうか」
「ご迷惑でなければお願いいたします」

 頭を下げると、レイネ様はあの時の自分は冷静ではなかったと前置きしてから、詳しい話を始めてくれたのだった。
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