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11 彼らの願いは叶わない ②(アリアナ死後〜流星群の日まで)
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※ アリアナ死後のため三人称視点です。
アリアナの葬儀の日の夜。ウロイカ辺境伯領の繁華街にある高級宿は満室になっていた。夜も遅くなり、ロビーを行き交う人がいなくなった頃、フードを目深にかぶったガンチャがやって来た。
フロントスタッフが今日は満室だと伝えようとした時、ガンチャはカウンターに近づき「キマコマ公爵夫人のレイネ様に話がある」と言った。
フロントスタッフは困惑しつつも、笑顔で応対する。
「申し訳ございませんが、当宿に該当のお客様が宿泊してくださっているかは個人情報ですのでお伝えできません」
時刻は夜の10時で約束もなしに誰かの元に訪れる時間ではないことも、やんわり伝えると、ガンチャは怒り始める。
「ここにいるのか聞いているんじゃない! ここに泊まっていると知っているんだ!」
「お約束をされているのですか?」
事前にレイネから話を聞いているのであればスタッフも対応するが、特に何も聞いていない。
どうしてこんな男を警備兵は中に通したのかと疑問に思っていると、ガンチャがフードを脱いだ。
「この宿は誰の領地内にあると思っているんだ!? 理由は何でもいいからここに呼び出せ! 彼女は俺を待っているんだ!」
「ウロイカ辺境伯でしたか。これは失礼いたしました。無礼をお許しください」
フロントスタッフが深々と頭を下げると、ガンチャは急かす。
「早く彼女を呼んでくれ! できれば、キマコマ公爵にバレないようにな」
「申し訳ございません。キマコマ公爵夫人がここに泊まっているかどうか、お伝えすることはできないのです」
「妻が亡くなったことは知っているだろう?」
先ほどまで激昂していたというのに、急にガンチャは眉尻を下げて続ける。
「妻が……、妻が殺されて俺はショックで……、辛くて一人ではいられないんだ! なあ、こんな俺をレイネ様が見捨てたりするわけないだろう?」
レイネの噂は平民の間でも有名だ。ガンチャの応対をしているフロントスタッフも彼女の噂は何度も耳にしていた。
(レイネ様はとてもお優しい方だと聞いたことがある。こんな遅い時間でもお会いになるだろうか。いや、でもさすがに非常識だろう。しかも妻を亡くしたからといって、他の女性に助けを求めるのもどうかと思うのだが)
フロントスタッフはそう考えたあと、哀悼の意を捧げる。
「この度はご愁傷さまです。奥様のご冥福を心よりお祈り申し上げます」
「そう思うならなんとかしてくれ! 妻はきっとこんな状態の俺を心配している! 幸せになることが妻への弔いなんだ!」
泣き崩れるガンチャを見て、フロントスタッフが途方に暮れた時、ロビーに二人の男性が現れた。慌ててガンチャがフードを被るも時すでに遅しだった。
「ウロイカ辺境伯、こんな時間にこんな所で何をしているんだ?」
話しかけたのはアルフだった。
「いや、えっと……その、一人でいることが辛くて、友人を訪ねてきたのですが……」
アルフが現れたことにも驚きだったが、彼と一緒に現れた男性を見て、ガンチャは動揺していた。
ガンチャが現れたことは、アルフだけでなく、他の貴族の護衛騎士がそれぞれの主に伝えていた。その中にもちろんキマコマ公爵家の騎士もいた。
「私の妻の名を出していたようだが、こんな夜更けに私の妻に何の用がある? 妻はあなたと友人ではないと言っているんだがな」
いつもならば温和な表情しか見せないレタから、殺気を帯びた目を向けられたガンチャは、体を震わせた。すぐに目を逸らしてレイネの姿を探したが、ガンチャの視界に入ることはなかった。
ガンチャから見えない場所には、レイネが身を潜めているのだが、この時のガンチャは気づいていなかった。
アリアナの葬儀の日の夜。ウロイカ辺境伯領の繁華街にある高級宿は満室になっていた。夜も遅くなり、ロビーを行き交う人がいなくなった頃、フードを目深にかぶったガンチャがやって来た。
フロントスタッフが今日は満室だと伝えようとした時、ガンチャはカウンターに近づき「キマコマ公爵夫人のレイネ様に話がある」と言った。
フロントスタッフは困惑しつつも、笑顔で応対する。
「申し訳ございませんが、当宿に該当のお客様が宿泊してくださっているかは個人情報ですのでお伝えできません」
時刻は夜の10時で約束もなしに誰かの元に訪れる時間ではないことも、やんわり伝えると、ガンチャは怒り始める。
「ここにいるのか聞いているんじゃない! ここに泊まっていると知っているんだ!」
「お約束をされているのですか?」
事前にレイネから話を聞いているのであればスタッフも対応するが、特に何も聞いていない。
どうしてこんな男を警備兵は中に通したのかと疑問に思っていると、ガンチャがフードを脱いだ。
「この宿は誰の領地内にあると思っているんだ!? 理由は何でもいいからここに呼び出せ! 彼女は俺を待っているんだ!」
「ウロイカ辺境伯でしたか。これは失礼いたしました。無礼をお許しください」
フロントスタッフが深々と頭を下げると、ガンチャは急かす。
「早く彼女を呼んでくれ! できれば、キマコマ公爵にバレないようにな」
「申し訳ございません。キマコマ公爵夫人がここに泊まっているかどうか、お伝えすることはできないのです」
「妻が亡くなったことは知っているだろう?」
先ほどまで激昂していたというのに、急にガンチャは眉尻を下げて続ける。
「妻が……、妻が殺されて俺はショックで……、辛くて一人ではいられないんだ! なあ、こんな俺をレイネ様が見捨てたりするわけないだろう?」
レイネの噂は平民の間でも有名だ。ガンチャの応対をしているフロントスタッフも彼女の噂は何度も耳にしていた。
(レイネ様はとてもお優しい方だと聞いたことがある。こんな遅い時間でもお会いになるだろうか。いや、でもさすがに非常識だろう。しかも妻を亡くしたからといって、他の女性に助けを求めるのもどうかと思うのだが)
フロントスタッフはそう考えたあと、哀悼の意を捧げる。
「この度はご愁傷さまです。奥様のご冥福を心よりお祈り申し上げます」
「そう思うならなんとかしてくれ! 妻はきっとこんな状態の俺を心配している! 幸せになることが妻への弔いなんだ!」
泣き崩れるガンチャを見て、フロントスタッフが途方に暮れた時、ロビーに二人の男性が現れた。慌ててガンチャがフードを被るも時すでに遅しだった。
「ウロイカ辺境伯、こんな時間にこんな所で何をしているんだ?」
話しかけたのはアルフだった。
「いや、えっと……その、一人でいることが辛くて、友人を訪ねてきたのですが……」
アルフが現れたことにも驚きだったが、彼と一緒に現れた男性を見て、ガンチャは動揺していた。
ガンチャが現れたことは、アルフだけでなく、他の貴族の護衛騎士がそれぞれの主に伝えていた。その中にもちろんキマコマ公爵家の騎士もいた。
「私の妻の名を出していたようだが、こんな夜更けに私の妻に何の用がある? 妻はあなたと友人ではないと言っているんだがな」
いつもならば温和な表情しか見せないレタから、殺気を帯びた目を向けられたガンチャは、体を震わせた。すぐに目を逸らしてレイネの姿を探したが、ガンチャの視界に入ることはなかった。
ガンチャから見えない場所には、レイネが身を潜めているのだが、この時のガンチャは気づいていなかった。
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