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16 それぞれの願いが叶ったら
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「どうかしたの? もしかして、私が婚約を破棄されることを嫌がると思ったの?」
首を傾げて尋ねると、ガンチャは目を瞬かせてから鼻で笑う。
「それはそうだろう。君と俺との婚約は君の望みでもあったし、君が俺を好きなことは周知の事実だ」
「そうね。本当に好きだったわ。昔のあなたは正義感が強くて弱い人には優しかったから」
子供の頃の私にとって、ガンチャはおとぎ話に出てくるヒーローに見えた。だけど、成長してみたらどうなの? 可愛い妹に背中を押されているからって好きになった人を、相手が嫌がっているのに追いかけ回して、他の人に注意される。そして、注意してくれな人を自分の邪魔をする人間とみなして排除する。
自分の家族の命まで簡単に奪くような人がヒーローなわけがない。
少なくとも、私にとって彼は悪役だ。
ロビンが不機嫌そうな顔で会話に入ってくる。
「アリアナさん、まるで今のお兄様がそうではないような言い方をするのね」
「そうよ。レイネ様も同じように思っているわ」
「……レイネ様が? そんなわけないでしょう。レイネ様とお兄様は仲が良いのよ? ですわよね、お兄様?」
「……あ、ああ」
普段ならば満面の笑みを浮かべて頷いていたガンチャだが、今日は違った。目を泳がせて歯切れの悪い返事をしたのは、私やロビンは騙せても、アルフは無理だということがわかっているからでしょう。
まあ、今の私も騙されないけどね!
「で、どうするの? 婚約を破棄するの?」
「アリアナが馬鹿な考えを持たなければ、そんなことをしなくてもいいんだぞ!」
「やましいことがないなら調べてもいいでしょう? あなたの無実の証明にもなるわよ」
「犯人はわかっていないんだ。調べていることがわかったら、君の命が危険にさらされるかもしれないぞ」
「それは覚悟の上よ」
ガンチャは舌打ちをすると、私の顔を指さして叫ぶ。
「そんなに後悔したいなら後悔させてやる! 今ここで、ガンチャ・ウロイカはアリアナ・スサウとの婚約を破棄することを宣言する! 慰謝料については改めて君の父に連絡させてもらうからな!」
「承知いたしました」
私は深々と頭を下げたあと、ロビンとガンチャに笑いかける。
「後悔どころか清々しい気分だわ。慰謝料については私が払うのか、ウロイカ家が払うのかの判断は先代のウロイカ辺境伯の件が片付いてからにしましょう」
「父を殺した犯人に、君が殺されることになっても知らないぞ」
「殺されるつもりはないわ」
私が素早く言い返すと、ガンチャが反論しようとしたが、アルフがそれを遮る。
「アリアナのことは、今回は僕が守る」
アルフは巻き戻る前の私を助けられなかったことを本当に悔いてくれているみたい。アルフは何も悪くないのに……。
ガンチャはアルフを訝しげな顔で見つめたあと、私に視線を移す。
「アリアナ、君はアルフレッド様と浮気していたのか?」
「そんなわけないでしょう」
「ウロイカ辺境伯、冗談でも公爵令息の名前を出していい話題じゃない」
アルフに睨まれたガンチャは、びくりと体を震わせ「申し訳ございませんでした」と頭を垂れた。
「婚約の破棄については僕が証人だ。アリアナ、家に帰ってスサウ辺境伯に話をしたらどうかな」
「ありがとう。そうするわ」
私とアルフが歩き出すと、ガンチャが「本当にいいのか? アリアナは俺のことが好きなんだろう!?」などと、大きな声で問いかけてきた。
すんなり終わってくれたらいいのに、どうしてしつこいの?
「もうあなたのことは好きじゃないの。さようならウロイカ辺境伯。あ、あなたにはレイネ様への接近禁止命令を出してもらうから楽しみにしておいてね」
「ど、どうしてそんなことになるんだよ!?」
ガンチャがロビンと共に追いかけてきたが、アルフに圧をかけられ、私たちから2メートル程離れたところで立ち尽くす。そうしている間に、護衛騎士が店内に入ってきて、ガンチャたちが動けないように見張ってくれた。
さあ、ひとまず婚約の破棄はできたわ! あとは、先代の辺境伯の件の真実を明らかにしないと!
アルフと共に乗り込んだ馬車の中で気合を入れていると、アルフが微笑む。
「ガンチャの奴、接近禁止命令を出してもらうと聞いて、かなり動揺していたね」
「彼にとってレイネ様は生きがいだからね。その分、馬鹿な行為をしないように見張っておかないといけないわ」
「そうだね。巻き戻る前も彼は馬鹿なことをしようとしたから、自由にさせないほうがいいね」
「……ガンチャは何をしたの?」
ガンチャがどうなったかはわかる範囲で聞いている。だけど、詳しくは聞けていなかったから尋ねると、アルフは流星群の前日の話を始めたのだった。
首を傾げて尋ねると、ガンチャは目を瞬かせてから鼻で笑う。
「それはそうだろう。君と俺との婚約は君の望みでもあったし、君が俺を好きなことは周知の事実だ」
「そうね。本当に好きだったわ。昔のあなたは正義感が強くて弱い人には優しかったから」
子供の頃の私にとって、ガンチャはおとぎ話に出てくるヒーローに見えた。だけど、成長してみたらどうなの? 可愛い妹に背中を押されているからって好きになった人を、相手が嫌がっているのに追いかけ回して、他の人に注意される。そして、注意してくれな人を自分の邪魔をする人間とみなして排除する。
自分の家族の命まで簡単に奪くような人がヒーローなわけがない。
少なくとも、私にとって彼は悪役だ。
ロビンが不機嫌そうな顔で会話に入ってくる。
「アリアナさん、まるで今のお兄様がそうではないような言い方をするのね」
「そうよ。レイネ様も同じように思っているわ」
「……レイネ様が? そんなわけないでしょう。レイネ様とお兄様は仲が良いのよ? ですわよね、お兄様?」
「……あ、ああ」
普段ならば満面の笑みを浮かべて頷いていたガンチャだが、今日は違った。目を泳がせて歯切れの悪い返事をしたのは、私やロビンは騙せても、アルフは無理だということがわかっているからでしょう。
まあ、今の私も騙されないけどね!
「で、どうするの? 婚約を破棄するの?」
「アリアナが馬鹿な考えを持たなければ、そんなことをしなくてもいいんだぞ!」
「やましいことがないなら調べてもいいでしょう? あなたの無実の証明にもなるわよ」
「犯人はわかっていないんだ。調べていることがわかったら、君の命が危険にさらされるかもしれないぞ」
「それは覚悟の上よ」
ガンチャは舌打ちをすると、私の顔を指さして叫ぶ。
「そんなに後悔したいなら後悔させてやる! 今ここで、ガンチャ・ウロイカはアリアナ・スサウとの婚約を破棄することを宣言する! 慰謝料については改めて君の父に連絡させてもらうからな!」
「承知いたしました」
私は深々と頭を下げたあと、ロビンとガンチャに笑いかける。
「後悔どころか清々しい気分だわ。慰謝料については私が払うのか、ウロイカ家が払うのかの判断は先代のウロイカ辺境伯の件が片付いてからにしましょう」
「父を殺した犯人に、君が殺されることになっても知らないぞ」
「殺されるつもりはないわ」
私が素早く言い返すと、ガンチャが反論しようとしたが、アルフがそれを遮る。
「アリアナのことは、今回は僕が守る」
アルフは巻き戻る前の私を助けられなかったことを本当に悔いてくれているみたい。アルフは何も悪くないのに……。
ガンチャはアルフを訝しげな顔で見つめたあと、私に視線を移す。
「アリアナ、君はアルフレッド様と浮気していたのか?」
「そんなわけないでしょう」
「ウロイカ辺境伯、冗談でも公爵令息の名前を出していい話題じゃない」
アルフに睨まれたガンチャは、びくりと体を震わせ「申し訳ございませんでした」と頭を垂れた。
「婚約の破棄については僕が証人だ。アリアナ、家に帰ってスサウ辺境伯に話をしたらどうかな」
「ありがとう。そうするわ」
私とアルフが歩き出すと、ガンチャが「本当にいいのか? アリアナは俺のことが好きなんだろう!?」などと、大きな声で問いかけてきた。
すんなり終わってくれたらいいのに、どうしてしつこいの?
「もうあなたのことは好きじゃないの。さようならウロイカ辺境伯。あ、あなたにはレイネ様への接近禁止命令を出してもらうから楽しみにしておいてね」
「ど、どうしてそんなことになるんだよ!?」
ガンチャがロビンと共に追いかけてきたが、アルフに圧をかけられ、私たちから2メートル程離れたところで立ち尽くす。そうしている間に、護衛騎士が店内に入ってきて、ガンチャたちが動けないように見張ってくれた。
さあ、ひとまず婚約の破棄はできたわ! あとは、先代の辺境伯の件の真実を明らかにしないと!
アルフと共に乗り込んだ馬車の中で気合を入れていると、アルフが微笑む。
「ガンチャの奴、接近禁止命令を出してもらうと聞いて、かなり動揺していたね」
「彼にとってレイネ様は生きがいだからね。その分、馬鹿な行為をしないように見張っておかないといけないわ」
「そうだね。巻き戻る前も彼は馬鹿なことをしようとしたから、自由にさせないほうがいいね」
「……ガンチャは何をしたの?」
ガンチャがどうなったかはわかる範囲で聞いている。だけど、詳しくは聞けていなかったから尋ねると、アルフは流星群の前日の話を始めたのだった。
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