18 / 28
18 彼らの願いは叶わない ⑤ (アリアナ死後〜流星群の日まで)
しおりを挟む
アルフと騎士たちが通されたのは、ソファとローテーブルしかない、簡素な応接室だった。座らずに待っていると、すぐにガンチャたちがやって来て、騎士にではなくアルフに訴える。
「使用人が自首したでしょう! どうして私たちが捕まらなければならないのですか!」
「その使用人が君たちに金で頼まれたと話をした」
「そ……、そんな、嘘に決まっていますわ!」
ロビンが否定すると、アルフは失笑する。
「アリアナの爪には血がついていた。彼女自身に傷がなかったから抵抗した時に、相手につけた傷からの血だと考えられている。けれど、使用人はまったく怪我をしていない。だから、おかしいと思っていた」
アリアナにつけられた傷はおしろいで隠しているため、よく見ないとわからなくなっている。ガンチャは大丈夫だと自分に言い聞かせて、アルフに反論する。
「僕たちにだって傷はありませんよ」
「そうかな。最近になってウロイカ辺境伯が化粧を始めたとメイドたちが言っていたんだ。それは傷を隠すためなんじゃないのかな」
「ち、違います」
「詳しい話は騎士にしてもらえるかな。無実ならすぐに釈放してもらえるよ」
「僕たちの言葉よりも使用人の言葉を信じると言うんですか!?」
ガンチャが怒りをあらわにしたが、アルフは気にする様子もなくうなずく。
「使用人は金をもらって君たちの身代わりになることにしたようだけど、真実を話し、それが納得できるものであれば僕がそれ以上の額を出すと言ったら、証拠になるものを提出してくれた」
アルフは上着のポケットから四つ折りにされた白い紙を取り出し、それが何かわかるようにガンチャたちの目の前に突きつける。
手書きの領収書で、平民ならば10年以上は贅沢に生きていけるほどの金額を、例の使用人がガンチャから受け取ったことになっていた。
「そ……、それは。その」
「身代わりになってもらうから、お金を渡したんだろう? それ以外に渡す理由があるなら教えてほしい」
「いや……、その」
ガンチャが言い訳を考える時間を作るために、ロビンがアルフに話しかける。
「お兄様は私たちとずっと一緒にいましたわ! お兄様がアリアナさんを殺したとおっしゃるのであれば、私たちの目の前でということになりますのよ? そんな馬鹿なことがあるわけないではないですか!」
「それがあるんだよね」
アルフが一緒に連れてきていた騎士に目を向けると、若い騎士はロビンに話し始める。
「メイドや兵士たちは、被害者が殺された時間帯にウロイカ辺境伯から、庭には近づかないように命令されていたと証言しています。そのため、容疑者も近づいてはいないのです。そのことは多くの使用人が認めています。そして、その時間にあなたたちが中庭を歩いているのを多くの使用人が屋敷の中から目撃しているんですよ」
この話を聞いたガンチャは、他の使用人たちにも金を渡しておくべきだったと後悔した。
金を渡した使用人が裏切るなどと夢にも思っていなかった。男の家族に病気の子供がいるため、その子のために金が必要だったから、裏切るはずがないと思い込んでいた。
だが、辺境伯家よりも公爵家のほうが財力は勝っていた。より良い条件を提示され、使用人は寝返ったのだ。
「とにかく言い訳は留置所で聞くよ」
アルフが笑顔で言うと、後ろに控えていた騎士たちがガンチャだけでなく、ロビンたちの腕も掴んだ。
「放せ! やめろ!」
「嫌よ、放して! 私は何もしていないわ! お母様、お兄様、助けて!」
「そうよ! 私とロビンはアリアナさんの死にかかわっていないわ!」
必死に抵抗した三人だったが、騎士の手によって屋敷の外に連れ出されたのだった。
「使用人が自首したでしょう! どうして私たちが捕まらなければならないのですか!」
「その使用人が君たちに金で頼まれたと話をした」
「そ……、そんな、嘘に決まっていますわ!」
ロビンが否定すると、アルフは失笑する。
「アリアナの爪には血がついていた。彼女自身に傷がなかったから抵抗した時に、相手につけた傷からの血だと考えられている。けれど、使用人はまったく怪我をしていない。だから、おかしいと思っていた」
アリアナにつけられた傷はおしろいで隠しているため、よく見ないとわからなくなっている。ガンチャは大丈夫だと自分に言い聞かせて、アルフに反論する。
「僕たちにだって傷はありませんよ」
「そうかな。最近になってウロイカ辺境伯が化粧を始めたとメイドたちが言っていたんだ。それは傷を隠すためなんじゃないのかな」
「ち、違います」
「詳しい話は騎士にしてもらえるかな。無実ならすぐに釈放してもらえるよ」
「僕たちの言葉よりも使用人の言葉を信じると言うんですか!?」
ガンチャが怒りをあらわにしたが、アルフは気にする様子もなくうなずく。
「使用人は金をもらって君たちの身代わりになることにしたようだけど、真実を話し、それが納得できるものであれば僕がそれ以上の額を出すと言ったら、証拠になるものを提出してくれた」
アルフは上着のポケットから四つ折りにされた白い紙を取り出し、それが何かわかるようにガンチャたちの目の前に突きつける。
手書きの領収書で、平民ならば10年以上は贅沢に生きていけるほどの金額を、例の使用人がガンチャから受け取ったことになっていた。
「そ……、それは。その」
「身代わりになってもらうから、お金を渡したんだろう? それ以外に渡す理由があるなら教えてほしい」
「いや……、その」
ガンチャが言い訳を考える時間を作るために、ロビンがアルフに話しかける。
「お兄様は私たちとずっと一緒にいましたわ! お兄様がアリアナさんを殺したとおっしゃるのであれば、私たちの目の前でということになりますのよ? そんな馬鹿なことがあるわけないではないですか!」
「それがあるんだよね」
アルフが一緒に連れてきていた騎士に目を向けると、若い騎士はロビンに話し始める。
「メイドや兵士たちは、被害者が殺された時間帯にウロイカ辺境伯から、庭には近づかないように命令されていたと証言しています。そのため、容疑者も近づいてはいないのです。そのことは多くの使用人が認めています。そして、その時間にあなたたちが中庭を歩いているのを多くの使用人が屋敷の中から目撃しているんですよ」
この話を聞いたガンチャは、他の使用人たちにも金を渡しておくべきだったと後悔した。
金を渡した使用人が裏切るなどと夢にも思っていなかった。男の家族に病気の子供がいるため、その子のために金が必要だったから、裏切るはずがないと思い込んでいた。
だが、辺境伯家よりも公爵家のほうが財力は勝っていた。より良い条件を提示され、使用人は寝返ったのだ。
「とにかく言い訳は留置所で聞くよ」
アルフが笑顔で言うと、後ろに控えていた騎士たちがガンチャだけでなく、ロビンたちの腕も掴んだ。
「放せ! やめろ!」
「嫌よ、放して! 私は何もしていないわ! お母様、お兄様、助けて!」
「そうよ! 私とロビンはアリアナさんの死にかかわっていないわ!」
必死に抵抗した三人だったが、騎士の手によって屋敷の外に連れ出されたのだった。
1,932
あなたにおすすめの小説
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
婚約破棄されたので公爵令嬢やめます〜私を見下した殿下と元婚約者が膝をつく頃、愛を囁くのは冷酷公爵でした〜
nacat
恋愛
婚約者に裏切られ、蔑まれ、全てを失った公爵令嬢リリアナ。
「あなたのような女、誰が愛すると?」そう言い放った王太子と元友人に嘲られても、彼女は涙を見せなかった。
だが、冷たく美しい隣国の公爵セドリックと出会った瞬間、運命は静かに動き出す。
冷酷と噂された男の腕のなかで、彼女は再び自分を取り戻していく。
そして――彼女を捨てた者たちは、彼女の眩い幸福の前に膝をつく。
「これは、ざまぁを通り越して愛された令嬢の物語。」
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる