【完結】あなたの愛なんて信じない

風見ゆうみ

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3   姉の謝罪

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「……お姉様は自分たちが大変なことをしてしまったという自覚はあるんですか」

 自分の声が震えているのがわかった。

 相手がお姉様じゃなかったら、我を忘れて掴みかかっていたかもしれない。
 このお腹の大きさで両親が気が付かないはずはない。辺境伯家で私を出迎えたということは、お姉様は実家から追い出されたのかしら。
 サフレン辺境伯家は息子の不祥事でもあるし、妊婦を放り出すわけにはいかないから面倒を見ているのかもしれない。

 何にしても、どうして誰も連絡してくれなかったんだろう。

 お姉様の婚約者の第二王子にはなんと言っているのか気になるわ。
 お姉様は成人しているけど、両親にまったく責任がないわけではないということで罰を受けている可能性がある。もしかしたら、それで連絡ができなかった?
 いや、違うか。こんな話を聞いたら、任務に集中できないから、私のために話さなかったのかもしれない。

 お姉様が話し出さないので色々と考えていると、お姉様は涙をハンカチで拭き、私を見つめて話し始める。

「……悪いことをしたという自覚はしているわ。だけど、私はずっとレイロが好きだった。あなたのことがずっと羨ましかったの」
「そんなことを言われても困ります。それよりもあなたの婚約者だった第二王子殿下には、このことをなんと伝えているんですか」
「それが……」

 お姉様はハンカチで両目を押さえながら話す。

「第二王子殿下はかなり怒っているの。それは第二王子殿下だけじゃない。国王陛下もよ。娘を管理できなかったということで、お父様は城の牢に入れられているの」
「……はい?」
「牢に入れられてはいるけれど、期間は決まっているから安心して大丈夫よ」
「安心!? 大丈夫!? 何を馬鹿なことを言っているんですか! お父様が牢屋に入れられることになったのは誰のせいだと思ってるんですか!」
「ごめんなさい、本当にごめんなさい」

 お姉様はソファに座り、嗚咽をあげて泣く。

 やっぱり、お母様は私に心配をかけさせまいと、わざと連絡してこなかったんだわ。魔物と命がけで戦っている時に、こんな話を聞かされたら集中どころじゃないもの。お父様がどうなっているのか確認しにいかなくちゃ。

 その前に、お姉様にどうしても聞いておきたいことがあった。

「お姉様、レイロと愛し合っているという話は本当なんですか」
「……そうよ」

 間が空いたから、嘘の可能性が高い。お姉様とは昔から仲が良かったこともあり、嘘をつく時の癖は知っている。
 この嘘は、お姉様がレイロを愛していないのか、レイロがお姉様を愛していないのか、どちらかは確認してみなければわからない。

「レイロと話をさせてもらいますが、その前にお父様がどんな状態か確認してきますので失礼します」
「待って!」

 談話室から出ていこうとすると、お姉様が引き止めるので足を止めた。

「……まだ何か御用ですか」
「アイミーはレイロとのこと、どうするつもりなの?」
「お姉様はどうしてほしいんですか」
「わかるでしょう。レイロと別れてほしいの。私たちのためじゃなく、お腹にいる子供のために」

 お腹の子供に罪はなく、悪いのはお姉様とレイロだ。私が二人を許せるはずがないし、お姉様のお腹の子供のためにも離婚という選択肢しかないだろう。

「言われなくても別れるつもりですのでご心配なく。あ、もう一つお聞きしたいのですが、よろしいでしょうか」
「……何かしら」
「魅了魔法を使ったわけではないですよね」
「使っていないわ。私には使えないもの」
「使えないことはないでしょう」

 魅了魔法はかなりの魔力を消費するので使える人間は少ない。
 でも、お姉様なら可能だ。
 魅了魔法を使うことは禁忌と言われており、使ったことがわかれば、魔法が使えなくなる檻の中で一生を終えることになる。
 このことは学園に通っている時、耳が痛くなるくらいに先生から聞かされた話だ。だから私は、そんな魔法を使おうだなんて一度も思ったことはなかったが、今のお姉様なら使いそうな気がして聞いてみたけれど、憤慨した様子で言い返してくる。

「違うわ。魅了魔法なんかじゃない。私はあなたほど優秀じゃないのよ」
「そうですか」

 嘘はついていなさそうね。
 ということは、レイロは自分の意思でお姉様と関係を持ったことになる。
 妻や可愛い弟が命がけで戦っている時に浮気していただなんて、本当に最低だ。

「ごめんなさい。アイミー、許して」
「許すわけがないでしょう」

 そう吐き捨てて部屋を出ると、怒りに任せて乱暴に扉を閉めた。
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