2 / 52
2 姉と夫の裏切り
しおりを挟む
出征してから10日以上が経ち、毎日のルーティンに慣れてきた日のこと。
朝食後、白いテントの中に集まっていたのは、今日の昼勤チーム以外の隊長と副隊長、そして、それぞれのチームの後方支援のリーダーだ。
いつもなら、夜勤明けは会議に参加しなくても良いのだが、最近、魔物の動きが激しくなっているものだから、夜勤組のエルたちの意見も聞きたいと言われて参加していた。
「……ぐぅ」
隣で変な声が聞こえてきたので目を向けると、真っ黒な物体が視界に飛び込んできた。
「ちょっと、エル、起きて」
すぐにその黒いものが何だかわかった私は、下を向いて眠りこけているエルに小声で話しかけた。
「んが……」
返ってきたのは小さないびき、もしくは寝息だった。魔物が活発に動くのは夜だけれど、夜行性ではない魔物もいるため、昼勤と夜勤の二交代制になっている。
私も含むエルの部隊は夜勤組なので、いつもはこの時間なら眠りについている。だから、眠いのはわかる。
……わかるけど、幹部会議で眠るのはやめてほしい。こんな緊張感のある会議で眠っているのはエルだけなんじゃないの?
そう思って周りを見回すと、そうでもなかった。エルと共に夜勤だった他のチームの隊長も、腕を組んで船を漕いでいる。
瞼に目を書いて顔を上げさせたら、二人共、起きているように見えるかしら。
相談しようと思って後ろにいる副隊長を見ると、真剣な表情で話を聞いていた。
今、そんな話をしたら怒られそうね。
エルたちを起こすことは諦めて、私は前を向いて話に集中する。
私はエルの部隊の後方支援のリーダーだ。エルが眠っているのなら、私がしっかり話を聞いておけばいいのよ。エルが意見を求められたら、すぐに答えられるようにしないと。
黒板に司令官補佐が戦略を書いていくので、それをノートに書き写していく。
後方支援のメンバーは一人を除いて、私と同じようにノートにペンを走らせ、騎兵隊の隊長たちは頭に叩き込むかのように黒板を見つめていた。
話が一段落ついたところで、司令官補佐が手を止めて、こちらに顔を向けた。
やばいわ。
「ちょっと、エル、起きて」
エルを肘でつつくと「んあ」という間抜けな声と共に垂れていた頭を上げた。
「ああ、いいんだ。昨日は大変だったみたいだから寝かせてやってくれ」
これは怒られると思ったが、司令官補佐は苦笑してそう言った。司令官も騎兵隊を統括する団長も口元を緩めているから、お咎めなしらしい。
「……ごめん。団長はどんな顔してる?」
目をこすりながら聞いてくるエルに小声で答える。
「目をこすっちゃ駄目よ。目に傷がついたらどうするの。団長は怒ってないし、司令官補佐が寝てて良いと言ってくれたから寝てて良いわ」
「んー」
長テーブルに肘をつき、エルは私に話しかけてくる。
「俺、どれくらい寝てた?」
「私が気がついたのはさっき。エル、悪いけど、私は話を聞かなくちゃいけないから集中させてくれない?」
「……フェインが聞いてるだろ」
「フェインもあなたの斜め後ろで夢の中よ」
フェインというのはエルのチームの後方支援の副リーダーで、私の同僚だ。夜は彼が率先して担当してくれるから、仮眠中の私が起こされたことはほとんどない。
「夜中ずっと起きてるもんな」
「交代するから起こしてって言ってるのに起こしてくれないのよ」
眉根を寄せて言うと、エルはふわぁと大きなあくびをする。
「本当に大変な時こそ、アイミーに頑張ってもらわないといけないから起こさないんだろ。フェインを責めるなよ。大体、アイミーは俺たちが寝ている昼の間は動き回ってるんだから気にしなくていい」
「フェインのことは責めるつもりもないし感謝してる。それから私が昼に頑張るのは夜に寝てるから」
「そう言われればそうか」
エルは子供みたいな笑みを見せて頷いた。
整った顔立ちのエルは、女性に人気があってもおかしくはない。それなのに、彼に恋人どころか婚約者もいないのは、夜型で昼はいつも眠そうにしているからだ。昼に令嬢と一緒にいても、眠気と戦うのに必死で退屈しているような態度に見えてしまう。
そのせいで婚約を何度も解消されている。
普段のエルは眠気もありふわふわした感じだけど、戦場で覚醒した時の彼は畏怖の念を抱くらいに強い。だからこそ、最年少で騎兵隊の隊長に選ばれ、年上の部下たちが文句を言わずに彼に従うのだと思う。
「エローニの森で戦闘が激化しているとの情報が入っている」
司令官補佐の声が聞こえ、私とエルは話に集中する。
エローニの森はレイロと私の姉のエイミーのいる部隊が応戦している場所でもあり、私たちがいる宿営地とはかなり離れている。
私とレイロは夫婦だということで、チームがバラバラにされていた。
どちらかに何かあった時、任務に支障が出る可能性があると言われ、レイロに何かあれば冷静でいられる自信がない私は、その判断に従った。
でも、離れさせられた理由は正直言うと納得がいっていない部分もある。
エルはレイロの大事な弟でもあり、私の大事な友人でもある。
エルやエルの部下たち、私の部下たちに何かあっても冷静でいられる自信はない。悲しい思いはしたくないから、エルたちが怪我をしても絶対に私が助ける。
そう考えた時だった。
「大変です! エローニの森から救援を求める狼煙が上がっています!」
伝令係からの報告に、その場にいた全員が立ち上がると騎士団長が叫ぶ。
「第3騎兵隊から第6騎兵隊以外は準備ができ次第、エローニの森に向かえ!」
私たちの部隊は第3騎兵隊だ。夜勤明けということで、私とエルは現地に向かうことは許されなかった。
*****
夕方、私とエルの元に第7騎兵隊の副隊長がやって来て言った。
「レイロ隊長は大怪我を負った。対応が遅かったからなのか、回復魔法の効き目が悪いので離脱することになった」
「命に別状はないんですね?」
「心配はしなくていい。戦えないほどの傷なだけで命に別状はない」
「良かった」
安心して胸を撫で下ろすと、彼はこう付け加えた。
「エイミー様も付き添いで帰ることになった。その分、アイミーの負担が増えるかもしれない」
「負担なんかじゃないわ。それよりも他の皆はどうなの?」
回復魔法を使える人間は少ない。レイロたちの見送りに行けないのは辛いけれど、離脱する人よりも現地に残る負傷者を優先することにした。
その時の私は、お姉様がレイロと一緒に帰ることになった理由は、道中で負傷兵の状態が悪くなった時に、お姉様の回復魔法が必要なのだろうと思い込んでいた。
十日後、魔物との戦いが激化したため、私には派兵期間の延長命令が出た。
それを聞いたエルが自分の期間も延長したため、同じ部隊の多くの人がエルと私を残して帰れないと言って一緒に残ってくれた。
それから約180日後、エルと共に私はサフレン辺境伯家に帰還した。
再会を喜び合うはずだったレイロは外出していて、彼の代わりに私を待ってくれていたお姉様を見て私は呆然とした。
お姉様のお腹が普通では考えられないくらいに膨らんでいたからだ。妊婦が相手なら、そのお腹の膨らみはおかしいとは思わない。
でも、お姉様は独身だ。お腹に赤ちゃんがいることなど、普通は考えられない。
驚きで何も言えなくなっている私に、お姉様は口を開く。
「ごめんなさい。彼のことが昔から好きだったの」
「……彼って、誰のことですか」
「このお腹の中には彼との子供がいるの」
「だから、彼って誰なんですか!」
「……あなたの夫のレイロよ」
膨らんだお腹を愛しそうに撫でながら、お姉様は涙を流して答えた。
泣きたいのはこっちだわ。
大体、第二王子の婚約者がなんてことをしているのよ! お父様もお母様もどうしてこのことを教えてくれなかったの!
「……一体、どういうことなんですか」
「ごめんなさい。アイミー、私とレイロは愛し合っているの。気持ちが抑えられなかったのよ!」
そういうことか。
久しぶりに帰ってきたって言うのに、レイロは外出していて義父母の表情も険しかった。だから、何かおかしいとは思っていた。
レイロは自分の口では言えないから、お姉様に任せて逃げたのね。
絶対に許さない。
朝食後、白いテントの中に集まっていたのは、今日の昼勤チーム以外の隊長と副隊長、そして、それぞれのチームの後方支援のリーダーだ。
いつもなら、夜勤明けは会議に参加しなくても良いのだが、最近、魔物の動きが激しくなっているものだから、夜勤組のエルたちの意見も聞きたいと言われて参加していた。
「……ぐぅ」
隣で変な声が聞こえてきたので目を向けると、真っ黒な物体が視界に飛び込んできた。
「ちょっと、エル、起きて」
すぐにその黒いものが何だかわかった私は、下を向いて眠りこけているエルに小声で話しかけた。
「んが……」
返ってきたのは小さないびき、もしくは寝息だった。魔物が活発に動くのは夜だけれど、夜行性ではない魔物もいるため、昼勤と夜勤の二交代制になっている。
私も含むエルの部隊は夜勤組なので、いつもはこの時間なら眠りについている。だから、眠いのはわかる。
……わかるけど、幹部会議で眠るのはやめてほしい。こんな緊張感のある会議で眠っているのはエルだけなんじゃないの?
そう思って周りを見回すと、そうでもなかった。エルと共に夜勤だった他のチームの隊長も、腕を組んで船を漕いでいる。
瞼に目を書いて顔を上げさせたら、二人共、起きているように見えるかしら。
相談しようと思って後ろにいる副隊長を見ると、真剣な表情で話を聞いていた。
今、そんな話をしたら怒られそうね。
エルたちを起こすことは諦めて、私は前を向いて話に集中する。
私はエルの部隊の後方支援のリーダーだ。エルが眠っているのなら、私がしっかり話を聞いておけばいいのよ。エルが意見を求められたら、すぐに答えられるようにしないと。
黒板に司令官補佐が戦略を書いていくので、それをノートに書き写していく。
後方支援のメンバーは一人を除いて、私と同じようにノートにペンを走らせ、騎兵隊の隊長たちは頭に叩き込むかのように黒板を見つめていた。
話が一段落ついたところで、司令官補佐が手を止めて、こちらに顔を向けた。
やばいわ。
「ちょっと、エル、起きて」
エルを肘でつつくと「んあ」という間抜けな声と共に垂れていた頭を上げた。
「ああ、いいんだ。昨日は大変だったみたいだから寝かせてやってくれ」
これは怒られると思ったが、司令官補佐は苦笑してそう言った。司令官も騎兵隊を統括する団長も口元を緩めているから、お咎めなしらしい。
「……ごめん。団長はどんな顔してる?」
目をこすりながら聞いてくるエルに小声で答える。
「目をこすっちゃ駄目よ。目に傷がついたらどうするの。団長は怒ってないし、司令官補佐が寝てて良いと言ってくれたから寝てて良いわ」
「んー」
長テーブルに肘をつき、エルは私に話しかけてくる。
「俺、どれくらい寝てた?」
「私が気がついたのはさっき。エル、悪いけど、私は話を聞かなくちゃいけないから集中させてくれない?」
「……フェインが聞いてるだろ」
「フェインもあなたの斜め後ろで夢の中よ」
フェインというのはエルのチームの後方支援の副リーダーで、私の同僚だ。夜は彼が率先して担当してくれるから、仮眠中の私が起こされたことはほとんどない。
「夜中ずっと起きてるもんな」
「交代するから起こしてって言ってるのに起こしてくれないのよ」
眉根を寄せて言うと、エルはふわぁと大きなあくびをする。
「本当に大変な時こそ、アイミーに頑張ってもらわないといけないから起こさないんだろ。フェインを責めるなよ。大体、アイミーは俺たちが寝ている昼の間は動き回ってるんだから気にしなくていい」
「フェインのことは責めるつもりもないし感謝してる。それから私が昼に頑張るのは夜に寝てるから」
「そう言われればそうか」
エルは子供みたいな笑みを見せて頷いた。
整った顔立ちのエルは、女性に人気があってもおかしくはない。それなのに、彼に恋人どころか婚約者もいないのは、夜型で昼はいつも眠そうにしているからだ。昼に令嬢と一緒にいても、眠気と戦うのに必死で退屈しているような態度に見えてしまう。
そのせいで婚約を何度も解消されている。
普段のエルは眠気もありふわふわした感じだけど、戦場で覚醒した時の彼は畏怖の念を抱くらいに強い。だからこそ、最年少で騎兵隊の隊長に選ばれ、年上の部下たちが文句を言わずに彼に従うのだと思う。
「エローニの森で戦闘が激化しているとの情報が入っている」
司令官補佐の声が聞こえ、私とエルは話に集中する。
エローニの森はレイロと私の姉のエイミーのいる部隊が応戦している場所でもあり、私たちがいる宿営地とはかなり離れている。
私とレイロは夫婦だということで、チームがバラバラにされていた。
どちらかに何かあった時、任務に支障が出る可能性があると言われ、レイロに何かあれば冷静でいられる自信がない私は、その判断に従った。
でも、離れさせられた理由は正直言うと納得がいっていない部分もある。
エルはレイロの大事な弟でもあり、私の大事な友人でもある。
エルやエルの部下たち、私の部下たちに何かあっても冷静でいられる自信はない。悲しい思いはしたくないから、エルたちが怪我をしても絶対に私が助ける。
そう考えた時だった。
「大変です! エローニの森から救援を求める狼煙が上がっています!」
伝令係からの報告に、その場にいた全員が立ち上がると騎士団長が叫ぶ。
「第3騎兵隊から第6騎兵隊以外は準備ができ次第、エローニの森に向かえ!」
私たちの部隊は第3騎兵隊だ。夜勤明けということで、私とエルは現地に向かうことは許されなかった。
*****
夕方、私とエルの元に第7騎兵隊の副隊長がやって来て言った。
「レイロ隊長は大怪我を負った。対応が遅かったからなのか、回復魔法の効き目が悪いので離脱することになった」
「命に別状はないんですね?」
「心配はしなくていい。戦えないほどの傷なだけで命に別状はない」
「良かった」
安心して胸を撫で下ろすと、彼はこう付け加えた。
「エイミー様も付き添いで帰ることになった。その分、アイミーの負担が増えるかもしれない」
「負担なんかじゃないわ。それよりも他の皆はどうなの?」
回復魔法を使える人間は少ない。レイロたちの見送りに行けないのは辛いけれど、離脱する人よりも現地に残る負傷者を優先することにした。
その時の私は、お姉様がレイロと一緒に帰ることになった理由は、道中で負傷兵の状態が悪くなった時に、お姉様の回復魔法が必要なのだろうと思い込んでいた。
十日後、魔物との戦いが激化したため、私には派兵期間の延長命令が出た。
それを聞いたエルが自分の期間も延長したため、同じ部隊の多くの人がエルと私を残して帰れないと言って一緒に残ってくれた。
それから約180日後、エルと共に私はサフレン辺境伯家に帰還した。
再会を喜び合うはずだったレイロは外出していて、彼の代わりに私を待ってくれていたお姉様を見て私は呆然とした。
お姉様のお腹が普通では考えられないくらいに膨らんでいたからだ。妊婦が相手なら、そのお腹の膨らみはおかしいとは思わない。
でも、お姉様は独身だ。お腹に赤ちゃんがいることなど、普通は考えられない。
驚きで何も言えなくなっている私に、お姉様は口を開く。
「ごめんなさい。彼のことが昔から好きだったの」
「……彼って、誰のことですか」
「このお腹の中には彼との子供がいるの」
「だから、彼って誰なんですか!」
「……あなたの夫のレイロよ」
膨らんだお腹を愛しそうに撫でながら、お姉様は涙を流して答えた。
泣きたいのはこっちだわ。
大体、第二王子の婚約者がなんてことをしているのよ! お父様もお母様もどうしてこのことを教えてくれなかったの!
「……一体、どういうことなんですか」
「ごめんなさい。アイミー、私とレイロは愛し合っているの。気持ちが抑えられなかったのよ!」
そういうことか。
久しぶりに帰ってきたって言うのに、レイロは外出していて義父母の表情も険しかった。だから、何かおかしいとは思っていた。
レイロは自分の口では言えないから、お姉様に任せて逃げたのね。
絶対に許さない。
1,068
あなたにおすすめの小説
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】貴方の傍に幸せがないのなら
なか
恋愛
「みすぼらしいな……」
戦地に向かった騎士でもある夫––ルーベル。
彼の帰りを待ち続けた私––ナディアだが、帰還した彼が発した言葉はその一言だった。
彼を支えるために、寝る間も惜しんで働き続けた三年。
望むままに支援金を送って、自らの生活さえ切り崩してでも支えてきたのは……また彼に会うためだったのに。
なのに、なのに貴方は……私を遠ざけるだけではなく。
妻帯者でありながら、この王国の姫と逢瀬を交わし、彼女を愛していた。
そこにはもう、私の居場所はない。
なら、それならば。
貴方の傍に幸せがないのなら、私の選択はただ一つだ。
◇◇◇◇◇◇
設定ゆるめです。
よろしければ、読んでくださると嬉しいです。
殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。
和泉鷹央
恋愛
雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。
女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。
聖女の健康が、その犠牲となっていた。
そんな生活をして十年近く。
カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。
その理由はカトリーナを救うためだという。
だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。
他の投稿サイトでも投稿しています。
【完結】婚約破棄?勘当?私を嘲笑う人達は私が不幸になる事を望んでいましたが、残念ながら不幸になるのは貴方達ですよ♪
山葵
恋愛
「シンシア、君との婚約は破棄させてもらう。君の代わりにマリアーナと婚約する。これはジラルダ侯爵も了承している。姉妹での婚約者の交代、慰謝料は無しだ。」
「マリアーナとランバルド殿下が婚約するのだ。お前は不要、勘当とする。」
「国王陛下は承諾されているのですか?本当に良いのですか?」
「別に姉から妹に婚約者が変わっただけでジラルダ侯爵家との縁が切れたわけではない。父上も承諾するさっ。」
「お前がジラルダ侯爵家に居る事が、婿入りされるランバルド殿下を不快にするのだ。」
そう言うとお父様、いえジラルダ侯爵は、除籍届けと婚約解消届け、そしてマリアーナとランバルド殿下の婚約届けにサインした。
私を嘲笑って喜んでいる4人の声が可笑しくて笑いを堪えた。
さぁて貴方達はいつまで笑っていられるのかしらね♪
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
悪女と呼ばれた王妃
アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。
処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。
まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。
私一人処刑すれば済む話なのに。
それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。
目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。
私はただ、
貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。
貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、
ただ護りたかっただけ…。
だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。
❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる