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話のはじまりは時が遡ること、約1年前のこと。
「エアリス様が来てから、屋敷の雰囲気がとても明るくなった気がします」
朝食後、部屋で読書をしていると、私専属のメイドに笑顔でそう言われた。
「ありがとう。でも、突然どうしたの?」
「いえ。なんだか言葉にしたくなってしまいまして」
「そうなの? でも、口に出して伝えてくれて嬉しい。言われないとわからないものね」
笑顔で礼を言うと、メイドは嬉しそうに微笑んだ。
元子爵令嬢である私、エアリス・ロードウェルは伯爵である夫、ロンバート・ロードウェルとは結婚してから、まだ半年もたっておらず、まだ新婚でアツアツの時期であるはずだった。
私と彼は通っていた学園で出会い、貴族にしては珍しい恋愛結婚で、辛い事はあれど、二人で乗り越えて、幸せな日々が続くと信じていた。
私の髪型は普通の令嬢とは少し違っていて、貴族なら当たり前と言ってもいいくらいのロングヘアーではなく、セミロングの長さの猫っ毛の黒髪を持ち、二重まぶたに、大きいと言われる目。
人からは小動物みたいに可愛いと言われるけれど、あまり自覚はない。
女性としては背は高めのスレンダーな体型で、外見としては可もなく不可もなくといった感じだと思っている。
読んでいた本から目をはなし、窓の外に広がる庭を眺める。
ロンバートとの生活は最初は幸せだった。
いや、今ももちろん幸せなんだとは思っている。
ただ、一緒に暮らしていくと、お互い様なのだろうけれど、今まで見えてこなかった部分がたくさん見えてくる。
新しく見えてきた部分は色々とあるけれど、衝撃だったのは、彼が極度のマザーコンプレックスだった事。
自分の母を大事にするのは悪い事じゃない。
だけど、彼はいきすぎている気がする。
義母の言う事は疑いもなく信じるのに、私の言う事は疑ってかかってくる。
結婚前はそんな人ではなかったのに。
義母も義母で、息子を溺愛しており、私が自分から息子を奪った、と義母は思っているようで、私のことをあまり良く思っていないらしく、家族で食事に出掛ければ、コース料理の場合は私だけ1番安いコース料理を注文するのはいつもの事。
単品の場合だと、ロンバートに2つ好きなものを選ばせて、私には残り物を食べさせたりしていた。
アレルギー体質の私は、食べ物でも軽いアレルギーを起こすので、気を付けなければいけない事を伝えていたのに、わざと、アレルギー反応を起こす食べ物を押し付けてきたりする事もあった。
それについて、ロンバートは何も言わない。
もし、口を開いたとしても、母上が決めたことなのだからしょうがないと言うくらいだ。
義父は私に気を遣ってくれているけれど、理由があり、義母には頭が上がらない。
これに関しては食べさせてもらえないよりかはマシだと思った。
別邸で食事をする時は、お水しか出してもらえない事もあったから。
義父母は、伯爵家近くにある別邸に暮らしていて、徒歩で行ける範囲のため、出ていった後も家計管理は義母がしている。
私がやります、と言っても、やらせてくれないくせに、何もしない嫁だと、人がいないところで罵ってきた。
それだけではなく、わざと屋敷の美術品を壊しては私のせいだといい、疫病神だと罵った。
ロンバートも影では「気にしなくていい」と言ってくれるけれど、義母がいる時には一緒になって私を罵った。
実際は私は疫病神ではなく、逆の存在だったという事を、この時の私、だけではなく、義母とロンバートも気付いていなかった。
自分の家である別邸ではなく、私達の家に居座る義母が私は嫌いだった。
でも、ロンバートの事は好きだった。
罵るけれど、冷静になると謝ってくれる彼が好きだった。
彼も私を好きでいてくれていると信じていた。
だから、義母からのいじめなんて、私にとっては大した事ではなかった。
そう、義母から呼び出され、ロンバートと私が親友だと思っていた女性、オルザベートから、あんな話を聞かされるまでは。
「エアリス様が来てから、屋敷の雰囲気がとても明るくなった気がします」
朝食後、部屋で読書をしていると、私専属のメイドに笑顔でそう言われた。
「ありがとう。でも、突然どうしたの?」
「いえ。なんだか言葉にしたくなってしまいまして」
「そうなの? でも、口に出して伝えてくれて嬉しい。言われないとわからないものね」
笑顔で礼を言うと、メイドは嬉しそうに微笑んだ。
元子爵令嬢である私、エアリス・ロードウェルは伯爵である夫、ロンバート・ロードウェルとは結婚してから、まだ半年もたっておらず、まだ新婚でアツアツの時期であるはずだった。
私と彼は通っていた学園で出会い、貴族にしては珍しい恋愛結婚で、辛い事はあれど、二人で乗り越えて、幸せな日々が続くと信じていた。
私の髪型は普通の令嬢とは少し違っていて、貴族なら当たり前と言ってもいいくらいのロングヘアーではなく、セミロングの長さの猫っ毛の黒髪を持ち、二重まぶたに、大きいと言われる目。
人からは小動物みたいに可愛いと言われるけれど、あまり自覚はない。
女性としては背は高めのスレンダーな体型で、外見としては可もなく不可もなくといった感じだと思っている。
読んでいた本から目をはなし、窓の外に広がる庭を眺める。
ロンバートとの生活は最初は幸せだった。
いや、今ももちろん幸せなんだとは思っている。
ただ、一緒に暮らしていくと、お互い様なのだろうけれど、今まで見えてこなかった部分がたくさん見えてくる。
新しく見えてきた部分は色々とあるけれど、衝撃だったのは、彼が極度のマザーコンプレックスだった事。
自分の母を大事にするのは悪い事じゃない。
だけど、彼はいきすぎている気がする。
義母の言う事は疑いもなく信じるのに、私の言う事は疑ってかかってくる。
結婚前はそんな人ではなかったのに。
義母も義母で、息子を溺愛しており、私が自分から息子を奪った、と義母は思っているようで、私のことをあまり良く思っていないらしく、家族で食事に出掛ければ、コース料理の場合は私だけ1番安いコース料理を注文するのはいつもの事。
単品の場合だと、ロンバートに2つ好きなものを選ばせて、私には残り物を食べさせたりしていた。
アレルギー体質の私は、食べ物でも軽いアレルギーを起こすので、気を付けなければいけない事を伝えていたのに、わざと、アレルギー反応を起こす食べ物を押し付けてきたりする事もあった。
それについて、ロンバートは何も言わない。
もし、口を開いたとしても、母上が決めたことなのだからしょうがないと言うくらいだ。
義父は私に気を遣ってくれているけれど、理由があり、義母には頭が上がらない。
これに関しては食べさせてもらえないよりかはマシだと思った。
別邸で食事をする時は、お水しか出してもらえない事もあったから。
義父母は、伯爵家近くにある別邸に暮らしていて、徒歩で行ける範囲のため、出ていった後も家計管理は義母がしている。
私がやります、と言っても、やらせてくれないくせに、何もしない嫁だと、人がいないところで罵ってきた。
それだけではなく、わざと屋敷の美術品を壊しては私のせいだといい、疫病神だと罵った。
ロンバートも影では「気にしなくていい」と言ってくれるけれど、義母がいる時には一緒になって私を罵った。
実際は私は疫病神ではなく、逆の存在だったという事を、この時の私、だけではなく、義母とロンバートも気付いていなかった。
自分の家である別邸ではなく、私達の家に居座る義母が私は嫌いだった。
でも、ロンバートの事は好きだった。
罵るけれど、冷静になると謝ってくれる彼が好きだった。
彼も私を好きでいてくれていると信じていた。
だから、義母からのいじめなんて、私にとっては大した事ではなかった。
そう、義母から呼び出され、ロンバートと私が親友だと思っていた女性、オルザベートから、あんな話を聞かされるまでは。
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