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「エアリス、これはあなたのお祖母様とお祖父様の形見よ」
「きれい」
幼い頃、母からそう言って渡された、綺麗な紫色の石のついたシルバーのチェーンのネックレス。
「大事にしてね。これを持っていればお祖母様とお祖父様が、あなたを守ってくれるから。そして必ず、あなたを幸せにしてくれるからね」
「うん!」
私のお祖母様とお祖父様は有名な魔法使いだった。
魔法使い自体、私達の住んでいる国には少ないのだけれど、その中でも2人は魔力量も魔法のコントロールも、使える魔法の数も、ずば抜けた魔法使いだったらしい。
その血は娘のお母様に受け継がれるかと思われたけれど、お母様は魔力がなく、まったく魔法が使えなかった。
これは珍しい事ではない。
普通の人間にほとんど魔力なんてないのだから。
その代わりなのか、私には魔力が多くあったらしく、お祖母様とお祖父様に、私が言葉を話せる様になった頃から魔法を教えてもらっていた。
けれど、その時は戦乱の時代だった。
魔法使いが戦争に参戦させられるようになり、魔法使いの殆どは、自分が魔法使いである事を隠そうとした。
その為、戦争が激化すると、祖父母や私の両親は私に魔法を使う事を止めさせた。
だから、今の私は魔力はあるものの魔法は使えない。
私が5歳になった頃に祖父母は、無理矢理招集され、結局、戦争の犠牲になった。
魔力切れは魔法使いに死をもたらす。
そう、使い捨てにされたのだ。
ある辺境伯に。
戦争は無事に勝利し、市井では命を捨ててまで、国を守った私の祖父母を英雄として讃えようとした。
けれど、それは、辺境伯によって阻まれた。
名はメガイクス。
彼は魔法使いが大嫌いだった。
戦争に勝利できたのは自分の功績だと訴え、魔法使いは悪だと言い続けた。
けれど、国民もバカじゃない。
大きな声では言えないけれど、英雄は私の祖父母だと思ってくれていた。
表向きではあるが、迫害された私達一家は魔法使いに差別のない、カイジス公爵領に引っ越した。
幼い頃の私は母にネックレスを渡された時、守ってくれるという言葉よりも、ネックレスについた石はお祖母様とお祖父様そのものなのだと思い込んだ。
もし、失くしてしまえば、天国にいるお祖母様とお祖父様が幸せじゃなくなると思った。
もう二度と会えなくなると思った。
だから失くす事が怖くて、肌見はなさず持っていたわけではなかった。
今となれば、夫だったロンバートと出会った学園にも、この石を持っていなかった。
彼との婚約が決まった時も、結婚式の時も。
私は、なくす事を怖れて、そんな大事な時にお祖母様とお祖父様を連れて行ってはいなかったのだ。
今、思うとそんな自分を殴りたくなる。
私が家に石を置いている間、お祖母様とお祖父様は私が帰る家を守ってくれていた。
だから、その石を持って出てしまえば、お祖母様とお祖父様の加護はなくなる。
これが実家なら別だった。
お祖母様とお祖父様は実家に繁栄と長寿の魔法をかけてくれていたから。
二人の死後もその魔法は、今も継続され続けていて、私の両親と爵位を継いだ兄夫婦が暮らしている実家は、大して悪い事もなく、幸せな日々が送れている。
私と結婚直後から、ロンバートの経営していた店が繁盛しはじめ、彼の家は一気に裕福になった。
なぜ、そんな事になったのか、ロンバートも義母も、その理由を考えもしなかった。
だから、彼は私と簡単に離婚したんだろう。
だから、義母は私をいじめ、追い出したのだろう。
すぐに後悔する事になるという事も知らずに。
「きれい」
幼い頃、母からそう言って渡された、綺麗な紫色の石のついたシルバーのチェーンのネックレス。
「大事にしてね。これを持っていればお祖母様とお祖父様が、あなたを守ってくれるから。そして必ず、あなたを幸せにしてくれるからね」
「うん!」
私のお祖母様とお祖父様は有名な魔法使いだった。
魔法使い自体、私達の住んでいる国には少ないのだけれど、その中でも2人は魔力量も魔法のコントロールも、使える魔法の数も、ずば抜けた魔法使いだったらしい。
その血は娘のお母様に受け継がれるかと思われたけれど、お母様は魔力がなく、まったく魔法が使えなかった。
これは珍しい事ではない。
普通の人間にほとんど魔力なんてないのだから。
その代わりなのか、私には魔力が多くあったらしく、お祖母様とお祖父様に、私が言葉を話せる様になった頃から魔法を教えてもらっていた。
けれど、その時は戦乱の時代だった。
魔法使いが戦争に参戦させられるようになり、魔法使いの殆どは、自分が魔法使いである事を隠そうとした。
その為、戦争が激化すると、祖父母や私の両親は私に魔法を使う事を止めさせた。
だから、今の私は魔力はあるものの魔法は使えない。
私が5歳になった頃に祖父母は、無理矢理招集され、結局、戦争の犠牲になった。
魔力切れは魔法使いに死をもたらす。
そう、使い捨てにされたのだ。
ある辺境伯に。
戦争は無事に勝利し、市井では命を捨ててまで、国を守った私の祖父母を英雄として讃えようとした。
けれど、それは、辺境伯によって阻まれた。
名はメガイクス。
彼は魔法使いが大嫌いだった。
戦争に勝利できたのは自分の功績だと訴え、魔法使いは悪だと言い続けた。
けれど、国民もバカじゃない。
大きな声では言えないけれど、英雄は私の祖父母だと思ってくれていた。
表向きではあるが、迫害された私達一家は魔法使いに差別のない、カイジス公爵領に引っ越した。
幼い頃の私は母にネックレスを渡された時、守ってくれるという言葉よりも、ネックレスについた石はお祖母様とお祖父様そのものなのだと思い込んだ。
もし、失くしてしまえば、天国にいるお祖母様とお祖父様が幸せじゃなくなると思った。
もう二度と会えなくなると思った。
だから失くす事が怖くて、肌見はなさず持っていたわけではなかった。
今となれば、夫だったロンバートと出会った学園にも、この石を持っていなかった。
彼との婚約が決まった時も、結婚式の時も。
私は、なくす事を怖れて、そんな大事な時にお祖母様とお祖父様を連れて行ってはいなかったのだ。
今、思うとそんな自分を殴りたくなる。
私が家に石を置いている間、お祖母様とお祖父様は私が帰る家を守ってくれていた。
だから、その石を持って出てしまえば、お祖母様とお祖父様の加護はなくなる。
これが実家なら別だった。
お祖母様とお祖父様は実家に繁栄と長寿の魔法をかけてくれていたから。
二人の死後もその魔法は、今も継続され続けていて、私の両親と爵位を継いだ兄夫婦が暮らしている実家は、大して悪い事もなく、幸せな日々が送れている。
私と結婚直後から、ロンバートの経営していた店が繁盛しはじめ、彼の家は一気に裕福になった。
なぜ、そんな事になったのか、ロンバートも義母も、その理由を考えもしなかった。
だから、彼は私と簡単に離婚したんだろう。
だから、義母は私をいじめ、追い出したのだろう。
すぐに後悔する事になるという事も知らずに。
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