謝られたって、私は高みの見物しかしませんよ?

風見ゆうみ

文字の大きさ
40 / 45

10−1  結末

「エアリス!! あなた、やっと帰ってくる気になったの?」

 イザメル様は私を見て叫んだ。
 私はソファーに座ったまま、向かいに座っている彼女に聞き返す。

「帰ってくる気になったのか、と仰られる意味がわかりません」
「それはそうでしょう。ロンバートをあんな目に合わせておいて! 戻ってこないだなんてありえないわ!」
「私は何もしておりませんが? 大体、ご子息と私はもう赤の他人です。あの家に帰る必要はありません」
「何を言ってるの! ロンバートがあなたに謝りたいと言ってるのよ!」
「謝りたい? そんな事言われても私は興味ありません。ロンバートはある意味、あなたやオルザベートの犠牲者であるかもしれませんが、かといって許すつもりはありませんから」

 最後に暴言を吐かれた事、イザメル様から守ってくれなかった事、オルザベートと浮気した事を簡単に許す気にはなれない。
 大体、私の事を本当に好きだったのかもわからない。
 私は魅了魔法だったけれと、ロンバートはどういうつもりで私に近付いたんだろう?
 
「これだから魔法使いは嫌なのよ」
「私は正式な魔法使いではありません。魔力はありますけど、魔法の使い方がわかりませんから」
「その魔力が高い事が許せないのよ! どうせ、私達の様な魔力の少ない人間を蔑んでいるんでしょう!?」
 
 イザメル様の言葉に私とビアラは思わず顔を見合わせる。
 私はそんな事を思った事もなかったし、ビアラもそうではない感じだった。

「どうしてそんな事を思うんです」
「私がそう思うからよ」

 返された言葉の意味がわからずに、眉を寄せると、イザメル様が続ける。

「私よりも劣った人間を見ると死ねばいいのにと思う事がある。それと同じよ」
「意味がわからないんですけど、そんなひねくれた考え方する人の方が少ないですよ」

 ビアラが鼻で笑うと、イザメル様は彼女に食ってかかる。

「あなた、口の聞き方を知らないようね? 警察だかなんだか知らないけれど、どうせあなたは下っ端でどうせ平民あがりか何かでしょう? 私は伯爵の母なのよ!」
「息子さんも犯罪者なんですから、その爵位も剥奪されますよ。おめでとうございます」

 ビアラが笑顔で言った途端、座っていたイザメル様が立ち上がった。

「あなた名前を名乗りなさい! 私がこの手で潰してやるわ! あなたの上司は私の手駒なのよ」
「ビアラ・ミゼライトと申します。それにしても、嫌な世の中になりましたねぇ。お金で権力でもなんでも買えちゃうんですかぁ。あ、でも本当のお友達や家族は買えなかったみたいですけどね?」

 ビアラがわざと挑発的な態度をとると、イザメル様は案の定、彼女のかけた罠にはまった。

「この生意気な!」

 立ち上がったイザメル様は、ビアラの前まで歩いていくと、彼女の頬を殴った。

「覚えておきなさいよ。あんたなんか私の手にかかれば、命だって取れるんですからね!」
「その前に留置場ですね」
「は?」

 ビアラの言葉にイザメル様は息を荒くしながらも聞き返すので、彼女が答える。

「暴行罪です」
「は?」

 またイザメル様が聞き返すので、今度は私が答える。

「イザメル様、人を殴ったら暴行罪ですよ。それに、さっきはビアラを潰すとか何とか言ってましたよね。それは脅迫罪に当たります」
「というわけで、現行犯で逮捕しますね」

 ビアラはにっこり笑って、スーツの内ポケットの中から手錠を取り出す。

「な! そんな馬鹿な! そんな事が出来るわけないでしょう!?」
 
 そう言いながらも、イザメル様の顔は焦ったものになっていた。

「出来ますよ。だって、私、権力は怖くないですもの。今回はカイジス公爵から権限もらってますし、こんな事言ったらなんですが、今の私の立場はあなたとつながってる私の上司より上ですよ」

 ビアラがイザメル様に近付いていくと、イザメル様が後退りする。

「嫌よ、やめなさい。そんな事をしたって、すぐに留置場から出て、今度こそあなたを!」
「イザメル様、もう無理ですよ」

 言葉を遮った私を、イザメル様は睨みつけて聞いてくる。

「何が無理だって言うのよ!」
「あなたの元旦那様が、あなたの今までの悪事を証言なさるそうです」
「元…旦那…? …そんな、どうして、あの人が…」
「優しい方でしたから、今まであなたの悪事を言えなかったようです。いつか、目を覚ますのではないかと、止められなかった自分が悪いのだと。でも、カイジス公爵の説得により、あなたの罪をすべて公言するとおっしゃいました。ですから、あなたがやっていた事は明るみになります。魔法使いを虐待していた事、そして、今も軟禁しているという事も…」

 私の言葉を聞いたイザメル様は膝から崩れ落ちた。
感想 54

あなたにおすすめの小説

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」 新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。 それもそのはず。 2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。 でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。 美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。 だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。 どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったレオノールに、やがてクラウディオの心は……。 すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?  焦ったい恋と陰謀+バトルのラブファンタジー。

【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?

氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。 しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。 夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。 小説家なろうにも投稿中

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

待鳥園子
恋愛
伯爵令嬢アイリーンの婚約者であるセシルの隣には『妹のような幼馴染み』愛らしい容姿のデイジーが居て、身分差で結婚出来ない二人が結ばれるためのお飾り妻にされてしまうことが耐えられなかった。 そして、二人がふざけて婚姻届を書いている光景を見て、アイリーンは自分の我慢が限界に達そうとしているのを感じていた……のだけど!?

【完結】愛とは呼ばせない

野村にれ
恋愛
リール王太子殿下とサリー・ペルガメント侯爵令嬢は六歳の時からの婚約者である。 二人はお互いを励まし、未来に向かっていた。 しかし、王太子殿下は最近ある子爵令嬢に御執心で、サリーを蔑ろにしていた。 サリーは幾度となく、王太子殿下に問うも、答えは得られなかった。 二人は身分差はあるものの、子爵令嬢は男装をしても似合いそうな顔立ちで、長身で美しく、 まるで対の様だと言われるようになっていた。二人を見つめるファンもいるほどである。 サリーは婚約解消なのだろうと受け止め、承知するつもりであった。 しかし、そうはならなかった。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定