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13 母の企み
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あくまでも、ジェリー様の話は推測であり、絶対だとは言えない。
けれど、そうである可能性は高いと思った。
お姉様達がソルトに婚約者を決めたのも、本当はお母様がメインで、私の本当の妹らしき人をソルトの嫁にさせて、いじめるつもりでいるのかもしれない。
ソルトはお母様のことはよくわかっているから、彼女をそんな目にあわせないようにするだろうし、結婚をしたら、その時に後を継いでいなかったとしても、お母様を別邸に追い出すと思われる。
ジェリー様の仮説については、ソルトや私の本当の両親も薄々気がついているかもしれない。
だけど、悪いのは取りかえられた子ではないのはわかっているはずだし、本当のレナス侯爵家の子が、セファ伯爵家で幸せに暮らせているのであれば、それで良いと思うし、彼女に知らせることもないように思う。
きっと、育てていくうちに愛情はわくはずだもの。
私の本当の両親なら、気付いていても大事に育ててくれているわよね。
私の本当の両親らしき人達の外見は、注意して見たら私と似ているところがあるけれど、すぐにわかるほど似ているわけではないとジェリー様は言ってくれたので、ソルトの結婚式で顔を合わすことがあっても、他の人に気付かれたりすることはないだろうからホッとした。
そのことがわかってからは、お母様に冷たいことを言われても、大して傷付かなくなった。
他人から言われるのと、本当の母から言われていると思うのとでは、言葉によっては受け止め方が違ってくるものなのだと感じた。
そんなある日の午前中、お父様の仕事を手伝っていると、お母様がやって来た。
「ちょっと、ミリエル。買ってきてほしいものがあるのだけど」
「使用人に頼んだらいかがですか?」
「あなたのセンスを試したいの。今度、お茶会を開くでしょう? その茶会で出す茶葉をあなたが選んできてほしいのよ」
「お断りします」
きっぱりと断ると、お母様の表情が歪む。
「なんですって!?」
「私が主催するお茶会ならまだしも、お母様が主催する茶会なのでしょう? おもてなしされるお母様が決めるべきだと思います」
「私は忙しいのよ! 茶葉を見に行っている余裕なんてないの!」
「では、茶葉を売っている商店から人を呼びましょう。その手配はいたします。いつがよろしいのですか?」
お父様の仕事を手伝っていた手を止めて、冷たく尋ねると、お母様はお父様に向かって叫ぶ。
「あなた! 母に対して娘がこんな態度を取っているのに、何も言わないんですか!」
「いつものことだろう。そんなに面倒なら茶会などしなければ良い。無駄にお金を使うだけだろう」
「何を言っているんですか! 他の家は皆、定期的に開いているんですよ!? 淑女の情報交換の場なのです!」
「誰を呼ぶつもりなんだ」
「もちろん、ヨウビル公爵夫人ですわ。それから……」
お母様は意味ありげに私のほうにちらりと視線を向けたあと、すぐにお父様のほうを見て、言葉を続ける。
「セファ伯爵家の奥様とお嬢様達も呼ぶつもりですわ」
「家族で呼ぶのか」
「ええ。ソルトの婚約者のご家族ですから、ぜひ会っておかないといけないでしょう?」
お母様は持っていた扇で口元を隠し、うふふと笑う。
何が面白いのかわからないわ。
それに、すでに会っているはずなのに、わざわざそんなことを言うなんて。
お母様は私と本当のお母様を会わせようとしているのね。
このお茶会で何を考えているつもりなのかしら。
私の目の前でセファ伯爵夫人達をいじめるつもり?
でも、本当の娘も呼んでいるのよね?
本当の娘の前で汚い自分をさらけだすつもり?
ああ、色々と疑問が浮かんでしまって、考えがまとまらないわ。
何にしても、絶対に茶葉を私が選ぶわけにはいかない。
「お母様、仕事の邪魔になりますので出て行っていただいてもよろしいでしょうか?」
「ちょっと、あなた! ミリエルに何か言ってください!」
「ミリエル、茶葉を売っている店に連絡だけしておいてやれ」
「あなた!? そんなことを言えって言っているんじゃないんです!」
「承知しました。お母様、今から来てもらうように手配いたしますので、よろしくお願い致します」
贔屓にしている茶葉の店があるので、使用人にお願いして店まで行ってもらえば、店員を一緒に連れてきてくれるはず。
「ミリエル! あなた、そんな生意気な態度だと、ルドルフ辺境伯との婚約はなしになるわよ!? 今、レジーノ達はルドルフ辺境伯領に旅行に行っているんだから!」
「勝手にどうぞ」
だって、私はルドルフ様と婚約しているわけじゃないもの。
文句を言い続けているお母様を無視して、お父様の執務室を出た。
けれど、そうである可能性は高いと思った。
お姉様達がソルトに婚約者を決めたのも、本当はお母様がメインで、私の本当の妹らしき人をソルトの嫁にさせて、いじめるつもりでいるのかもしれない。
ソルトはお母様のことはよくわかっているから、彼女をそんな目にあわせないようにするだろうし、結婚をしたら、その時に後を継いでいなかったとしても、お母様を別邸に追い出すと思われる。
ジェリー様の仮説については、ソルトや私の本当の両親も薄々気がついているかもしれない。
だけど、悪いのは取りかえられた子ではないのはわかっているはずだし、本当のレナス侯爵家の子が、セファ伯爵家で幸せに暮らせているのであれば、それで良いと思うし、彼女に知らせることもないように思う。
きっと、育てていくうちに愛情はわくはずだもの。
私の本当の両親なら、気付いていても大事に育ててくれているわよね。
私の本当の両親らしき人達の外見は、注意して見たら私と似ているところがあるけれど、すぐにわかるほど似ているわけではないとジェリー様は言ってくれたので、ソルトの結婚式で顔を合わすことがあっても、他の人に気付かれたりすることはないだろうからホッとした。
そのことがわかってからは、お母様に冷たいことを言われても、大して傷付かなくなった。
他人から言われるのと、本当の母から言われていると思うのとでは、言葉によっては受け止め方が違ってくるものなのだと感じた。
そんなある日の午前中、お父様の仕事を手伝っていると、お母様がやって来た。
「ちょっと、ミリエル。買ってきてほしいものがあるのだけど」
「使用人に頼んだらいかがですか?」
「あなたのセンスを試したいの。今度、お茶会を開くでしょう? その茶会で出す茶葉をあなたが選んできてほしいのよ」
「お断りします」
きっぱりと断ると、お母様の表情が歪む。
「なんですって!?」
「私が主催するお茶会ならまだしも、お母様が主催する茶会なのでしょう? おもてなしされるお母様が決めるべきだと思います」
「私は忙しいのよ! 茶葉を見に行っている余裕なんてないの!」
「では、茶葉を売っている商店から人を呼びましょう。その手配はいたします。いつがよろしいのですか?」
お父様の仕事を手伝っていた手を止めて、冷たく尋ねると、お母様はお父様に向かって叫ぶ。
「あなた! 母に対して娘がこんな態度を取っているのに、何も言わないんですか!」
「いつものことだろう。そんなに面倒なら茶会などしなければ良い。無駄にお金を使うだけだろう」
「何を言っているんですか! 他の家は皆、定期的に開いているんですよ!? 淑女の情報交換の場なのです!」
「誰を呼ぶつもりなんだ」
「もちろん、ヨウビル公爵夫人ですわ。それから……」
お母様は意味ありげに私のほうにちらりと視線を向けたあと、すぐにお父様のほうを見て、言葉を続ける。
「セファ伯爵家の奥様とお嬢様達も呼ぶつもりですわ」
「家族で呼ぶのか」
「ええ。ソルトの婚約者のご家族ですから、ぜひ会っておかないといけないでしょう?」
お母様は持っていた扇で口元を隠し、うふふと笑う。
何が面白いのかわからないわ。
それに、すでに会っているはずなのに、わざわざそんなことを言うなんて。
お母様は私と本当のお母様を会わせようとしているのね。
このお茶会で何を考えているつもりなのかしら。
私の目の前でセファ伯爵夫人達をいじめるつもり?
でも、本当の娘も呼んでいるのよね?
本当の娘の前で汚い自分をさらけだすつもり?
ああ、色々と疑問が浮かんでしまって、考えがまとまらないわ。
何にしても、絶対に茶葉を私が選ぶわけにはいかない。
「お母様、仕事の邪魔になりますので出て行っていただいてもよろしいでしょうか?」
「ちょっと、あなた! ミリエルに何か言ってください!」
「ミリエル、茶葉を売っている店に連絡だけしておいてやれ」
「あなた!? そんなことを言えって言っているんじゃないんです!」
「承知しました。お母様、今から来てもらうように手配いたしますので、よろしくお願い致します」
贔屓にしている茶葉の店があるので、使用人にお願いして店まで行ってもらえば、店員を一緒に連れてきてくれるはず。
「ミリエル! あなた、そんな生意気な態度だと、ルドルフ辺境伯との婚約はなしになるわよ!? 今、レジーノ達はルドルフ辺境伯領に旅行に行っているんだから!」
「勝手にどうぞ」
だって、私はルドルフ様と婚約しているわけじゃないもの。
文句を言い続けているお母様を無視して、お父様の執務室を出た。
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