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9 元婚約者の執着
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良くも悪くも集落というものは、住人同士の顔を把握できるようになっているものです。そのため知らない顔を見たら、余所者だと判断して警戒します。
相手がどんな人物かわからないだけに、油断はできないのです。不審者は若い男性だったがために、若い女性は家から出ないようにと連絡があり、私は自分の部屋で勉強をして家から出ず、不審者とは一切顔を合わせずにいました。
不審者は通りすがりの人を掴まえては、この集落にいる若い女性について聞いているそうです。
とても嫌な予感がします。集落の人たちも不審者にわざわざ他人の話をしなかったようで、私のことは知られていないはずです。
きっと大丈夫。そう自分に言い聞かせて、三日が経った頃、私の所に来客がありました。
それは国王陛下からの使者でした。私の家だけ訪ねるわけにはいかないため、行商人の姿でやって来て、一軒一軒をまわって私の住む家に訪ねてきたのです。
家に招き入れると、トーマス殿下が私が生きているのではないかと疑っていると教えてくれました。
なぜ、そんなことになったのかと言うと、きっかけはランフェスが婚約者を作らないからということでした。
「ランフェスには婚約者がいないのですか」
「ええ。話が進みかけていたものがあったのですが白紙になってしまい疑い始め、この集落を知ったようです」
ランフェスはずっと、私のことを思ってくれているそうです。『次は間違えない』と言っていたトーマス様とは違っていたのです。ランフェスは私に気持ちを残したまま、誰かと結婚することは不誠実だと感じたらしく、断ち切るまでは結婚しないと決めているとのことでした。
今の状態で私が下手に動けば、余計に疑われることになります。ですが、このまま怯えて暮らすのも嫌です。
王家の使者は事情を知っているため、その人に尋ねてみます。
「もし、私が生きているとわかれば、トーマス様はどうすると思いますか?」
「……そうですね。結婚はしたものの、彼はあなたのことを忘れていないようです。何とかして、あなたを自分のものにしようとするでしょう。それに、あなたの昔の家族のことも問題です」
「……どういうことでしょうか」
そういえば、昔の家族がどうしているかなんて、まったく気にしていませんでした。話の流れ的に聞いてみると、使いの方は苦笑します。
「あなたがいなくなってから、エルファイド家は、当時、ハズレー王国の王太子だったジノス公爵に嵌められたのです」
「えっ!? はめられた?」
「はい。エルファイド公爵家は、ジノス公爵に逆恨みされたんです。エルファイド公爵令息がジノス公爵の罠にはまり、女性を襲おうとしたことで、エルファイド公爵令息は爵位を継げなくなりました」
詳しい話を聞いてみますと、トーマス様……ではなく、ジノス公爵は私が死ぬきっかけを作った家族に恨みを抱いていました。何か弱点はないかと調べていく内に、元兄に好きな人がいることに気づきました。
何者かが元兄の好きな人のふりをして元兄と文通を続け、気持ちが抑えられなくなった元兄は、何も知らない女性を襲ったのです。
女性は押し倒される以上のことはされませんでしたが、ショックで家に引きこもるようになりました。本人は『向こうから誘ってきたんです』と言い張り、反省をしませんでした。呆れた国王陛下は、エルファイド公爵家は元父の代で終えることが決めたのです。このことを聞いたジノス公爵は手を叩いて喜んだそうです。
今の元家族は、公爵家でありながらも身を小さくして生きていると教えてくれました。
「私が生きているとわかれば、元家族も何か言ってきそうですね」
「ええ。あなたの身に危険が迫ると思います。ですので、国王陛下から提案があります」
「……何でしょうか」
「提案をする前にお聞きしたいことがあります」
「どうぞ」
真剣な表情で頷くと、使いの人が尋ねます。
「あなたは、ランフェス様のことをどう思っているのでしょうか」
どう思っているかだなんて……。
この質問の答えは正直に答えるべきなのか、それとも嘘をつくべきなのか判断ができず、私はすぐに答えを返すことができませんでした。
相手がどんな人物かわからないだけに、油断はできないのです。不審者は若い男性だったがために、若い女性は家から出ないようにと連絡があり、私は自分の部屋で勉強をして家から出ず、不審者とは一切顔を合わせずにいました。
不審者は通りすがりの人を掴まえては、この集落にいる若い女性について聞いているそうです。
とても嫌な予感がします。集落の人たちも不審者にわざわざ他人の話をしなかったようで、私のことは知られていないはずです。
きっと大丈夫。そう自分に言い聞かせて、三日が経った頃、私の所に来客がありました。
それは国王陛下からの使者でした。私の家だけ訪ねるわけにはいかないため、行商人の姿でやって来て、一軒一軒をまわって私の住む家に訪ねてきたのです。
家に招き入れると、トーマス殿下が私が生きているのではないかと疑っていると教えてくれました。
なぜ、そんなことになったのかと言うと、きっかけはランフェスが婚約者を作らないからということでした。
「ランフェスには婚約者がいないのですか」
「ええ。話が進みかけていたものがあったのですが白紙になってしまい疑い始め、この集落を知ったようです」
ランフェスはずっと、私のことを思ってくれているそうです。『次は間違えない』と言っていたトーマス様とは違っていたのです。ランフェスは私に気持ちを残したまま、誰かと結婚することは不誠実だと感じたらしく、断ち切るまでは結婚しないと決めているとのことでした。
今の状態で私が下手に動けば、余計に疑われることになります。ですが、このまま怯えて暮らすのも嫌です。
王家の使者は事情を知っているため、その人に尋ねてみます。
「もし、私が生きているとわかれば、トーマス様はどうすると思いますか?」
「……そうですね。結婚はしたものの、彼はあなたのことを忘れていないようです。何とかして、あなたを自分のものにしようとするでしょう。それに、あなたの昔の家族のことも問題です」
「……どういうことでしょうか」
そういえば、昔の家族がどうしているかなんて、まったく気にしていませんでした。話の流れ的に聞いてみると、使いの方は苦笑します。
「あなたがいなくなってから、エルファイド家は、当時、ハズレー王国の王太子だったジノス公爵に嵌められたのです」
「えっ!? はめられた?」
「はい。エルファイド公爵家は、ジノス公爵に逆恨みされたんです。エルファイド公爵令息がジノス公爵の罠にはまり、女性を襲おうとしたことで、エルファイド公爵令息は爵位を継げなくなりました」
詳しい話を聞いてみますと、トーマス様……ではなく、ジノス公爵は私が死ぬきっかけを作った家族に恨みを抱いていました。何か弱点はないかと調べていく内に、元兄に好きな人がいることに気づきました。
何者かが元兄の好きな人のふりをして元兄と文通を続け、気持ちが抑えられなくなった元兄は、何も知らない女性を襲ったのです。
女性は押し倒される以上のことはされませんでしたが、ショックで家に引きこもるようになりました。本人は『向こうから誘ってきたんです』と言い張り、反省をしませんでした。呆れた国王陛下は、エルファイド公爵家は元父の代で終えることが決めたのです。このことを聞いたジノス公爵は手を叩いて喜んだそうです。
今の元家族は、公爵家でありながらも身を小さくして生きていると教えてくれました。
「私が生きているとわかれば、元家族も何か言ってきそうですね」
「ええ。あなたの身に危険が迫ると思います。ですので、国王陛下から提案があります」
「……何でしょうか」
「提案をする前にお聞きしたいことがあります」
「どうぞ」
真剣な表情で頷くと、使いの人が尋ねます。
「あなたは、ランフェス様のことをどう思っているのでしょうか」
どう思っているかだなんて……。
この質問の答えは正直に答えるべきなのか、それとも嘘をつくべきなのか判断ができず、私はすぐに答えを返すことができませんでした。
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