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10 公爵の提案
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「答えがすぐに出ないということは、少なくとも嫌いではないということですね」
使いの人は微笑んで続けます。
「改めて国王陛下から連絡があるでしょう。それまでは不審者がうろついているという理由で警察の見回りを強化します。犯罪を未然に防げれば褒美を渡すことにしますから、正義感がそう強くない人でも頑張ってくれることでしょう」
この国の警察は他の職種に比べて給料が良いので、お金のためだけに警察に就職する人がいる。お金をもらえれば罪をもみ消したり、便宜を図ったりするようなので、そうはさせないようにしたみたいです。
「お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします」
「承知いたしました。ユミリー様も警戒は怠らないようにしてください」
「わかっています。あの、国王陛下にもお礼を伝えてくださいませ」
元公爵令嬢で幼い頃に精神的に虐待されていた私を可哀想だと思って、ここまでしてくださっているのでしょう。普通はここまでしてくださる必要もないはずですが、一度、面倒を見ると決めたから、見捨てないでいてくださっているのかもしれませんね。
それから二日後、不審者がいると通報を受けたと言って大勢の警察官が集落にやって来ました。
何かと理由をつけて、自分を逮捕しようとする警察を恐れたのか、不審者は集落から去りました。泳がせて後をつけたところ、ジノス公爵家に入っていき、それからは姿が確認されていないとのことでした。
これでまた平穏な日々が戻って来ると、安易なことを考えていた十日後のことです。
ランフェスのお父様である、ディリング公爵の使いの方が私の所にやって来たのでした。
話の内容はランフェスのことで、このままでは彼が独身で生涯を終えてしまう可能性が高いことを憂いていると言うのです。
正直に言わせてもらいますと、そんなことを言われても私にはどうすることもできません。彼の気持ちは嬉しいと同時に申し訳なく感じるものです。かといって、彼の気持ちを私が受け入れることもできません。
「私のことを忘れるようにはできないのですか」
「あなたの元婚約者のジノス公爵は、他の女性と結婚してもあなたを忘れていません。それと同じことでしょう」
「自分で言うのもなんなのですが、私にそこまでの魅力があるとは思えません」
ランフェスもジノス公爵もどうしてここまで私にこだわるのでしょうか。私が知らない、もしくは覚えていない、巻き戻る前の出来事に関係しているということかしら。
「ディリング公爵はあなたに新しい身分を与え、あなたにランフェス様の妻になってほしいと言っておられます」
「そんな……。そんなことをしたら、すぐに私が誰だか、多くの貴族にわかってしまうのではないですか?」
「レイル王国の国民ではなく、遠い異国の地の身分です。調べようと思っても時間は掛かりますし、ハズレー王国と国交のない国です。あなたが表に出なければ、ジノス公爵も他の貴族も気づかないでしょう」
「ですが、表に出ないことも怪しまれるのでは?」
ジノス公爵はランフェスの動きを未だに気にしているようですから、妻が姿を見せないことを怪しむでしょう。
「あなたの影武者を用意します。表舞台には影武者を出せば良いだけです」
「……ランフェスはこの話を知っているのですか」
「いいえ。ぬか喜びをさせてはいけないので、あなたの返事を待ってから、その答えによって伝えるとのことだそうです」
少しの間、自分ひとりで考えてみましたが、やはり答えは出ませんでした。今日のところは帰ってもらい、その後、私は家族に相談してみたのでした。
使いの人は微笑んで続けます。
「改めて国王陛下から連絡があるでしょう。それまでは不審者がうろついているという理由で警察の見回りを強化します。犯罪を未然に防げれば褒美を渡すことにしますから、正義感がそう強くない人でも頑張ってくれることでしょう」
この国の警察は他の職種に比べて給料が良いので、お金のためだけに警察に就職する人がいる。お金をもらえれば罪をもみ消したり、便宜を図ったりするようなので、そうはさせないようにしたみたいです。
「お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします」
「承知いたしました。ユミリー様も警戒は怠らないようにしてください」
「わかっています。あの、国王陛下にもお礼を伝えてくださいませ」
元公爵令嬢で幼い頃に精神的に虐待されていた私を可哀想だと思って、ここまでしてくださっているのでしょう。普通はここまでしてくださる必要もないはずですが、一度、面倒を見ると決めたから、見捨てないでいてくださっているのかもしれませんね。
それから二日後、不審者がいると通報を受けたと言って大勢の警察官が集落にやって来ました。
何かと理由をつけて、自分を逮捕しようとする警察を恐れたのか、不審者は集落から去りました。泳がせて後をつけたところ、ジノス公爵家に入っていき、それからは姿が確認されていないとのことでした。
これでまた平穏な日々が戻って来ると、安易なことを考えていた十日後のことです。
ランフェスのお父様である、ディリング公爵の使いの方が私の所にやって来たのでした。
話の内容はランフェスのことで、このままでは彼が独身で生涯を終えてしまう可能性が高いことを憂いていると言うのです。
正直に言わせてもらいますと、そんなことを言われても私にはどうすることもできません。彼の気持ちは嬉しいと同時に申し訳なく感じるものです。かといって、彼の気持ちを私が受け入れることもできません。
「私のことを忘れるようにはできないのですか」
「あなたの元婚約者のジノス公爵は、他の女性と結婚してもあなたを忘れていません。それと同じことでしょう」
「自分で言うのもなんなのですが、私にそこまでの魅力があるとは思えません」
ランフェスもジノス公爵もどうしてここまで私にこだわるのでしょうか。私が知らない、もしくは覚えていない、巻き戻る前の出来事に関係しているということかしら。
「ディリング公爵はあなたに新しい身分を与え、あなたにランフェス様の妻になってほしいと言っておられます」
「そんな……。そんなことをしたら、すぐに私が誰だか、多くの貴族にわかってしまうのではないですか?」
「レイル王国の国民ではなく、遠い異国の地の身分です。調べようと思っても時間は掛かりますし、ハズレー王国と国交のない国です。あなたが表に出なければ、ジノス公爵も他の貴族も気づかないでしょう」
「ですが、表に出ないことも怪しまれるのでは?」
ジノス公爵はランフェスの動きを未だに気にしているようですから、妻が姿を見せないことを怪しむでしょう。
「あなたの影武者を用意します。表舞台には影武者を出せば良いだけです」
「……ランフェスはこの話を知っているのですか」
「いいえ。ぬか喜びをさせてはいけないので、あなたの返事を待ってから、その答えによって伝えるとのことだそうです」
少しの間、自分ひとりで考えてみましたが、やはり答えは出ませんでした。今日のところは帰ってもらい、その後、私は家族に相談してみたのでした。
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