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12 元婚約者の執念
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集落には観光する場所などありません。そのため、ジノス公爵が私のいる集落に来ることなどないと思っていました。ですが、彼の本当の目的はこの集落に来ることだったのです。
不審者を通報したことが悪かったわけではなく、最初から彼はここに自分の目で確かめに来るつもりでいたようです。このことをもう少し早く知っていれば、ディリング公爵の願いを聞いていたかもしれません。
かといって今更、匿ってくださいなんて言えません。
この頃にはお兄ちゃんも家に帰ってきていたので、心強いことは確かでしたが、不安がなくなるわけではなく、どうやって切り抜けようかと考えていた時、ディリング公爵の使いの人が我が家を訪ねてきた人がいました。いつもなら一人なのですが、今日はもう一人連れてきていました。
その人は体つきから女性だとはわかりましたが、フードを目深に被っていて顔がはっきりとは見えないため、性別はまだわかりません。
「遠路はるばるお越しいただき、ありがとうございます。ところで今日はどのようなお話しでしょうか」
家に入ってもらい、謎の人物ではなく使いの人に尋ねると、彼は深々と頭を下げます。
「突然の訪問をお詫びいたします。ですが、少しでも早く彼女をこちらに連れてくるべきだとランフェス様が判断されたのです」
「……どういうことでしょうか」
意味がわからなくて答えを急かすと、使いの人が答える前に、もう一人の人がフードを脱いで顔を見せてくれました。すぐに反応することはできませんでしたが、その女性の顔立ちは私に似ているように見えました。髪型や髪と瞳の色も同じです。
「ユミリー様の影武者として雇われた者です。ジノス公爵がこちらに来られている間、私がこちらで生活いたします。よろしくお願いいたします」
「そ、それはありがたいことなのですが、ジノス公爵が入国拒否をされることはないのでしょうか。彼は昔、かなり国を乱した人ですから……」
「今のところそれはないと思います。ハズレー王国の国王も代わりましたので、国王同士の関係も良くなっています。ジノス公爵も大人しくしていますから、過去のことだけで観光させないというわけにはいかないのです」
私的には甘い処置だと思ってしまいますが、反省している素振りを見せられたなら、多少は許すべき方向になってしまうのでしょう。
「家から出なければ、他の人に気づかれることはありません。雰囲気だけでしたらユミリー様と私は似ていますので、特徴を聞いただけでは違う人物だとはわからないかと思います」
「お気持ちはとてもありがたいのですが、どうして協力してくださるのですか」
「私はお金のためです」
女性ははっきりと答え、隣に座る使いの人は苦笑します。
「ジノス公爵の動きに気がついたランフェス様が、あなたを一時期だけ保護したいと言っておられるのです。もちろん、ディリング公爵夫妻はあなたを歓迎すると言っています」
「一時期だけですね」
ジノス公爵もそこまで長い間、集落にいないはずです。目の前にいる女性が私ではないとわかれば納得もするでしょう。
「ご迷惑をおかけして申し訳ないのですが、お力をお借りしてもよろしいでしょうか」
「もちろんでございます」
この日の晩、私と影武者の女性は入れ替わり、私はディリング公爵家に向かうことになったのでした。
不審者を通報したことが悪かったわけではなく、最初から彼はここに自分の目で確かめに来るつもりでいたようです。このことをもう少し早く知っていれば、ディリング公爵の願いを聞いていたかもしれません。
かといって今更、匿ってくださいなんて言えません。
この頃にはお兄ちゃんも家に帰ってきていたので、心強いことは確かでしたが、不安がなくなるわけではなく、どうやって切り抜けようかと考えていた時、ディリング公爵の使いの人が我が家を訪ねてきた人がいました。いつもなら一人なのですが、今日はもう一人連れてきていました。
その人は体つきから女性だとはわかりましたが、フードを目深に被っていて顔がはっきりとは見えないため、性別はまだわかりません。
「遠路はるばるお越しいただき、ありがとうございます。ところで今日はどのようなお話しでしょうか」
家に入ってもらい、謎の人物ではなく使いの人に尋ねると、彼は深々と頭を下げます。
「突然の訪問をお詫びいたします。ですが、少しでも早く彼女をこちらに連れてくるべきだとランフェス様が判断されたのです」
「……どういうことでしょうか」
意味がわからなくて答えを急かすと、使いの人が答える前に、もう一人の人がフードを脱いで顔を見せてくれました。すぐに反応することはできませんでしたが、その女性の顔立ちは私に似ているように見えました。髪型や髪と瞳の色も同じです。
「ユミリー様の影武者として雇われた者です。ジノス公爵がこちらに来られている間、私がこちらで生活いたします。よろしくお願いいたします」
「そ、それはありがたいことなのですが、ジノス公爵が入国拒否をされることはないのでしょうか。彼は昔、かなり国を乱した人ですから……」
「今のところそれはないと思います。ハズレー王国の国王も代わりましたので、国王同士の関係も良くなっています。ジノス公爵も大人しくしていますから、過去のことだけで観光させないというわけにはいかないのです」
私的には甘い処置だと思ってしまいますが、反省している素振りを見せられたなら、多少は許すべき方向になってしまうのでしょう。
「家から出なければ、他の人に気づかれることはありません。雰囲気だけでしたらユミリー様と私は似ていますので、特徴を聞いただけでは違う人物だとはわからないかと思います」
「お気持ちはとてもありがたいのですが、どうして協力してくださるのですか」
「私はお金のためです」
女性ははっきりと答え、隣に座る使いの人は苦笑します。
「ジノス公爵の動きに気がついたランフェス様が、あなたを一時期だけ保護したいと言っておられるのです。もちろん、ディリング公爵夫妻はあなたを歓迎すると言っています」
「一時期だけですね」
ジノス公爵もそこまで長い間、集落にいないはずです。目の前にいる女性が私ではないとわかれば納得もするでしょう。
「ご迷惑をおかけして申し訳ないのですが、お力をお借りしてもよろしいでしょうか」
「もちろんでございます」
この日の晩、私と影武者の女性は入れ替わり、私はディリング公爵家に向かうことになったのでした。
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