次は間違えないと言われましても

風見ゆうみ

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14  どうしても元婚約者が忘れられない元王子(トーマス視点)

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 ユミリーに似た人物がいると聞いた時、僕はその女性がユミリーだと確信した。かといって、何の理由もなく隣国に行くのは難しかった。まずは人を使って調べさせようとしたが無理だった。集落というのは人と人とのつながりが強く、皆が顔見知り以上の関係なのだ。となると、よそ者が歩いていれば目立つし警戒される。そのせいで警察を呼ばれる事態になった。
 結局、ユミリーなのかはわからないまま調査が終わったため、観光という理由で僕自らが出向くことにした。

「まだ、ユミリー様のことを忘れられないのですか? もう諦めて、わたくしと一緒に幸せを探しませんか?」

 ユミリーらしき人物がいるという集落に着いた時、ファルナが僕の腕に頬を寄せて言った。
 
「諦められるわけがないだろう! 僕が時間を巻き戻すためにどれだけの労力を費やしたと思っているんだ!」

 声を荒らげるとファルナはびくりと体を震わせ、僕から距離を取って尋ねてくる。

「そんなにも愛していたのに、どうしてユミリー様を殺めてしまったのですか?」
「君にどうこう言われたくない。君がユミリーとランフェスが浮気していると嘘をついたんだ。君の嘘を信じて僕は彼女を!」
「わたくしはランフェス様とユミリー様がお部屋で話をしていたと言っただけですわ」
「二人きりだと嘘をついたじゃないか!」

 あの時、ユミリーとランフェスが密室で二人きりで話をしていたとファルナは言った。僕はユミリーに裏切られたことが許せなくて、確認もせずに深夜に部屋を訪れ眠っている彼女を刺した。
 痛みで目が覚めたようだけど、声が出せないようにした。驚いた顔をしていたけれど、罪悪感は感じなかった。僕を裏切った罰だと思ったからだ。でも、真実は違っていた。実際は二人きりではなくメイドやランフェス以外の兵士も一緒にいたんだ。

 当たり前の事だが、僕は父上に国外追放を言い渡され、隣国を行く当てもなく彷徨っていた。そんな時に僕は自分のことを魔女だと言う女に出会った。その魔女に拾われた僕は彼女と一緒に暮らし始めた。そうしている内に魔女は僕のことを気に入り、僕と結婚したいと言った。

 その時の僕は彼女のことを魔女だなんて思ってもいなかったし、彼女を愛していなかった。彼女と結婚したくなくて、僕はこう言った。

『僕と結婚したいなら時を巻き戻してくれ』
『そんなことをしたら、あたしと結婚できないじゃない!』
『大丈夫だ。僕が君を探してやる』

 そんな会話をした日の朝、目が覚めると時が巻き戻っていたんだ。

 僕の目的はユミリーだ。彼女の遺体をこの目で見るまでは、彼女のことを諦めたりしない。魔女のことなんてどうだっていいんだ。
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