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21 公爵は知らぬ間に没落の道を進む ②
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数日後、トーマス様たちの現状をランフェスから教えてもらうことになりました。
「君の家族から報告があって、トーマス様はやはり家に訪ねてきたそうだ。そして、魔女……じゃなくて、ユミと会っている」
「二人はどうなったの? 穏便に話ができたのかしら」
「いや、修羅場だったと聞いた。一緒にファルナ嬢も来ていたそうで、トーマス様に結婚するように求めるユミに掴みかかろうとしたらしい」
「……本当にファルナはトーマス様が好きなのね」
巻き戻る前の私とトーマス様を引き離すために嘘をついて、見事に私を排除しました。たまたまかもしれませんが、トーマス様の性格を知っているからやったことだと思います。
その時の私はトーマス様のことをどう思っていたのでしょう。トーマス様は愛し合っていたと言っていたけれど、それは本当のことなのかしら。
「ねえ、ランフェス。巻き戻る前の私は、トーマス様のことをどう思っていたのかしら」
「わからない。ただ、嫁ぐことになってハズレー王国に行くと決まった君は、別に悲しんでいるようには見えなかった」
「嬉しそうには見えた?」
「昔の君はどんな時でも笑っていた。今の君を見て、我慢して笑っていたのかと思うようになっている。だから、嬉しそうに見えたかというと……」
「我慢して笑っているように見えたのね」
ランフェスは眉尻を下げて頷きました。
きっと、私には嫁ぐ道しかなかったのでしょう。トーマス様はそんな私の気持ちには気づかずに愛し合っていると思い込んだといったところかしら。
ユミはトーマス様からそう聞かされていたでしょうし、彼女が私の記憶を戻さないのは、トーマス様と上手くいってほしくないからという気がしてきました。
口には出しませんが、私が記憶を取り戻せば、トーマス様をまた好きになると思っているのかもしれません。そんな私を排除しようとしないのは、ユミなりの私の過去への同情心なのでしょう。
というか、そんな人とよく結婚したいと思えますよね。
「話題を変えてもいいか」
「かまわないわよ」
「ユミリー、俺は今度こそ君を守りたい。もう一度、俺との婚約を考えてくれないだろうか」
『次は』と聞くと、トーマス様を彷彿させるからか、ランフェスは『今度こそ』という言葉にしてくれたみたいです。
気持ちはありがたいです。でも、ランフェスの気持ちを受け入れれば、彼に迷惑をかけることになるでしょう。
「聞いてもいい?」
「どうした?」
「私と婚約、結婚することになれば、必ずトーマス様が出てくると思う。その時、私はトーマス様との次をなくすために動きたいの。あなたを巻き込んでしまうけれど、それは良い?」
「それを覚悟の上で守りたいと言ったんだ」
微笑んで頷いてくれたランフェスに、私も微笑み返す。
「では、よろしくお願いいたします」
「……良かった」
深々と頭を下げると、ランフェスが手で顔を覆って呟きました。
断られると思っていたのでしょうか。顔を覆っていた手を戻し、嬉しそうにしているランフェスを見た私は、彼に対する愛しさが込み上がってくるのを感じたのでした。
トーマス様の言葉を借りるなら、私も次は間違えません。トーマス様との関係に今度こそ終止符を打つことにしましょう。
「君の家族から報告があって、トーマス様はやはり家に訪ねてきたそうだ。そして、魔女……じゃなくて、ユミと会っている」
「二人はどうなったの? 穏便に話ができたのかしら」
「いや、修羅場だったと聞いた。一緒にファルナ嬢も来ていたそうで、トーマス様に結婚するように求めるユミに掴みかかろうとしたらしい」
「……本当にファルナはトーマス様が好きなのね」
巻き戻る前の私とトーマス様を引き離すために嘘をついて、見事に私を排除しました。たまたまかもしれませんが、トーマス様の性格を知っているからやったことだと思います。
その時の私はトーマス様のことをどう思っていたのでしょう。トーマス様は愛し合っていたと言っていたけれど、それは本当のことなのかしら。
「ねえ、ランフェス。巻き戻る前の私は、トーマス様のことをどう思っていたのかしら」
「わからない。ただ、嫁ぐことになってハズレー王国に行くと決まった君は、別に悲しんでいるようには見えなかった」
「嬉しそうには見えた?」
「昔の君はどんな時でも笑っていた。今の君を見て、我慢して笑っていたのかと思うようになっている。だから、嬉しそうに見えたかというと……」
「我慢して笑っているように見えたのね」
ランフェスは眉尻を下げて頷きました。
きっと、私には嫁ぐ道しかなかったのでしょう。トーマス様はそんな私の気持ちには気づかずに愛し合っていると思い込んだといったところかしら。
ユミはトーマス様からそう聞かされていたでしょうし、彼女が私の記憶を戻さないのは、トーマス様と上手くいってほしくないからという気がしてきました。
口には出しませんが、私が記憶を取り戻せば、トーマス様をまた好きになると思っているのかもしれません。そんな私を排除しようとしないのは、ユミなりの私の過去への同情心なのでしょう。
というか、そんな人とよく結婚したいと思えますよね。
「話題を変えてもいいか」
「かまわないわよ」
「ユミリー、俺は今度こそ君を守りたい。もう一度、俺との婚約を考えてくれないだろうか」
『次は』と聞くと、トーマス様を彷彿させるからか、ランフェスは『今度こそ』という言葉にしてくれたみたいです。
気持ちはありがたいです。でも、ランフェスの気持ちを受け入れれば、彼に迷惑をかけることになるでしょう。
「聞いてもいい?」
「どうした?」
「私と婚約、結婚することになれば、必ずトーマス様が出てくると思う。その時、私はトーマス様との次をなくすために動きたいの。あなたを巻き込んでしまうけれど、それは良い?」
「それを覚悟の上で守りたいと言ったんだ」
微笑んで頷いてくれたランフェスに、私も微笑み返す。
「では、よろしくお願いいたします」
「……良かった」
深々と頭を下げると、ランフェスが手で顔を覆って呟きました。
断られると思っていたのでしょうか。顔を覆っていた手を戻し、嬉しそうにしているランフェスを見た私は、彼に対する愛しさが込み上がってくるのを感じたのでした。
トーマス様の言葉を借りるなら、私も次は間違えません。トーマス様との関係に今度こそ終止符を打つことにしましょう。
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