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22 公爵は知らぬ間に没落の道を進む ③ (トーマス視点)
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家に帰り着くまでは最悪の環境だった。ファルナとセレスがどこにいてもずっといがみ合っていたからだ。僕が席を外そうとすると二人とも付いてくるし、用を足す時にも扉の前で待っている。長い時間こもっていればノックされるし、自由な時間など一切なかった。
「どうして魔女を連れ帰るんですの? そんな義理はありまして?」
セレスが入浴している間に、ファルナは文句を言ってきた。
それを言うなら僕が彼女と結婚したのも情けみたいなものだから、離婚しても良いのかと聞きたい。
「仕方がないじゃないか。彼女は魔女だぞ。怒りを買って余計なことをされては困るじゃないか」
そんな質問をしたら火に油を注ぐだけだ。口に出すことはせず、僕は無難な答えを返した。
「信じられません! わたくしは巻き戻る前からずっと、あなたをお慕いしていたのですよ! それなのに、ポッと出てきたあの女なんかに負けたくありませんわ!」
「まあまあ落ち着いてくれよ。僕の妻は君だ。それに変わりはないだろう?」
「では、あの女を追い出してくださいませ!」
「だからさっきも言っただろう! 彼女は魔女だから恨まれたら大変なことになるかもしれない」
言い合っていると、セレスが僕の部屋に戻ってきた。僕たちが言い合っている声が、廊下にも聞こえていたらしく、彼女はにやりと笑う。
「喧嘩するくらいなら別れたらどうなの?」
「喧嘩の原因はあなたですわ! あなたがいなくなれば別れる必要はありません!」
「嫌よ。私が鬱陶しいと思うなら、あなたがここから出ていけば?」
「なんですって!?」
「ああ、こわいこわい。そうだわ、トーマス。執事から手紙を預かっているの」
「ありがとう」
風呂上がりだというのに、魔法で乾かしたのか髪がまったく濡れていない。髪を乾かせるということは風の魔法が使えるんだろう。暴風の魔法なんて使われたら最悪だ。
あまり機嫌を損ねないようにしなければ。
受け取ったのは、ランフェスを監視させている男からの手紙だった。
また言い争いを始めた二人から少し離れ、封が切られた封筒から便箋を取り出す。
そこに書かれていたのは、ランフェスが他国の貴族と結婚するのだという、驚きの内容だった。
あのランフェスが結婚? そんな馬鹿な! あいつは僕と同じでユミリー一筋だったはずだ。
……もしかして、相手はユミリー!? 絶対にそうだ! あのランフェスが他の女を選ぶわけがない!
政略結婚ならすぐに結婚はありえる話かもしれない。でも、相手はあのランフェスだ。そんなことをするくらいなら、除籍されたほうがマシだとつっぱねるだろう。
ユミリーは僕のものだ。何としてでも結婚を阻止しなければ――
この時の僕は、これがユミリーたちの罠だなんて予想もしていなかった。
「どうして魔女を連れ帰るんですの? そんな義理はありまして?」
セレスが入浴している間に、ファルナは文句を言ってきた。
それを言うなら僕が彼女と結婚したのも情けみたいなものだから、離婚しても良いのかと聞きたい。
「仕方がないじゃないか。彼女は魔女だぞ。怒りを買って余計なことをされては困るじゃないか」
そんな質問をしたら火に油を注ぐだけだ。口に出すことはせず、僕は無難な答えを返した。
「信じられません! わたくしは巻き戻る前からずっと、あなたをお慕いしていたのですよ! それなのに、ポッと出てきたあの女なんかに負けたくありませんわ!」
「まあまあ落ち着いてくれよ。僕の妻は君だ。それに変わりはないだろう?」
「では、あの女を追い出してくださいませ!」
「だからさっきも言っただろう! 彼女は魔女だから恨まれたら大変なことになるかもしれない」
言い合っていると、セレスが僕の部屋に戻ってきた。僕たちが言い合っている声が、廊下にも聞こえていたらしく、彼女はにやりと笑う。
「喧嘩するくらいなら別れたらどうなの?」
「喧嘩の原因はあなたですわ! あなたがいなくなれば別れる必要はありません!」
「嫌よ。私が鬱陶しいと思うなら、あなたがここから出ていけば?」
「なんですって!?」
「ああ、こわいこわい。そうだわ、トーマス。執事から手紙を預かっているの」
「ありがとう」
風呂上がりだというのに、魔法で乾かしたのか髪がまったく濡れていない。髪を乾かせるということは風の魔法が使えるんだろう。暴風の魔法なんて使われたら最悪だ。
あまり機嫌を損ねないようにしなければ。
受け取ったのは、ランフェスを監視させている男からの手紙だった。
また言い争いを始めた二人から少し離れ、封が切られた封筒から便箋を取り出す。
そこに書かれていたのは、ランフェスが他国の貴族と結婚するのだという、驚きの内容だった。
あのランフェスが結婚? そんな馬鹿な! あいつは僕と同じでユミリー一筋だったはずだ。
……もしかして、相手はユミリー!? 絶対にそうだ! あのランフェスが他の女を選ぶわけがない!
政略結婚ならすぐに結婚はありえる話かもしれない。でも、相手はあのランフェスだ。そんなことをするくらいなら、除籍されたほうがマシだとつっぱねるだろう。
ユミリーは僕のものだ。何としてでも結婚を阻止しなければ――
この時の僕は、これがユミリーたちの罠だなんて予想もしていなかった。
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