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2 婚約破棄に乾杯
「じょ、冗談よね?」
彼の言葉が信じられなくて、思わず聞き返してしまった。
私に求婚してくれた彼、ミラン・ミーグスは漆黒のストレートの髪を持ち、おろした前髪、横髪共に長めで、長身でモデル体型。
瞳は燃えるような赤い色。
吊り目気味ではあるけれど、整った顔立ちをしていて、眉目秀麗で、女子生徒にだけでなく、一部の男子生徒にも人気がある。
そんな彼に、爵位は低いし、見た目もそう可愛くない私が結婚を申し込まれた!?
冗談に決まってるわよね!?
「冗談じゃない。本気だ」
「え、あ、でも」
気持ちは嬉しい。
だけど、私は男爵令嬢で彼は公爵家の長男だから、身分の差がありすぎる。
公爵家の長男という事は次期公爵になる人なんだから。
というか、そんな人が私にプロポーズする?
しかも、口を開けば憎まれ口を叩きあうばかりで、ミランなんて、今までそんな素振りは一切見せてなかったのに!?
「婚約じゃなくて結婚?」
「もちろん、卒業してからでいい」
「私と結婚だなんて…、何が目的なの?」
「それは…」
彼が口を開いたところで予鈴が鳴り、話は強制的に終了となった。
といっても、この何分かの間に色々な出来事が起こりすぎて、その後の授業は、ほとんど集中する事が出来なかった。
そして、その日の昼休みの事だった。
学生の多くは食堂で食べるか、持参したお弁当を教室内や食堂で食べる。
私とキキはいつも教室内で、アンジェリカは他の友人達と食堂で食べているのだけど、今日はアンジェリカも含め、私と仲の良い女子のクラスメイトは全て、教室内にいた。
食事を家から持参していない子は、食堂で売っているサンドイッチなどをわざわざ買ってきたようだった。
「で、どうするんですの?」
金色の縦ロールの横髪を後ろにはらいながら、アンジェリカは聞いてきた。
「どうするの、って?」
「結婚するんですの?」
「まさか、ミランだって本気じゃないでしょ」
私が首を横に振ると、アンジェリカ達がしかめっ面をするので聞いてみる。
「え、なんなの、その顔?」
「ミラン様とあなたは仲がよろしいですわよね?」
「仲が良いというか、喧嘩ばかりだし」
ミランには素直になれないのと、向こうも憎まれ口ばかり叩いてくるので口喧嘩ばかりしていた。
私としては、彼のことが好きなので、そんな喧嘩でも嬉しかったりしたのは確かなんだけど…。
だって、好きな人となら、口喧嘩であろうとも、ただ話せるだけで幸せじゃない?
「ミラン様が冗談であんな事を言うとは思えないわ!」
向かいに座るキキが興奮した様子で言う。
それに関しては、私も同意見。
嫌な事を言ってくる時もあるけど、こんな冗談を言う人間ではないのよね。
「ミラン様となんて羨ましいわぁ。あのバカが婚約破棄してくれてラッキーだったわね」
「ちょっと俺様っぽいところがあるけど、あの顔だから許せちゃうのよ」
「イケメンだから許せるよねぇ」
「顔が良くなかったら、ないわ」
私を取り囲んでいる友人達が口々にうらやましそうな顔をして言う。
ミランは同じクラスだけど、食堂に行っているから、今はこの場にはいない。
だから、皆、好きなことを言っている。
「ただ、まだ、婚約を解消するのかわからないわよ。ジッシーが一人で言っているだけだからね。親の了承が必要よ。まあ、私の家は婚約破棄を受け入れていいって言ってくれると思うけど」
「それはそうでしょうね」
私が苦笑して言った言葉に、アンジェリカが代表して頷いた時だった。
「リディア!」
やって来たのは、私に婚約解消を言い出してきた男、ジッシーだった。
私はご飯を食べる手を止めて、教室に入ってきて、教壇付近で立ち止まった彼の方に無言で顔を向ける。
「リディア、朝の件だが、僕は本気なんだ。だから、婚約解消してくれないか」
「嫌よ。あれだけ恥ずかしい目に合わされたんだから、円満に婚約解消なんて無理。あなたの方から婚約破棄して下さい」
きっぱり答えると、ジッシーはもじゃもじゃの髪をかき乱しながら言う。
「そんな事ができるわけないじゃないか! だから、内緒で付き合おうと思っていたのに!」
「内緒で付き合ってても、婚約破棄案件だからね?」
「君から言ってくれればいいんだ!」
ジッシーは意味がわからない事を言ってくる。
私から言い出してもいいけど、理由が理由だから、慰謝料などを請求できると思う。
ジッシーは言い出した方が契約違反だと思っているようだけど、そんなもの、どちらから言いだそうと悪い方が悪いでしょ。
「リディア、あなたのお家から言った方が早そうね」
「みたいね」
キキの言葉に頷いてから、ジッシーに告げる。
「わかったわ。正式にお父様から依頼を入れてもらいましょう。だけど後悔しないでね?」
「する訳がない! 君は知らないかもしれないが、彼女は伯爵令嬢で、君の家よりも爵位が上なんだから」
「そう、わかったわ。彼女とお幸せに」
ひらひらと手を振って、帰ってもらうように促す。
ジッシーは、私の答えを聞いて満足そうな顔をした後、何も言わずに教室を出ていった。
「彼はないわぁ」
ジッシーが出て行った後、友人の一人がしみじみと呟いた。
「婚約破棄おめでとう」
キキがそう言って、お茶の入ったコップを私に差し出してきたので、自分のコップを手に取り乾杯した。
彼の言葉が信じられなくて、思わず聞き返してしまった。
私に求婚してくれた彼、ミラン・ミーグスは漆黒のストレートの髪を持ち、おろした前髪、横髪共に長めで、長身でモデル体型。
瞳は燃えるような赤い色。
吊り目気味ではあるけれど、整った顔立ちをしていて、眉目秀麗で、女子生徒にだけでなく、一部の男子生徒にも人気がある。
そんな彼に、爵位は低いし、見た目もそう可愛くない私が結婚を申し込まれた!?
冗談に決まってるわよね!?
「冗談じゃない。本気だ」
「え、あ、でも」
気持ちは嬉しい。
だけど、私は男爵令嬢で彼は公爵家の長男だから、身分の差がありすぎる。
公爵家の長男という事は次期公爵になる人なんだから。
というか、そんな人が私にプロポーズする?
しかも、口を開けば憎まれ口を叩きあうばかりで、ミランなんて、今までそんな素振りは一切見せてなかったのに!?
「婚約じゃなくて結婚?」
「もちろん、卒業してからでいい」
「私と結婚だなんて…、何が目的なの?」
「それは…」
彼が口を開いたところで予鈴が鳴り、話は強制的に終了となった。
といっても、この何分かの間に色々な出来事が起こりすぎて、その後の授業は、ほとんど集中する事が出来なかった。
そして、その日の昼休みの事だった。
学生の多くは食堂で食べるか、持参したお弁当を教室内や食堂で食べる。
私とキキはいつも教室内で、アンジェリカは他の友人達と食堂で食べているのだけど、今日はアンジェリカも含め、私と仲の良い女子のクラスメイトは全て、教室内にいた。
食事を家から持参していない子は、食堂で売っているサンドイッチなどをわざわざ買ってきたようだった。
「で、どうするんですの?」
金色の縦ロールの横髪を後ろにはらいながら、アンジェリカは聞いてきた。
「どうするの、って?」
「結婚するんですの?」
「まさか、ミランだって本気じゃないでしょ」
私が首を横に振ると、アンジェリカ達がしかめっ面をするので聞いてみる。
「え、なんなの、その顔?」
「ミラン様とあなたは仲がよろしいですわよね?」
「仲が良いというか、喧嘩ばかりだし」
ミランには素直になれないのと、向こうも憎まれ口ばかり叩いてくるので口喧嘩ばかりしていた。
私としては、彼のことが好きなので、そんな喧嘩でも嬉しかったりしたのは確かなんだけど…。
だって、好きな人となら、口喧嘩であろうとも、ただ話せるだけで幸せじゃない?
「ミラン様が冗談であんな事を言うとは思えないわ!」
向かいに座るキキが興奮した様子で言う。
それに関しては、私も同意見。
嫌な事を言ってくる時もあるけど、こんな冗談を言う人間ではないのよね。
「ミラン様となんて羨ましいわぁ。あのバカが婚約破棄してくれてラッキーだったわね」
「ちょっと俺様っぽいところがあるけど、あの顔だから許せちゃうのよ」
「イケメンだから許せるよねぇ」
「顔が良くなかったら、ないわ」
私を取り囲んでいる友人達が口々にうらやましそうな顔をして言う。
ミランは同じクラスだけど、食堂に行っているから、今はこの場にはいない。
だから、皆、好きなことを言っている。
「ただ、まだ、婚約を解消するのかわからないわよ。ジッシーが一人で言っているだけだからね。親の了承が必要よ。まあ、私の家は婚約破棄を受け入れていいって言ってくれると思うけど」
「それはそうでしょうね」
私が苦笑して言った言葉に、アンジェリカが代表して頷いた時だった。
「リディア!」
やって来たのは、私に婚約解消を言い出してきた男、ジッシーだった。
私はご飯を食べる手を止めて、教室に入ってきて、教壇付近で立ち止まった彼の方に無言で顔を向ける。
「リディア、朝の件だが、僕は本気なんだ。だから、婚約解消してくれないか」
「嫌よ。あれだけ恥ずかしい目に合わされたんだから、円満に婚約解消なんて無理。あなたの方から婚約破棄して下さい」
きっぱり答えると、ジッシーはもじゃもじゃの髪をかき乱しながら言う。
「そんな事ができるわけないじゃないか! だから、内緒で付き合おうと思っていたのに!」
「内緒で付き合ってても、婚約破棄案件だからね?」
「君から言ってくれればいいんだ!」
ジッシーは意味がわからない事を言ってくる。
私から言い出してもいいけど、理由が理由だから、慰謝料などを請求できると思う。
ジッシーは言い出した方が契約違反だと思っているようだけど、そんなもの、どちらから言いだそうと悪い方が悪いでしょ。
「リディア、あなたのお家から言った方が早そうね」
「みたいね」
キキの言葉に頷いてから、ジッシーに告げる。
「わかったわ。正式にお父様から依頼を入れてもらいましょう。だけど後悔しないでね?」
「する訳がない! 君は知らないかもしれないが、彼女は伯爵令嬢で、君の家よりも爵位が上なんだから」
「そう、わかったわ。彼女とお幸せに」
ひらひらと手を振って、帰ってもらうように促す。
ジッシーは、私の答えを聞いて満足そうな顔をした後、何も言わずに教室を出ていった。
「彼はないわぁ」
ジッシーが出て行った後、友人の一人がしみじみと呟いた。
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キキがそう言って、お茶の入ったコップを私に差し出してきたので、自分のコップを手に取り乾杯した。
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