あなたに未練などありません

風見ゆうみ

文字の大きさ
27 / 40

第24話 旅立つ前日

しおりを挟む
 キャロライン達はその後、ジェレミー殿下が予想した通り、わたしに会いたいと泣きわめいて暴れたらしく、城の女性騎士により城の敷地内から追い出されたらしかった。

 ジェレミー殿下の予想では、彼女達の父親は爵位を剥奪される事になる為、現在、通っている学園にはもう通えなくなるだろうとの事だった。
 ヘイスト殿下が減刑を希望した事で、資産の全てを没収される事はなく、それぞれの家に残っている現金に関しては自由に使える様にさせる事になるだろうとも言っていた。

 更生の機会を与えることもなく、路頭に迷えというやり方はさすがに良くないという意見が出ているからだそう。
 嘘をついた相手が王族でなければ、ここまで重い罪にならなかったという事と、キャロライン達が16歳という若さだという事もあるみたいだし、わたし自身もそこまで重い罪は正直望んでいなかった。

 大事なのは本当に反省してくれているかだけ。

 平民になったからといって彼女達は自分のした事を後悔する事はあっても、反省をするかどうかは別だから。

 そうこうしている内に、わたしがモナウ家に出発する日が近付き、とうとう明日には出発という日になった。
 
 ファブロー公爵が抗議した事により、ヘイスト殿下は、学園には通っているらしい。
 
 学園に通いたいとヘイスト殿下が希望したらしく、ファブロー公爵はそれを拒むようなら、新聞社に両陛下が王子を虐待しているという話をすると脅してきたらしかった。
 それに対して、両陛下も虐待ではなく、必要な処置をしていると答えたのだそうだけれど、部屋に閉じ込めている理由が勝手な事を言いだしたり行動をするからだという事では、さすがに世間に対して謹慎させている理由としては弱かった。

 だからせめて、学園に通わせるという事は許可された。
 一番の目的は私に近づけさせない様にする事で、わたしがここを発てば自ずと行動の制限は解除されていただろうからというのもある。

 わたしのせいで両陛下にまで迷惑をかけてしまった。

 両陛下とジェレミー殿下もファブロー公爵の事について影を使って調べていて、以前、ファブロー公爵が好きだった女性が亡くなったという話について、きな臭い情報を手に入れたそう。

 それは、とある記事を書いた記者の不審死だった。
 不審の死を遂げた家族からもたらされた情報によると、事故から約100日が経ったかという頃、とあるゴシップ紙に、女性の死に対する疑問や、その事故にフと名の付く貴族が関わっているのではないかという記事を書いた記者がいた。

 それから数日後、その人の職場の方に脅迫状が送られてきたそうで、この事件に手を引かなければ命がどうなるかわからないぞという様な事が書かれていたらしい。

 けれど、その人はそこで引かなかった。
 そんな手紙が来るという事は、明らかに自分の書いた事が間違っていないという証拠だと考え、家族が止めるのも聞かずに調べていた。
 そしてある日、その人が物言わぬ姿となって川に浮かんでいるところが見つかったらしい。

 わたしももちろん考えたのだけれど、ジェレミー殿下も両陛下も、ファブロー公爵がこの事件に関わっているのではないかと考えたし、それは当時の周りの人達も同じだった。

 同じ様な目にあいたくないと考えた記者達は、誰一人、この事を記事にしなかった為、王家はもちろんの事、一般の人達も、その当時はこの事を知る事はなかったんだそう。
 ただ、家族の人達は周りの人にファブロー公爵に殺されたんだと言っていたそうで、それを覚えていた人が見つかり、今回の事が明るみになった。

 といっても、だいぶ前の話なので証拠などあるわけもないのだけれど。

 ただ、新聞記者の人達はファブロー公爵に逆らうと自分達も殺されてしまうという恐怖を植え付けられてしまい、ファブロー公爵からの命令は聞かざるを得ない状況になっているらしい。

 ファブロー公爵はどうして、そんなに酷い人になってしまったのかしら。
 歴史を調べれば、かなり昔の国王に暴君がいたらしいから、もしかして、その血が…?
 なんて思ったけれど、それだけじゃないわよね。
 どんなに良い人から生まれても、道を踏み外してしまう人もいるだろうから。

 出発の前日という事で、今日の夕食はジェレミー殿下ととる事になった。
 短い間だったけれど、毎日顔を合わせていたからか、明日から会えなくなると思うと何だか寂しくなってきた。

 その気持ちが伝わったのか、向かい側に座っているジェレミー殿下が、不思議そうに首を傾げて聞いてくる。

「浮かない顔をしてるけれど、どうかしたの?」
「あ…、その、明日からもうこんな風にお話ができなくなるのだなと思うと寂しくなってきて」

 持っていたフォークを置いて素直に気持ちを伝えると、ジェレミー殿下は淋しげに微笑む。

「それは私も同じだよ。だけど、君はまだ学生の年齢だし、若い内に出来る事をしておくのも悪くない。もちろん、どうしてもここに居たいというのなら別だけど」
「ここに居たいという気持ちと、嫌な思い出ばかりのこの地から離れたい気持ちもあって…。だけど、やっぱり、わたしを養女にしてくださると言ってくださったモナウ家の方に申し訳ないですから、明日は笑顔でここを発つつもりです」
「うん。わかってるよ。それに長いお別れでもない」

 ジェレミー殿下は頷いてから話題を変えてくる。

「ヘイストの事だけど、正式にファブロー家への養子が決まりそうだよ」
「……そうなんですか?」
「ああ。だけど、そうなるとファブロー公爵家の評判が地に落ちる可能性があるので、叔父上の本当の子供である、俺にとっては従兄弟のアーリーを逆に王家の養子にすればいいんじゃないかという話になっている」
「そ、そうなんですか!?」
「アーリーは王位継承権については、養子になった場合は放棄すると言っている。このままだと、ファブロー公爵家が危ないという事はわかっているから、安全圏に逃げたいんだろう。父上と母上は難色を示しているが、宰相達はヘイストが何かやらかす前に切り捨てたい様だね」

 子供を交換するみたいな事になるなんて無茶苦茶だわ。
 ただ、国の事を考えるとアーリー様には王位継承権の放棄はまだやめておいてほしいけれど、そんな事を言うと、ジェレミー殿下に何か起きそうな気がして嫌だし、わたしがどうこう言える立場でもない。

 でも、ヘイスト殿下をファブロー公爵の養子にして、アーリー様が王家の養子になるとしたら、ファブロー公爵家を潰しやすくなるのは確かだわ。

「ヘイストをファブロー公爵家の養子に出せば、ヘイストは自由になるから君に近付こうとするかもしれないが、そうなる前に先手は打つから安心してくれ」
「……そんな事が出来るんですか?」
「ああ。ヘイストを養子に出す際に色々と条件を出すつもりだ」

 ジェレミー殿下から、養子に出す際の条件を聞いて、わたしの顔にもつい笑みがこぼれてしまう。

「ヘイスト殿下の悔しがる顔が想像できます。ファブロー公爵もきっと怒るでしょうね」
「だろう? だけど、そんな事は知った事ではない。感情に任せれば粗が見えてくるだろう。条件が揃えばファブロー公爵家を潰すつもりだ。出来れば、それまでにヘイストが目を覚ましてくれたらいいけど…」

 ファブロー公爵は裏できっと悪い事を他にもしていそうだもの。
 それにヘイスト殿下が公爵家を継いでも領民が可哀想よね。
 上手くいくかはわからないけれど、わたしは迷惑をかける事だけはしない様にしないといけないわ。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

私より幼馴染を選んだ婚約者に別れを告げたら謝罪に来ましたが、契約を守れない貴族とは取引しませんので

藤原遊
恋愛
祖父が創立した大商会で、跡継ぎとして働いている私。 けれど婚約者は、私より幼馴染を選びました。 それなら構いません。 婚約という契約を守れない相手と、これ以上関係を続けるつもりはありませんから。 祖父の商会は隣国と新たな取引を始めることになりました。 ――その途端、なぜか元婚約者が謝罪に来るようになりましたが、もう遅いです。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

処理中です...