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閑話 ジーギスとレニスのその後
しおりを挟む時は少し遡り、レニスのいる土地にたどり着いたジーギスは、胸を躍らせて馬車から降りた。
しかし、そこは彼が想像していたような家はなく酒場の前だった。
(どういうことだ? 送り届ける先を間違えたのか?)
「おい、ここは酒場じゃないか。どうしてこんな所で降ろすんだよ」
「ジーギス様、ここにレニス様はいらっしゃいますので、お確かめになってください」
御者に困った顔をで言われたジーギスは、渋々だが酒場に入り、レニスの居場所を聞くことにした。
もう、太陽が沈む時間で酒場はすでに開店していた。
店の中から騒がしい声が聞こえてきて、ジーギスは眉間にしわを寄せた。
(どうしてこの俺が下品な奴らしかいない店の中に入らないといけないんだ)
心の中で文句を言ったあと、馬車には荷物をのせているため、その場で待つように御者に声をかけて店の中に入る。
「いらっしゃいませぇ!」
元気な女性の声のあとに「いらっしゃいませ」とやる気のない声が聞こえてきた。
やる気のない声がジーギスにとっては聞き覚えのあるものだったので、店の中を見回し、ジーギスは声の主をを見つけて近寄る。
「レ、レニス? いや、違うよな?」
「……? ああ、誰かと思ったら、ジーギス様じゃないですか。わたしがレニスですよ」
ジーギスの目の前には、昔の面影がほとんどなくなってしまったレニスがいた。
過労のせいなのか、もしくはストレスのせいなのか、肌が荒れ髪は艶を失い、目には生気がなくなっていた。
元々、痩せ型だったが、病気かと思うくらいにやせ細ってしまったレニスを見て、ジーギスは動揺する。
(ど、ど、どうして、こんなブサイクな女になってしまったんだ? 俺の可愛いレニスはどこにいったんだよ!?)
「もしかして、わたしに会いに来てくれたんですか? なら、飲んでいってくださいよ。私、この店で一番人気なんですよ」
レニスに腕を掴まれたジーギスは、慌てて彼女の手を振り払って逃げ出した。
「違う! 俺のレニスはあの女じゃない!」
店の外に出て、ジーギスはそう叫ぶと、御者に命令する。
「明日に改めてレニスを探す。しばらく探して見つからなかったら移動だ!」
「そ、そんな! 移動しても見つからなかったらどうされるんですか?」
中年の御者が涙目になって尋ねると、ジーギスはとんでもないことを口にする。
「見つからなかったら、ロードの家に向かってくれ。ミレニアに婚約を申し込もうと思う」
ジーギスの発言を聞いた御者は、話が通じる相手ではないと諦めて、馬車の扉を開けた。
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