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28 行方不明の元婚約者
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今日のルシエフ邸はいつもよりも騒がしかった。
ロード様は仕事で昨日から家を空けておられて、今日の夕方には帰ってくる予定になっている。
昨日の晩にジーギス様がお姉様の所へ行ったけれど、お姉様ではないと言い放ち旅を始めたと連絡が来た時には頭痛を覚えた。
気持ちが沈んでしまったけれど、のんびりもしていられない。
現在、ルシエフ邸の庭には十数人の庭師が集まっていた。
ルシエフ公爵邸には当たり前だけれど庭師がいる。
気候の良い時期になると、常駐している庭師だけでは追いつかないほどに草が成長する。
そうなると、助っ人として一年に何日かだけ、外部から庭師を呼び寄せて、庭の管理を手伝ってもらうのだそうだ。
それと同時に庭園のスタイルが流行に沿っているかなどのチェックもしてもらうらしい。
庭のセンスによっても印象が違ってくるらしいから、手を抜いてはいけないのだそうだ。
だから今日は見知らぬ人たちが、ルシエフ邸の庭師たちと共に庭園内を移動している。
そのせいもあり、お客様が好きなメルちゃんとハヤテくんはとてもソワソワしていた。
庭師の人たちの仕事の邪魔をしてはいけないので、この日はメルちゃんとハヤテくんの散歩は邸内で済ませた。
すると、ハヤテくんが外を見たがるので抱っこして、2階の窓から庭師たちの仕事を眺めていた。
メルちゃんも外が見えるように椅子を持ってきてもらい、のんびりと庭園を眺めていると、メイドが来客を告げに来た。
「ミレニア様、仕立て屋がやって来ました」
「ありがとう」
今日は私の夜会用のドレスの寸法を測ったり、デザインを決めるために、仕立て屋に屋敷に来てもらう約束をしていた。
「ハヤテくん、メルちゃん、ごめんね。用事があるから行かなくちゃいけないの。良い子にしていてね」
ハヤテくんを床におろしてあげると、メルちゃんと一緒に私の部屋を飛び出していった。
「どうしちゃったのかしら」
いつもなら「行かないで」と訴えてくるハヤテくんにあっさりと置いていかれたことにショックを受けていると、メイドが苦笑する。
「外の庭師が気になってしょうがないのでしょう。メルでさえ落ち着きませんから」
「……そう言われればそうね」
切なく思いながらも納得し、私は仕立て屋と話をしに応接室に向かった。
******
数時間後、仕立て屋を応接室の前の廊下で見送ったわたしは、ハヤテくんとメルちゃんの様子が気になって探すことにした。
ちょうどおやつを食べ終えて、お昼寝をしているくらいの時間だから、犬用ベッドが置かれてある部屋に向かう。
すると、メルちゃんは自分のベッドで眠っていた。
でも、すぐに目を覚まし、私だとわかると嬉しそうに尻尾を振ってくれた。
ハヤテくんのベッドには持ち主はいない。
だから、メルちゃんに聞いてみる。
「メルちゃん、起こしちゃってごめんね。ところでハヤテくんはどこにいるのかわかる?」
メルちゃんは起き上がったかと思うと、私のスカートのすそを引っ張る。
「どうかしたの?」
尋ねてもメルちゃんはスカートの裾を放そうとせず、半ば引きずるようにして私を引っ張っていく。
メルちゃんがこんなに強引になるだなんて、こんなことは今までに一度もなかった。
よっぽどのことかもしれないと不安になりながら足を進めると、メルちゃんはスカートを放して先導し始めた。
早足で付いていくと、メルちゃんは玄関の扉の前でお座りした。
そして、私と扉を交互に見つめる。
「まさか、ハヤテくん、庭に出ていってしまったの!?」
大きな声で尋ねると、メルちゃんはふさふさの尻尾を左右に振って「ワンッ」と吠えた。
ロード様は仕事で昨日から家を空けておられて、今日の夕方には帰ってくる予定になっている。
昨日の晩にジーギス様がお姉様の所へ行ったけれど、お姉様ではないと言い放ち旅を始めたと連絡が来た時には頭痛を覚えた。
気持ちが沈んでしまったけれど、のんびりもしていられない。
現在、ルシエフ邸の庭には十数人の庭師が集まっていた。
ルシエフ公爵邸には当たり前だけれど庭師がいる。
気候の良い時期になると、常駐している庭師だけでは追いつかないほどに草が成長する。
そうなると、助っ人として一年に何日かだけ、外部から庭師を呼び寄せて、庭の管理を手伝ってもらうのだそうだ。
それと同時に庭園のスタイルが流行に沿っているかなどのチェックもしてもらうらしい。
庭のセンスによっても印象が違ってくるらしいから、手を抜いてはいけないのだそうだ。
だから今日は見知らぬ人たちが、ルシエフ邸の庭師たちと共に庭園内を移動している。
そのせいもあり、お客様が好きなメルちゃんとハヤテくんはとてもソワソワしていた。
庭師の人たちの仕事の邪魔をしてはいけないので、この日はメルちゃんとハヤテくんの散歩は邸内で済ませた。
すると、ハヤテくんが外を見たがるので抱っこして、2階の窓から庭師たちの仕事を眺めていた。
メルちゃんも外が見えるように椅子を持ってきてもらい、のんびりと庭園を眺めていると、メイドが来客を告げに来た。
「ミレニア様、仕立て屋がやって来ました」
「ありがとう」
今日は私の夜会用のドレスの寸法を測ったり、デザインを決めるために、仕立て屋に屋敷に来てもらう約束をしていた。
「ハヤテくん、メルちゃん、ごめんね。用事があるから行かなくちゃいけないの。良い子にしていてね」
ハヤテくんを床におろしてあげると、メルちゃんと一緒に私の部屋を飛び出していった。
「どうしちゃったのかしら」
いつもなら「行かないで」と訴えてくるハヤテくんにあっさりと置いていかれたことにショックを受けていると、メイドが苦笑する。
「外の庭師が気になってしょうがないのでしょう。メルでさえ落ち着きませんから」
「……そう言われればそうね」
切なく思いながらも納得し、私は仕立て屋と話をしに応接室に向かった。
******
数時間後、仕立て屋を応接室の前の廊下で見送ったわたしは、ハヤテくんとメルちゃんの様子が気になって探すことにした。
ちょうどおやつを食べ終えて、お昼寝をしているくらいの時間だから、犬用ベッドが置かれてある部屋に向かう。
すると、メルちゃんは自分のベッドで眠っていた。
でも、すぐに目を覚まし、私だとわかると嬉しそうに尻尾を振ってくれた。
ハヤテくんのベッドには持ち主はいない。
だから、メルちゃんに聞いてみる。
「メルちゃん、起こしちゃってごめんね。ところでハヤテくんはどこにいるのかわかる?」
メルちゃんは起き上がったかと思うと、私のスカートのすそを引っ張る。
「どうかしたの?」
尋ねてもメルちゃんはスカートの裾を放そうとせず、半ば引きずるようにして私を引っ張っていく。
メルちゃんがこんなに強引になるだなんて、こんなことは今までに一度もなかった。
よっぽどのことかもしれないと不安になりながら足を進めると、メルちゃんはスカートを放して先導し始めた。
早足で付いていくと、メルちゃんは玄関の扉の前でお座りした。
そして、私と扉を交互に見つめる。
「まさか、ハヤテくん、庭に出ていってしまったの!?」
大きな声で尋ねると、メルちゃんはふさふさの尻尾を左右に振って「ワンッ」と吠えた。
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