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4 国王陛下の現状
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色とりどりの花が咲く庭園の道を歩いていくと、白いガゼボが見えてきた。
ガゼボの中に入ると、ワイアットは自分のハンカチを椅子の上に敷いて、私に座るように促してくれた。
お礼を言ってから、そこに腰を下ろして、先ほどの話をしてみる。
「国王陛下の件なんだけど」
「安心してください。王太子殿下はあんな風に言っていましたが、回復に向かっています。ですが、それを知っているのは一部の人間のみです」
「回復に向かっているということは良いことだけど、ゼント様にも内緒にしているの?」
「はい。事情がありまして、陛下には具合が悪いふりをしてもらっているんです」
「……どういうことなの?」
「国王陛下の体調が悪化した理由がわかったんです」
隣に座るワイアットは深刻な面持ちで、周りを確認したあと、小声で話し始める。
「陛下は毒をもられていたんです」
「ええっ!?」
あまりの驚きに大きな声を上げてしまった。
慌てて自分の口を手で押さえ、ワイアットに謝罪する。
「ごめんなさい」
「いいえ。驚くのも無理はありません」
「……聞いて良いのかわからないけど、どんな毒だったの? それに毒見役は気づかなかったの?」
「即効性のものではなく、少しずつ体内に蓄積していくものでした。原因不明の体調不良だと言われていましたが、それが原因でしょう」
「ま、待って! それって、誰かが国王陛下の命を狙っていたということよね? それに毒見役が気がつかないなんておかしいわ」
「毒見役は毒を盛るように指示した相手とグルでした」
「……そんな! 毒見役の意味がないじゃないの」
信じられない話を聞いたため、平静を保てなくなっていると、ワイアットが優しい口調で話しかけてくる。
「落ち着いて下さい。こうやって話ができるということは、目の前の危機は脱しているということです」
「……そうね。取り乱してしまってごめんなさい。でも、どうして、毒見役は自分の体にも良くないのに黙って協力していたの?」
「毒見役は一口しか食べません。けれど、陛下はそうではないんです」
「少量を毎日食べるくらいなら大丈夫なのね?」
「そうです。先程も言いましたが、蓄積して効果が出るんです。だから、毒見役もそう大して悪いことをしていると思っていなかったようです」
「ちょっと待って、それはおかしいでしょう。毒が入っているとわかっていて、それを人に食べさせるだなんて信じられないわ。 しかも相手は国王陛下で、自分は毒見役なのよ?」
興奮して大きな声にならないように心がけながら、ワイアットに尋ねた。
「毒見役になったのは金のためです。なら、2倍のお金をもらえるほうが良いでしょう?」
「2倍のお金?」
「ええ。毒見役の給金と、毒が入っているとわかっていても知らないふりをするという報酬です」
「知らないふりをするということは、食事の味が変わっていたの? それに毒を入れた人間は別ということ?」
「毒を入れていたのは配膳係です。配膳係はすでに処分しています。陛下は少し前から味の変化を訴えていたようですが、毒見役が大丈夫だというから、責任者は詳しくは調べていなかったそうです」
「陛下が訴えているのに調べないだなんて、そんなことって許されるの? それに皆が黙っていたなら、どうやってわかったの?」
ちゃんと調べないだなんて、責任者としてやるべきことじゃない。
責任者も買収されていたのかしら。
口には出さずに考えていると、ワイアットが衝撃的な発言をする。
「陛下からその話を聞いてすぐに、私が食べてみて発覚しました」
「ワイアットが!?」
「もちろん、毒見役に毒見をさせてからですよ。抜き打ちテストのようなものです。その場には私しかいませんでしたし、私しか確認できる人間がいなかったからやっただけです」
「自分で調べるのが一番早いという気持ちはわかるけど、本当に自分で食べるなんて驚いたわ。で、どうだったの?」
「使われている食材からは感じられないような味がしたので、その時の食事は作り直させました」
ワイアットは苦笑して、話を続ける。
「毒見役は十人いましたが、その時の一人は処分して、現在は9人です。その内の一人は相手側の協力者です」
「どうして捕まえないの?」
「泳がしているんですよ。処分した毒見役は黒幕を知らなかったんです。もちろん、泳がせている毒見役が担当の日は、食事を別に用意して、他の人間に毒見をさせてから、陛下にはお出ししています」
「黒幕を知っていると思われる毒見役を捕まえて吐かせることはできないの?」
「そうしようと思ったんですが、目星もついていますので、逆にこちらが気付いていないふりをしているほうが、陛下は安全かと判断したんです」
「まどろっこしいことをするのね」
少し不満げな私の顔を見て、ワイアットはまた苦笑して続ける。
「黒幕の見当はついていて、そう簡単に罪を認める相手でもないんです。あなたを巻き込んでしまってすみません」
「別にワイアットが謝ることじゃないでしょう? それに私は巻き込まれていないわ」
「いいえ。王太子殿下の愚行を止められないだけでなく、あなたに嫌な思いをさせることになりました」
「相手があのゼント様じゃしょうがないわ。そういえば、ゼント様に歯向かうと処刑されるっていう噂は本当なの?」
さっき、お父様から聞かされたのだけど、そんな噂が前々から流れているそうだ。
だから、皆、そのことが頭に浮かんで、すぐに私の処刑の回避に動けなかったのだ。
あとから連名で抗議するなら、さすがに処刑は言い出しにくいでしょうしね。
「実際に処刑された例はあります。ですから、私たちも今回は焦りました。国王陛下が病で倒れられてからは、王太子殿下に一部の権限が譲られましたが、何をやっても良いわけではありません。それなのに、何を思ってか、もう自分が国王になった気でいます。前回も反対派多数で処刑はなしになっていた人間を、人を雇って暗殺した疑いがあります」
「ゼント様は何を考えているのかしら。このままあの方が国王になったりなんかしたら、暴君になる予感しかないじゃない」
「王太子殿下が酷くなったのは、ケイティと知り合ってからです。今回、あなたを守るためには、王太子殿下の処刑以外の希望をのむしかありませんでした。申し訳ない」
「……あなたは悪くないわ。ケイティを放置していた私が悪いのよ」
今の状況は放置していた罰を受けていると思ったほうが良さそうね。
「王太子殿下の変化を傍観していた周りは、事なかれ主義者が多いんです。気持ちはわかりますが、あなた一人に面倒事を押し付けようとしています。ですが、多くの人はあなたの処刑は望んでいませんし、公爵家を敵に回す勇気もありません」
「でも、ケイティがゼント様に近付かなければ、彼はあんな訳のわからないことを言い出すような人ではなかったでしょう?」
ゼント様とここ最近は会う機会がなかった。
きっと、その間にケイティと仲良くなったのね。
だから、私は彼に誘われることがなくなり、こちらから声をかけても無視されるようになったというところかしら。
「どうでしょうね。変わるきっかけを作ったのは彼女かもしれませんが、元々、あんな性格かもしれません」
そこまで話をしたところで、ワイアットは急に話題を変えた。
「あの家から出る場合は、私に許可を得てからにして下さい」
「え?」
「王太子殿下は、あなたを自由にさせたくないとおっしゃっています」
「どうしていきなりそんな話をするの?」
困惑していると、メイド姿の女性が私たちの所へやって来て、ワイアットに王太子殿下が探していると告げた。
突然の話題の変更は、彼女に何を話しているか知られたくなかったみたいだ。
「すみません。呼び出しがかかりました。家まで送りますね」
「ありがとう、ワイアット。一人でも帰れるわ」
「……では、城のメイドに付き添ってもらいます」
紳士として女性を一人で帰らせるわけにはいかないようだった。
「外出したくなったら、あなたに連絡するわ」
「お願いします」
「あと、どれくらいの行動制限があるのか知りたいのだけど」
「あとで、君のお父上と兄上とも話をする予定がありますから、その時に話をしておきます」
ワイアットは立ち上がり、私に小さく手を振ると、メイドに私を頼んでを去っていった。
私をあの家に住まわせて、王太子殿下とケイティはどうしようとしているのかしら?
何を考えているのかわからないけれど、気を引き締めていかなくちゃ。
今のゼント様は自分の考えたことは全て正しいと思っているようだから、普通の人の考えじゃない。
それならこちらも、普通の人が考えないような動きをしないとね。
ガゼボの中に入ると、ワイアットは自分のハンカチを椅子の上に敷いて、私に座るように促してくれた。
お礼を言ってから、そこに腰を下ろして、先ほどの話をしてみる。
「国王陛下の件なんだけど」
「安心してください。王太子殿下はあんな風に言っていましたが、回復に向かっています。ですが、それを知っているのは一部の人間のみです」
「回復に向かっているということは良いことだけど、ゼント様にも内緒にしているの?」
「はい。事情がありまして、陛下には具合が悪いふりをしてもらっているんです」
「……どういうことなの?」
「国王陛下の体調が悪化した理由がわかったんです」
隣に座るワイアットは深刻な面持ちで、周りを確認したあと、小声で話し始める。
「陛下は毒をもられていたんです」
「ええっ!?」
あまりの驚きに大きな声を上げてしまった。
慌てて自分の口を手で押さえ、ワイアットに謝罪する。
「ごめんなさい」
「いいえ。驚くのも無理はありません」
「……聞いて良いのかわからないけど、どんな毒だったの? それに毒見役は気づかなかったの?」
「即効性のものではなく、少しずつ体内に蓄積していくものでした。原因不明の体調不良だと言われていましたが、それが原因でしょう」
「ま、待って! それって、誰かが国王陛下の命を狙っていたということよね? それに毒見役が気がつかないなんておかしいわ」
「毒見役は毒を盛るように指示した相手とグルでした」
「……そんな! 毒見役の意味がないじゃないの」
信じられない話を聞いたため、平静を保てなくなっていると、ワイアットが優しい口調で話しかけてくる。
「落ち着いて下さい。こうやって話ができるということは、目の前の危機は脱しているということです」
「……そうね。取り乱してしまってごめんなさい。でも、どうして、毒見役は自分の体にも良くないのに黙って協力していたの?」
「毒見役は一口しか食べません。けれど、陛下はそうではないんです」
「少量を毎日食べるくらいなら大丈夫なのね?」
「そうです。先程も言いましたが、蓄積して効果が出るんです。だから、毒見役もそう大して悪いことをしていると思っていなかったようです」
「ちょっと待って、それはおかしいでしょう。毒が入っているとわかっていて、それを人に食べさせるだなんて信じられないわ。 しかも相手は国王陛下で、自分は毒見役なのよ?」
興奮して大きな声にならないように心がけながら、ワイアットに尋ねた。
「毒見役になったのは金のためです。なら、2倍のお金をもらえるほうが良いでしょう?」
「2倍のお金?」
「ええ。毒見役の給金と、毒が入っているとわかっていても知らないふりをするという報酬です」
「知らないふりをするということは、食事の味が変わっていたの? それに毒を入れた人間は別ということ?」
「毒を入れていたのは配膳係です。配膳係はすでに処分しています。陛下は少し前から味の変化を訴えていたようですが、毒見役が大丈夫だというから、責任者は詳しくは調べていなかったそうです」
「陛下が訴えているのに調べないだなんて、そんなことって許されるの? それに皆が黙っていたなら、どうやってわかったの?」
ちゃんと調べないだなんて、責任者としてやるべきことじゃない。
責任者も買収されていたのかしら。
口には出さずに考えていると、ワイアットが衝撃的な発言をする。
「陛下からその話を聞いてすぐに、私が食べてみて発覚しました」
「ワイアットが!?」
「もちろん、毒見役に毒見をさせてからですよ。抜き打ちテストのようなものです。その場には私しかいませんでしたし、私しか確認できる人間がいなかったからやっただけです」
「自分で調べるのが一番早いという気持ちはわかるけど、本当に自分で食べるなんて驚いたわ。で、どうだったの?」
「使われている食材からは感じられないような味がしたので、その時の食事は作り直させました」
ワイアットは苦笑して、話を続ける。
「毒見役は十人いましたが、その時の一人は処分して、現在は9人です。その内の一人は相手側の協力者です」
「どうして捕まえないの?」
「泳がしているんですよ。処分した毒見役は黒幕を知らなかったんです。もちろん、泳がせている毒見役が担当の日は、食事を別に用意して、他の人間に毒見をさせてから、陛下にはお出ししています」
「黒幕を知っていると思われる毒見役を捕まえて吐かせることはできないの?」
「そうしようと思ったんですが、目星もついていますので、逆にこちらが気付いていないふりをしているほうが、陛下は安全かと判断したんです」
「まどろっこしいことをするのね」
少し不満げな私の顔を見て、ワイアットはまた苦笑して続ける。
「黒幕の見当はついていて、そう簡単に罪を認める相手でもないんです。あなたを巻き込んでしまってすみません」
「別にワイアットが謝ることじゃないでしょう? それに私は巻き込まれていないわ」
「いいえ。王太子殿下の愚行を止められないだけでなく、あなたに嫌な思いをさせることになりました」
「相手があのゼント様じゃしょうがないわ。そういえば、ゼント様に歯向かうと処刑されるっていう噂は本当なの?」
さっき、お父様から聞かされたのだけど、そんな噂が前々から流れているそうだ。
だから、皆、そのことが頭に浮かんで、すぐに私の処刑の回避に動けなかったのだ。
あとから連名で抗議するなら、さすがに処刑は言い出しにくいでしょうしね。
「実際に処刑された例はあります。ですから、私たちも今回は焦りました。国王陛下が病で倒れられてからは、王太子殿下に一部の権限が譲られましたが、何をやっても良いわけではありません。それなのに、何を思ってか、もう自分が国王になった気でいます。前回も反対派多数で処刑はなしになっていた人間を、人を雇って暗殺した疑いがあります」
「ゼント様は何を考えているのかしら。このままあの方が国王になったりなんかしたら、暴君になる予感しかないじゃない」
「王太子殿下が酷くなったのは、ケイティと知り合ってからです。今回、あなたを守るためには、王太子殿下の処刑以外の希望をのむしかありませんでした。申し訳ない」
「……あなたは悪くないわ。ケイティを放置していた私が悪いのよ」
今の状況は放置していた罰を受けていると思ったほうが良さそうね。
「王太子殿下の変化を傍観していた周りは、事なかれ主義者が多いんです。気持ちはわかりますが、あなた一人に面倒事を押し付けようとしています。ですが、多くの人はあなたの処刑は望んでいませんし、公爵家を敵に回す勇気もありません」
「でも、ケイティがゼント様に近付かなければ、彼はあんな訳のわからないことを言い出すような人ではなかったでしょう?」
ゼント様とここ最近は会う機会がなかった。
きっと、その間にケイティと仲良くなったのね。
だから、私は彼に誘われることがなくなり、こちらから声をかけても無視されるようになったというところかしら。
「どうでしょうね。変わるきっかけを作ったのは彼女かもしれませんが、元々、あんな性格かもしれません」
そこまで話をしたところで、ワイアットは急に話題を変えた。
「あの家から出る場合は、私に許可を得てからにして下さい」
「え?」
「王太子殿下は、あなたを自由にさせたくないとおっしゃっています」
「どうしていきなりそんな話をするの?」
困惑していると、メイド姿の女性が私たちの所へやって来て、ワイアットに王太子殿下が探していると告げた。
突然の話題の変更は、彼女に何を話しているか知られたくなかったみたいだ。
「すみません。呼び出しがかかりました。家まで送りますね」
「ありがとう、ワイアット。一人でも帰れるわ」
「……では、城のメイドに付き添ってもらいます」
紳士として女性を一人で帰らせるわけにはいかないようだった。
「外出したくなったら、あなたに連絡するわ」
「お願いします」
「あと、どれくらいの行動制限があるのか知りたいのだけど」
「あとで、君のお父上と兄上とも話をする予定がありますから、その時に話をしておきます」
ワイアットは立ち上がり、私に小さく手を振ると、メイドに私を頼んでを去っていった。
私をあの家に住まわせて、王太子殿下とケイティはどうしようとしているのかしら?
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